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デート
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何だかんだ、夜は仙石さんに仕返しされる日々だけど俺は毎日満ち足りて充実していた。
「なぁ幸利、今週末ちょっと出かけないか?」
「もちろんです。どこへですか?」
「んー。ベタだが、夜景を見に……とか。だが夜景の前に食べ歩いたり、水族館とか動物園とか行ったりまぁ、そんな感じだ」
「それって……で、デートですよね」
「あたり前ェだろ。付き合ってるやつらが2人で出かけるのをデートっつーんだ」
「嬉しいです。居酒屋も好きだけど、ちゃんとデートらしいデートもしたいと思ってたんです」
「そうか」
穏やかに笑う恭一さんも、ここ最近じゃよく見る。
デートの当日。
楽しみにしすぎて待ち合わせよりも30分も早く着いた。
とりあえずスマホでゲームでもしてようかと待ち合わせ場所の近くのベンチに座ったら、横にどかりと誰かが座った。
「きょ、恭一さん!?」
「……おう」
照れ臭そうにそっぽを向く恭一さんの耳は真っ赤だ。
30分も前なのに2人とも待ち合わせ場所についてるなんて、まるで10代のカップルのようで何だか照れ臭い。
「恭一さん……? おはようございます」
「おはよーさん。初めてのまともなデートだからお前ェを待たせねぇように出てきたつもりなんだけどよ」
「いや、待ってないです!」
「次は負けねぇぞ」
「勝負なんですか? ていうか早くきて照れてるんですか?」
「そりゃあ、10代じゃあるめぇしな」
「ふふ。俺もさっき同じこと思いました」
「……、そうか。んじゃま、行くか」
「はい!」
今回は動物園に行くことにした。
入ったタイミングが良かったのか行くとこ全部おやつのタイミングだったらしく、動物が可愛らしくおやつを食べているところを観察することができた。
俺はその中でもペンギンに夢中になった。
動画とか写真とかではまぁ可愛いけどなくらいに思ってたペンギンの集団行動っぷりを見て完全に俺は胸を射抜かれた。
「おーい。そろそろ次行くぞ。腹減ったろ」
「ぅ……はい。じゃあな、ペンギン。また明日くるからな」
「いや明日は来ねェだろ」
「まぁそうなんですが。明日来るって言った方が俺の顔を覚えているかもしれないじゃないですか!」
「そんなわけねぇーだろ」
そう言って恭一さんが笑った。
2人で動物園から少し歩いたところにある商店街に移動して海鮮丼やらフルーツ串やらタピオカやら食べたり、立ち飲み居酒屋に入って一杯引っ掛けたり、年相応のおっさんのような女子高生のようなラインナップで楽しんだ。
「あのよ、これから行きてェとこあんだけどよ」
「え? じゃあいきましょう! お腹もいっぱい過ぎることですし」
そう言って連れてこられたのは、俺がこの間最後の時をそこで過ごそうとした森だった。
「恭一さん……ここって」
「おう、着いてきてくれ」
恭一さんは懐中電灯を用意していてそれで照らしながら前を進んだ。
俺が2日かけて進んだ場所は案外入り口付近に近かったらしくとおの昔に通り過ぎた。
しばらく進むと開けた場所について前を歩いていた恭一さんが歩くのを止めた。
「空、見てくれ、きれェだろ?」
「うわぁ」
森の中に穴が空いたように開けたそこから見る空には満天の星空が広がっていた。
あたりは当然の如く静かで、まるでこの世界に恭一さんと俺しかいないみたいな、そんなロマンチックな気分になった。
「俺、幸利を幸せにしてェ。そしたら俺も幸せになる。こういう時に俺ァ、かっこいいことの一つも言えなくて不甲斐ねェけどよ。これから先も俺ァ一生お前ェ意外見えない自信がある。俺には幸利しか居ねェ。俺とずっと一緒にいてくれねェか」
そう言って、仙石さんゆっくりと腰を下ろして、片膝を付いた。
俺を優しく微笑みながら見上げて手の中の小箱を俺に向かって差し出して。
「俺と結婚してくれ」
「…………こちらこそ、よろしくお願いします。恭一さん」
恭一さんが嬉しそうに笑って、小箱の中から指輪を取り出して俺の左手の薬指にはめてくれた。
「ありがとよ、幸利。式は海外であげような。それからなるべく早く俺の家に引っ越してきてくれ」
「ふ……へへ。はい……。おれ、うれしいです。本当に」
「俺も嬉しい。これからはずっと幸利と居られるんだ。誰にも邪魔はさせねぇよ」
少し前まではこんなに幸せな日々が来るとは思っていなかった。
でも俺は恭一さんと一生共に過ごすと誓った。
男女のように教会で誓ったわけではない。
今の日本では結婚という制度で結ばれることもできない。
だけど、俺は世界のどの夫婦よりも幸せなんだと叫びたい気分だ。
完
「なぁ幸利、今週末ちょっと出かけないか?」
「もちろんです。どこへですか?」
