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偽デート
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もはや会長にストレスをかけるのは申し訳なさすぎて、アピールするのは諦めていた。
だが。
学年末テスト。
俺はこれにかけていた。
なんでかって?
これの2位の景品に“好きな生徒の1日をゲットできる権”があるからだ。
選ばれた生徒は1日その生徒に付き合わないといけない代わりに、学校側から“生徒の望むものカタログ”がもらえる。このカタログに載ったものを1つ申請してゲットできる。
俺は“好きな生徒の1日をゲットできる権”をゲットして会長の1日をゲットしようと目論んでいた。
そして俺は見事に2位になることができて、その幻の“好きな生徒の1日をゲットできる権”をゲットできた。
俺はその券を持ってその日が来るのを待った。
使う日は自分で決められる。
期限は1ヶ月だけど、その間に4月1日があるんだ。
券をゲットできた日に会長に予約を入れた。
会長はうんざりした顔をしていた。
すみません、会長。
これで最後にしますから。
だって会長が約束してくれたんですよ。
俺の誕生日、一緒に祝ってくれるって。
俺は左耳につけたピアスを触った。
会長とお揃いのピアス。
もう会長はつけてくれていないけど。耳の穴もきっともう塞がってしまっているだろうけど。
今の俺が会長を感じることができる唯一のものだから。
不安になったりするとピアスを触ることがいつのまにか癖になってしまっていた。
全く、自分の女々しさにはびっくりする。
そしてデート当日。
会長はちゃんと時間通りに来てくれた。
「会長、今日は来てくれてありがとうございます」
「ああ」
会長はつまらなそうに返事をした。
「今日はデート以外にお願いがあるんです……俺のこと、龍介と呼んで欲しい」
「……分かった」
そうして、静かに俺たちの最後のデートは始まった。
まずは水族館に行った。
ポツポツと会話しながらゆっくり見て回って、水族館の近くのカフェに入って。
会話はぎこちなくても、少し前までの楽しかった2人に戻れた気持ちになれた。
吉宗さん、好きになってもらえるように最後まで努力できない俺ですみません。
俺が好きだと告げることでストレスを感じているだろう吉宗さんに申し訳ないっていうのは言い訳で。
結局、俺は臆病でずるいから。
吉宗さんに冷たい目で見られ続けることに耐えられないんです。
弱くてすみません。
それからあっという間に時間になった。
「今日はありがとうございました。会長のことは……もう、綺麗さっぱり、あ、あき、諦めようと思い、ます。今まで不快にさせて、すみませんでした」
涙が出ないように話したら少しつっかえてしまった。
会長は何も言わなかった。
だが。
学年末テスト。
俺はこれにかけていた。
なんでかって?
これの2位の景品に“好きな生徒の1日をゲットできる権”があるからだ。
選ばれた生徒は1日その生徒に付き合わないといけない代わりに、学校側から“生徒の望むものカタログ”がもらえる。このカタログに載ったものを1つ申請してゲットできる。
俺は“好きな生徒の1日をゲットできる権”をゲットして会長の1日をゲットしようと目論んでいた。
そして俺は見事に2位になることができて、その幻の“好きな生徒の1日をゲットできる権”をゲットできた。
俺はその券を持ってその日が来るのを待った。
使う日は自分で決められる。
期限は1ヶ月だけど、その間に4月1日があるんだ。
券をゲットできた日に会長に予約を入れた。
会長はうんざりした顔をしていた。
すみません、会長。
これで最後にしますから。
だって会長が約束してくれたんですよ。
俺の誕生日、一緒に祝ってくれるって。
俺は左耳につけたピアスを触った。
会長とお揃いのピアス。
もう会長はつけてくれていないけど。耳の穴もきっともう塞がってしまっているだろうけど。
今の俺が会長を感じることができる唯一のものだから。
不安になったりするとピアスを触ることがいつのまにか癖になってしまっていた。
全く、自分の女々しさにはびっくりする。
そしてデート当日。
会長はちゃんと時間通りに来てくれた。
「会長、今日は来てくれてありがとうございます」
「ああ」
会長はつまらなそうに返事をした。
「今日はデート以外にお願いがあるんです……俺のこと、龍介と呼んで欲しい」
「……分かった」
そうして、静かに俺たちの最後のデートは始まった。
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会話はぎこちなくても、少し前までの楽しかった2人に戻れた気持ちになれた。
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結局、俺は臆病でずるいから。
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弱くてすみません。
それからあっという間に時間になった。
「今日はありがとうございました。会長のことは……もう、綺麗さっぱり、あ、あき、諦めようと思い、ます。今まで不快にさせて、すみませんでした」
涙が出ないように話したら少しつっかえてしまった。
会長は何も言わなかった。
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