好きになるつもりなんてなかった

いちみやりょう

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「なぁ、ゲイとかバイとかが嫌いな会長がさぁ、それでも男と付き合う時ってどんな時だと思う?」

俺は食堂で昼食中に和葉にこっそりと聞いた。

「なに? やっぱ好きになっちゃったの? 会長のこと」
「んー、いやそんなんじゃないんだけど。決してそういうことじゃないんだけれども、例えばそうなったら、それって会長は何を考えて付き合うことになったのかなぁって思ってさ」
「龍介、あの噂もう聞いたの?」
「へ? あの噂?」
「またまたぁ、会長が最近僕たちと同じ学年に転入してきた町田くんと付き合い始めたって噂のことだよ。それ知っててその質問だろ? まぁ、あの会長が男と付き合うって嘘だろって思ったけどさ」

は……。
なんだよそれ。
余計意味わかんねぇよ。

町田? 誰だよそれ。

いやいや。
そんなはずねぇって。

噂は所詮噂ってことだろ。

「でも町田くんって女の子と見間違うくらい可愛くってさ、正直ゲイとかバイとか関係なくいいなって思う気持ちはわかるよなぁ」
「よなぁって、俺今の今まで転入生の存在すら知らなかったよ」
「まじ? 3組にいるから今度見てみなよ」
「わかった。でもなんでそんな噂が回ってんの? 会長って誰にでも当たり障りない感じなんだろ?」
「いや、僕もあんまり知らないんだけどさ、なんかお昼一緒に食べてたり腕組んで歩いてたりするのを目撃した人が何人かいるらしいんだよ」
「……まじか」

まじかぁ。
1人が言ってるとかじゃなくて何人かが言ってんのかぁ。

じゃあなんで俺と付き合えなんて言ってきたんだ?

会長ってゲイ嫌いとか以前にそういう浮気とか嫌いそうなのにな。
俺は会長と付き合いが長いわけでもないし、あくまで印象でしかないけど。

考え出したら心臓がドクドクと煩くて、痛くて。
会長が本当に町田って人と付き合ってるのか、噂を確認するのが怖くなった。
もし本人に聞きでもして、この前のことは冗談だったと言われるんじゃないかとか、そんな風に思ってしまった。
俺って人を好きになるとこんなにめんどくさくなっちゃうんだ。

嫌だな。

俺がこんなめんどくさいこと考えてるのが、会長にバレちゃったら俺……。
会長にめんどくさいって思われたくないな。
会長に嫌われたくないな。

今まで俺は周りの人が恋愛してるのをみる時みんなキラキラしてて楽しそうだなって思ってた。

でも人を好きになるのって噂一つで悩んじゃうくらいこんなに苦しいことなんだ。
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