「んー。ベタだが、夜景を見に……とか。だが夜景の前に食べ歩いたり、水族館とか動物園とか行ったりまぁ、そんな感じだ」
「それって……で、デートですよね」
「あたり前ェだろ。付き合ってるやつらが2人で出かけるのをデートっつーんだ」
「嬉しいです。居酒屋も好きだけど、ちゃんとデートらしいデートもしたいと思ってたんです」
「そうか」
穏やかに笑う恭一さんも、ここ最近じゃよく見る。
デートの当日。
楽しみにしすぎて待ち合わせよりも30分も早く着いた。
とりあえずスマホでゲームでもしてようかと待ち合わせ場所の近くのベンチに座ったら、横にどかりと誰かが座った。
「きょ、恭一さん!?」
「……おう」
照れ臭そうにそっぽを向く恭一さんの耳は真っ赤だ。
30分も前なのに2人とも待ち合わせ場所についてるなんて、まるで10代のカップルのようで何だか照れ臭い。
「恭一さん……? おはようございます」
「おはよーさん。初めてのまともなデートだからお前ェを待たせねぇように出てきたつもりなんだけどよ」
「いや、待ってないです!」
「次は負けねぇぞ」
「勝負なんですか? ていうか早くきて照れてるんですか?」
「そりゃあ、10代じゃあるめぇしな」
「ふふ。俺もさっき同じこと思いました」
「……、そうか。んじゃま、行くか」
「はい!」
今回は動物園に行くことにした。
入ったタイミングが良かったのか行くとこ全部おやつのタイミングだったらしく、動物が可愛らしくおやつを食べているところを観察することができた。
俺はその中でもペンギンに夢中になった。
動画とか写真とかではまぁ可愛いけどなくらいに思ってたペンギンの集団行動っぷりを見て完全に俺は胸を射抜かれた。
「おーい。そろそろ次行くぞ。腹減ったろ」
「ぅ……はい。じゃあな、ペンギン。また明日くるからな」
「いや明日は来ねェだろ」
「まぁそうなんですが。明日来るって言った方が俺の顔を覚えているかもしれないじゃないですか!」
「そんなわけねぇーだろ」
そう言って恭一さんが笑った。
2人で動物園から少し歩いたところにある商店街に移動して海鮮丼やらフルーツ串やらタピオカやら食べたり、立ち飲み居酒屋に入って一杯引っ掛けたり、年相応のおっさんのような女子高生のようなラインナップで楽しんだ。
「あのよ、これから行きてェとこあんだけどよ」
「え? じゃあいきましょう! お腹もいっぱい過ぎることですし」
そう言って連れてこられたのは、俺がこの間最後の時をそこで過ごそうとした森だった。
「恭一さん……ここって」
「おう、着いてきてくれ」
恭一さんは懐中電灯を用意していてそれで照らしながら前を進んだ。
俺が2日かけて進んだ場所は案外入り口付近に近かったらしくとおの昔に通り過ぎた。
しばらく進むと開けた場所について前を歩いていた恭一さんが歩くのを止めた。
「空、見てくれ、きれェだろ?」
「うわぁ」
森の中に穴が空いたように開けたそこから見る空には満天の星空が広がっていた。
あたりは当然の如く静かで、まるでこの世界に恭一さんと俺しかいないみたいな、そんなロマンチックな気分になった。
「俺、幸利を幸せにしてェ。そしたら俺も幸せになる。こういう時に俺ァ、かっこいいことの一つも言えなくて不甲斐ねェけどよ。これから先も俺ァ一生お前ェ意外見えない自信がある。俺には幸利しか居ねェ。俺とずっと一緒にいてくれねェか」
そう言って、仙石さんゆっくりと腰を下ろして、片膝を付いた。
俺を優しく微笑みながら見上げて手の中の小箱を俺に向かって差し出して。
「俺と結婚してくれ」
「…………こちらこそ、よろしくお願いします。恭一さん」
恭一さんが嬉しそうに笑って、小箱の中から指輪を取り出して俺の左手の薬指にはめてくれた。
「ありがとよ、幸利。式は海外であげような。それからなるべく早く俺の家に引っ越してきてくれ」
「ふ……へへ。はい……。おれ、うれしいです。本当に」
「俺も嬉しい。これからはずっと幸利と居られるんだ。誰にも邪魔はさせねぇよ」
少し前まではこんなに幸せな日々が来るとは思っていなかった。
でも俺は恭一さんと一生共に過ごすと誓った。
男女のように教会で誓ったわけではない。
今の日本では結婚という制度で結ばれることもできない。
だけど、俺は世界のどの夫婦よりも幸せなんだと叫びたい気分だ。
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転生ストーリー大好物様
コメントありがとうございます^^
自分でも気に入っている話なのでそう言っていただけて嬉しいです!
neodog0208様
感想ありがとうございます。
西くん的には、愛してるの言葉は仙石さんの罪滅ぼしだと思ってるところありますから難しそうですね🥲
心が痛い…😭
マサミ様
コメントありがとうございます。
心を痛ませてしまってすみません🙇
基本的に私がハピエン厨なので最終的にはハピエンですのでご安心ください☺️