偽物にすらなりきれない出来損ないの僕

いちみやりょう

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それから、ユリウスは以前宣言していた通り、ハルミを朝まで離さなかった。
ハルミが3回イかされる間に、ユリウスはたったの1回しか射精せず朝までの時間で計算しても、ハルミはユリウスと比べものにならないほどに何度もイかされた。とても体力を使って疲れたけれど、ハルミは何かが満ちた気持ちで満足していた。
一方でユリウスは初めてなのにすまなかったと謝り、しゅんとしていて、なんだか可愛らしく感じてしまった。ベッドの中で、向き合う形なので距離が近くてドキドキする。さっきまでもっと近い距離だったのに、今もドキドキするのが不思議だった。

「好きです。ユリウス様」
「……私も好きだ、ハルミ。両親やエリーゼ達のしたことは許せることではないが、唯一、ハルミに出会えたことは本当に良かった」
「僕も、ユリウス様に出会えて、本当に良かったと思っています」

(クリスさんとミヒャエル様にも)

この世界に来て、大変な目にも確かにあったけど、前世で生きていた世界よりも、こちらの正解の方が出会う人の多くが断然ハルミに優しかった。
この世界に来た当初の、ミヒャエルの代わりをするという約束は、思えばほとんど全うすることができなかったけれど、そもそもハルミから見たらミヒャエルには全然似ていないと思っているので、ミヒャエルの代わりなんて初めから無理だったのかもしれない。

「僕、ミヒャエル様に似ていますか?」

ハルミが似ていないと思っていても、一応ハルミはミヒャエルに似せて作られた存在だ。ユリウスは似ていると思っているかもしれない。それはなんとなく嫌だなと思いながらそう質問した。

「全然似ていない。むしろ似ていたらハルミに色々できないだろう」
「え?」
「弟のことは大事に思っているが、弟に対してハルミにしたことを出来るわけがない。ハルミは全然ミヒャエルと違う。同じところと言ったら髪や目の色合いくらいだ。まぁ、それもよく見たら色も違うしな。私はハルミが可愛くて仕方がないよ」
「……へへ、そうですか」

ユリウスから直接否定されることで、嬉しくなった。
ユリウスはハルミの顔にかかる髪を耳にかけてくれ優しい顔で微笑んだ。

「私の妻はハルミだけだ。ハルミの夫も私だけ。頼りない夫かもしれないが、改めて聞く。私と一生を共にしてくれるか」
「頼りなくなんかないです。僕、嬉しいです。幸せです。ユリウス様とずっと一緒にいさせてください」
「ハルミ、私も幸せだ。ありがとう」

ベッドの中でぬくぬくで、ユリウスにそっと抱き寄せられ、さらに暖かくなった。

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感想 5

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みんなの感想(5件)

みみっく
2024.09.01 みみっく

元家族のざまぁをありがとうございます!
それとクリストフが最初は人攫いかと思ってドキドキしましたが、善人で良かったです(*^^*)

解除
ルー
2023.11.07 ルー
ネタバレ含む
2023.11.07 いちみやりょう

コメントありがとうございます^^

彼女は春海を恋愛的な意味で好きなわけではないけど、
心配していて、友達になりたかったのだと思います☺️
前世での春海を想ってくれていた人も居たんだよって感じです。

解除
Madame gray-01
2023.11.07 Madame gray-01
ネタバレ含む
2023.11.07 いちみやりょう

コメントありがとうございます^^
兄は元彼女のことは100%大切にしてなかったと思います😞

良い対応とは言えないですが、
16歳の女子高生の精一杯はこんな感じかなぁという想像で書きました笑

解除

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