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25:告白
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「正直、会わせてもらえると約束はしたが、本当にハルミに会わせてもらえるのか、ハルミがここに来るまで不安だった」
「クリスさんは約束を破ったりしません」
春海の言葉にユリウスは苦笑した。
「ああ。それはちゃんと分かっている。だが、ハルミを傷つけてしまったことを教官はとても怒っていたから」
「クリスさんが……? 僕のために」
ユリウスから傷つけられた覚えはなかったので申し訳ない気持ちはあれど、やはり普段怒った姿など少しも見せない人が自分のために怒ってくれたというのは、照れ臭くも嬉しかった。
「ハルミ、私はハルミを大切に想っている。だから戻ってきてくれないか」
ユリウスは真剣な目をして春海を見つめた。
大切に想っているという言葉に、ドキリとした。
嬉しいような、心臓がうるさいような痛いような。
クリストフに言われたときには、嬉しく胸が暖かくなったけれど、どうして相手がユリウスだとこんなに落ち着かない気持ちになるのだろう。
「でも、僕は僕を愛してくれる人を見つけたんです。だから、戻れません」
「それは……、教官か」
「はい。僕はクリスさんと一緒にいたいんです」
息子だと言ってくれたクリストフと共に生きたい。
この1年、他に家族の気配はなかった。甥はいるのが確定しているけれど、妻や子供は居ないんじゃないかと思っている。
もしかしたら、この先、そんな相手が出来たとしたら、もちろん春海は出ていくつもりだけれど、それまでの間は、クリストフが邪魔だと言わない限り、此処に居たい。
ユリウスはしばらく無言でいたけれど、耐えきれなくなったかのように、小さく息を吐いた。
「1年前、どうして居なくなったのか、教えてくれるか」
「……探そうと思ったんです。僕を愛してくれる人がこの世界のどこかには絶対居るってユリウス様に教えてもらって。あの時は何だかハイになってたから、何でも出来る気がして、そのまま屋敷を飛び出しました。世界中を探さないと見つからないレベルの人が、屋敷の中に居るはずがないし、それなら屋敷に居る時間が勿体ないって思って」
「……そうか」
ユリウスは、そう返事をして肩を落とした。
「あの。突然居なくなったりして、すみませんでした。心配、させてしまいました、よね」
春海がいなくなったところで、誰かが心配したり、誰かに迷惑がかかったりなど、あの頃の春海には、本当にそんな可能性があるなんてことを考えられるような感覚がなかったのだ。
けれど、そうではないということを、今の春海は知っていた。
そして、やはりユリウスは頷いてくれた。
「ああ。心配した。だが、無事な姿をみられたから良いんだ。元はと言えば、私が自分の気持ちを早く自覚してハルミに伝えられていれば、こんな事にはならなかったかもしれないのだから」
「自分の気持ち……?」
「ハルミを大切に想う気持ちだ。ハルミが居ないとホッとする時間もない。癒しもない。何をするにもハルミの顔がチラついて頭から離れない。つまり」
「つまり……?」
「私は、ハルミを愛しているんだ」
「っ」
そんなことを言われるなんて春海は1ミリも想像していなかった。
内心はパニックで、頭の中には、“え?”や“な?”と言った意味をなさないような文字が埋め尽くして最終的にキャパを超え頭は真っ白になった。
「クリスさんは約束を破ったりしません」
春海の言葉にユリウスは苦笑した。
「ああ。それはちゃんと分かっている。だが、ハルミを傷つけてしまったことを教官はとても怒っていたから」
「クリスさんが……? 僕のために」
ユリウスから傷つけられた覚えはなかったので申し訳ない気持ちはあれど、やはり普段怒った姿など少しも見せない人が自分のために怒ってくれたというのは、照れ臭くも嬉しかった。
「ハルミ、私はハルミを大切に想っている。だから戻ってきてくれないか」
ユリウスは真剣な目をして春海を見つめた。
大切に想っているという言葉に、ドキリとした。
嬉しいような、心臓がうるさいような痛いような。
クリストフに言われたときには、嬉しく胸が暖かくなったけれど、どうして相手がユリウスだとこんなに落ち着かない気持ちになるのだろう。
「でも、僕は僕を愛してくれる人を見つけたんです。だから、戻れません」
「それは……、教官か」
「はい。僕はクリスさんと一緒にいたいんです」
息子だと言ってくれたクリストフと共に生きたい。
この1年、他に家族の気配はなかった。甥はいるのが確定しているけれど、妻や子供は居ないんじゃないかと思っている。
もしかしたら、この先、そんな相手が出来たとしたら、もちろん春海は出ていくつもりだけれど、それまでの間は、クリストフが邪魔だと言わない限り、此処に居たい。
ユリウスはしばらく無言でいたけれど、耐えきれなくなったかのように、小さく息を吐いた。
「1年前、どうして居なくなったのか、教えてくれるか」
「……探そうと思ったんです。僕を愛してくれる人がこの世界のどこかには絶対居るってユリウス様に教えてもらって。あの時は何だかハイになってたから、何でも出来る気がして、そのまま屋敷を飛び出しました。世界中を探さないと見つからないレベルの人が、屋敷の中に居るはずがないし、それなら屋敷に居る時間が勿体ないって思って」
「……そうか」
ユリウスは、そう返事をして肩を落とした。
「あの。突然居なくなったりして、すみませんでした。心配、させてしまいました、よね」
春海がいなくなったところで、誰かが心配したり、誰かに迷惑がかかったりなど、あの頃の春海には、本当にそんな可能性があるなんてことを考えられるような感覚がなかったのだ。
けれど、そうではないということを、今の春海は知っていた。
そして、やはりユリウスは頷いてくれた。
「ああ。心配した。だが、無事な姿をみられたから良いんだ。元はと言えば、私が自分の気持ちを早く自覚してハルミに伝えられていれば、こんな事にはならなかったかもしれないのだから」
「自分の気持ち……?」
「ハルミを大切に想う気持ちだ。ハルミが居ないとホッとする時間もない。癒しもない。何をするにもハルミの顔がチラついて頭から離れない。つまり」
「つまり……?」
「私は、ハルミを愛しているんだ」
「っ」
そんなことを言われるなんて春海は1ミリも想像していなかった。
内心はパニックで、頭の中には、“え?”や“な?”と言った意味をなさないような文字が埋め尽くして最終的にキャパを超え頭は真っ白になった。
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