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ユリウス視点:過去1
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幼い頃、ユリウスは黒目黒髪の容姿のせいで両親にすら恐れられ寂しい幼少期を過ごした。
当然のように友人はおらず、人の機微を察することも、コミュニケーションを学ぶ機会も少なく、いつも本を読んだり勉強をしたり、静かに過ごしていることが多かった。
魔力が強いということを危険視されていて、幼い頃は魔力コントロールを厳しく叩き込まれ精神的にも辛かったことを覚えている。その上、ユリウスはもともと人々の周りにほのかに浮かび上がっているオーラでその人が自分に対してどういう感情を向けているかとか、どんな気分かとかが薄ら分かった。細かい感情は分からないものの、自分に対して好意的でないことは分かっていて、それも幼いユリウスを辛くさせていた。
そんな頃、ミヒャエルが生まれた。
両親に似て金髪碧眼。小さな小さなその命は、ユリウスに向かって可愛らしく微笑みかけ胸を掴まれた。
けれど、ミヒャエルが大きくなるにつれ、交流する機会は奪われ、たまに会ってもミヒャエルはユリウスのことを怖がるようになっていた。
両親はユリウスが10歳、ミヒャエルが5歳になった頃、長男のユリウスではなくミヒャエルにディクソン侯爵家を継がせると言った。ユリウスはそうなるだろうとどこか覚悟していたので、大きなショックは受けなかった。自分はただディクソン家に生まれただけにすぎない。その考えが根底にあったからかもしれない。けれど、覚悟も何もなく、ただ無邪気に遊ぶミヒャエルに、マナーや勉強を教えようとしたこともあった。ミヒャエルに継がせるつもりなら、教育をしっかり受けさせるべきだと両親に苦言を呈したこともある。
だが結局そのどれもうまくはいかなかった。
しばらくしてユリウスは両親に追い出される形で魔法省の管理する学園に入学した。
難関といわれた学園は、ユリウスの魔法の才を認め入学をあっさりと許可したのだ。
入学するのに一切年齢制限を設けていない学園だったが、研究などのため爆発などが起こることがあるので、市民に危害が及ばないよう、人里離れた場所に位置していたため、大体が寮生活をしており、ユリウスも寮に入ろうとしていた。けれど当時11歳だったユリウスを寮生活をさせるのは、と、教官をしていたクリストフがユリウスの下宿先を買って出てくれたのだ。
そこにはクリストフの甥っ子であるアルトルも一緒に暮らしており、クリストフにはアルトルと分け隔てなく存分に甘やかしてもらった。
親からの愛情のようなものは、全てクリストフから与えてもらった。
アルトルとも兄弟のように仲良くしていた。
そうして家族のような温かい時間を過ごすユリウスのもとに、ミヒャエルの訃報が届いたのだ。
久しぶりに帰った生家は、ミヒャエルが居ないこと以外何一つ変わらなかった。
棺桶の中のミヒャエルは青年と呼べるほどに成長していた。青白い顔だったが、どうしてだか微笑んでいるように見えた。病死だったそうだから、きっと辛かったはずなのに、微笑むミヒャエルは幸せそうに見えた。
両親は見違えるほどに窶れていた。
棺桶の前で2人とも涙を流していた。
もちろん、ユリウスも悲しかった。関わることも少なかったというのに、心の中にポッカリと穴が開いてしまったかのように辛かった。
けれどユリウスは自分がいない間、家族として過ごしたミヒャエルと両親の別れを見て、いたたまれない気持ちになった。自分がここにいてはいけない気がした。
だから魔法省に就職した後は、クリストフの家を出て、ディクソン侯爵家に戻ったけれど、顔を合わせるのも気まずくて、家に帰る時間はほとんどなかった。
けれど、思えばその頃から魔力体の事件が頻発するようになったのだ。
当然のように友人はおらず、人の機微を察することも、コミュニケーションを学ぶ機会も少なく、いつも本を読んだり勉強をしたり、静かに過ごしていることが多かった。
魔力が強いということを危険視されていて、幼い頃は魔力コントロールを厳しく叩き込まれ精神的にも辛かったことを覚えている。その上、ユリウスはもともと人々の周りにほのかに浮かび上がっているオーラでその人が自分に対してどういう感情を向けているかとか、どんな気分かとかが薄ら分かった。細かい感情は分からないものの、自分に対して好意的でないことは分かっていて、それも幼いユリウスを辛くさせていた。
そんな頃、ミヒャエルが生まれた。
両親に似て金髪碧眼。小さな小さなその命は、ユリウスに向かって可愛らしく微笑みかけ胸を掴まれた。
けれど、ミヒャエルが大きくなるにつれ、交流する機会は奪われ、たまに会ってもミヒャエルはユリウスのことを怖がるようになっていた。
両親はユリウスが10歳、ミヒャエルが5歳になった頃、長男のユリウスではなくミヒャエルにディクソン侯爵家を継がせると言った。ユリウスはそうなるだろうとどこか覚悟していたので、大きなショックは受けなかった。自分はただディクソン家に生まれただけにすぎない。その考えが根底にあったからかもしれない。けれど、覚悟も何もなく、ただ無邪気に遊ぶミヒャエルに、マナーや勉強を教えようとしたこともあった。ミヒャエルに継がせるつもりなら、教育をしっかり受けさせるべきだと両親に苦言を呈したこともある。
だが結局そのどれもうまくはいかなかった。
しばらくしてユリウスは両親に追い出される形で魔法省の管理する学園に入学した。
難関といわれた学園は、ユリウスの魔法の才を認め入学をあっさりと許可したのだ。
入学するのに一切年齢制限を設けていない学園だったが、研究などのため爆発などが起こることがあるので、市民に危害が及ばないよう、人里離れた場所に位置していたため、大体が寮生活をしており、ユリウスも寮に入ろうとしていた。けれど当時11歳だったユリウスを寮生活をさせるのは、と、教官をしていたクリストフがユリウスの下宿先を買って出てくれたのだ。
そこにはクリストフの甥っ子であるアルトルも一緒に暮らしており、クリストフにはアルトルと分け隔てなく存分に甘やかしてもらった。
親からの愛情のようなものは、全てクリストフから与えてもらった。
アルトルとも兄弟のように仲良くしていた。
そうして家族のような温かい時間を過ごすユリウスのもとに、ミヒャエルの訃報が届いたのだ。
久しぶりに帰った生家は、ミヒャエルが居ないこと以外何一つ変わらなかった。
棺桶の中のミヒャエルは青年と呼べるほどに成長していた。青白い顔だったが、どうしてだか微笑んでいるように見えた。病死だったそうだから、きっと辛かったはずなのに、微笑むミヒャエルは幸せそうに見えた。
両親は見違えるほどに窶れていた。
棺桶の前で2人とも涙を流していた。
もちろん、ユリウスも悲しかった。関わることも少なかったというのに、心の中にポッカリと穴が開いてしまったかのように辛かった。
けれどユリウスは自分がいない間、家族として過ごしたミヒャエルと両親の別れを見て、いたたまれない気持ちになった。自分がここにいてはいけない気がした。
だから魔法省に就職した後は、クリストフの家を出て、ディクソン侯爵家に戻ったけれど、顔を合わせるのも気まずくて、家に帰る時間はほとんどなかった。
けれど、思えばその頃から魔力体の事件が頻発するようになったのだ。
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