僕はナイチンゲール

いちみやりょう

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恋愛的に

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和やかに会話をしながら3人で食事をして、僕はお酒を飲んでいなかったので早々に食べ終わり、2人に断ってから皿などを洗うために席を立った。

皿を洗っているとふと後ろに誰か立ったのが分かった。
振り返ると只野さんだった。

「どうされたんですか? あ、ビールですか?」

そう言って冷蔵庫の中からビールを取り出そうとすると「いや」と止められた。
それでもその後は無言だった。

「あ、ビールじゃないならウィスキーですか? えっとあとは、焼酎と、バーボンと日本酒? どれでしょうか」
「……いや、酒じゃない。ただ……質問をしたかったんだ」
「質問? 僕にですか?」
「ああ。君は佐渡のことが好きなのか?」
「? 好きですよ」
「それは雇主として? それとも恋愛の意味か?」

その質問に僕は一気に身体中の血が顔に集まってしまうように感じた。

「れ、れ、恋愛じゃないです! 雇主としてもですが、雇われる前から友人として好きです!」
「……そうか。それなら良いんだが」
「あの、どうしてそんなことを聞くんですか……?」
「いや……君がもしも佐渡のことを好きなのだとしたら、私の家の使用人になってもらおうと思っただけだ。あいつは昔の恋愛を今も引きずっているから。そんな報われない恋をするのは若い君には酷だろう。まぁ、君が佐渡を好きじゃないなら良いんだ」

そう言って只野さんは自分で冷蔵庫からビールを1本と、戸棚からウィスキーとグラスを取ってキッチンを出ていった。

ーー銀次さんのことをそういうふうに好きだと思ったことはないけれど、これからもそうならないように気をつけなきゃな。


絶対に銀次さんを好きにならないという決意を胸に、皿の片づけを終わらせてダイニングの方に戻ると、2人はソファに移動していて、只野さんは3人がけのソファで爆睡していた。
銀次さんは僕が戻ったのにも気づかずに1人がけのソファで静かにウィスキーを飲んでいた。

その手には掌くらいの小さな紙を持っていて、それを眺めているようだった。

ーー写真、かな

だけど、その銀次さんの様子は誰も近づけさせないような、そんな雰囲気だった。

僕は静かにキッチンに戻って、そこから廊下に出てタオルケットを持って戻って来た。
わざと大きめの足音を立ててダイニングのドアを開けると、銀次さんは紙を持っておらず、僕をいつもの優しい顔で出迎えてくれた。

「タオルケット持って来てくれたの? ありがとうね。只野は酒が入ると寝ちゃうから、ここで飲むと泊まっていくことが多いんだよ。向かいの家なのにね」

先ほどの雰囲気など微塵も感じさせずに銀次さんは明るく笑っていた。

「そうなんですか。何だか仲が良さそうで羨ましいです」
「そうかな? まぁ、仲は確かに良いかな。中高一貫の学校だから思春期はずっと一緒に過ごしていたからね」
「じゃあもう10年以上友達なんですね」
「今は28だから16年くらいだね。そう考えると確かに長いな」

銀次さんは感慨深そうにふふと笑った。
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