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会長の過去
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そして、俺が隊長になって初めてのお茶会が来た。
そこで会長に挨拶をしてから正式に隊長になる流れらしい。
お茶会に遅れてやってきた会長は鋭い目つきだが確かに極めて整った顔立ちだ。
俺は会長の座った椅子のところまで行って声をかけた。
「始めまして、久我会長。会長の親衛隊の隊長を務めることになりました石平です。よろしくお願いいたします」
「ああ、よろしく」
そう言って笑った会長は確かに冷たい印象はあるものの、和葉や親衛隊の人たちに言われていたように親衛隊を嫌っている風には感じなかった。
それから隊長だけの特権らしいがスマホのアドレスを交換してその日のお茶会は終わった。
正式に隊長になった俺はこれから忙しくなるらしい。
書類仕事なんかや、会長の登下校の間の親衛隊員たちの統率や他の親衛隊とトラブルがあった際の話し合いなど、上げだすとキリがないくらい忙しそうだ。
その中でも一番神経を使う仕事だと思うのが、会長への告白の補助だ。
正直勝手にやってくれよと思うのだが、それでは風紀が乱れるとかで、会長に告白したい場合は必ず俺を通して日時を決定して間違いの起こらないように隊長である俺同席で告白をしなければならないらしい。
まぁ今のところまだ告白の打診はないからいいんだけど。
「おーい、近づきすぎんなー」
俺はプラスチックのメガホン片手に叫んでいる。
会長の登校の時間の交通整理だ。
「「「きゃーー!! かいちょーーー!!」」」
よくもまぁ朝からそんな甲高い声が出せるなと朝の眠い頭でぼんやりと思いながら、隊員があまり近づきすぎないように声をかけ続ける。
「おはよう。ご苦労様」
「へ? ああ。おはようございます」
会長が俺にいきなり話しかけてきてびっくりして若干うろたえながら返事をした。
「隊長うらやまし~」
「でも隊長はさすがにできないよね~」
と、隊員たちに会長が去ってから次々と話しかけられた。
やっぱり、会長が親衛隊を嫌ってるのって本当なのかなと思った。
だって、そんなそぶり一回も見ていない。
その日の食堂で和葉に聞いてみた。
「なぁ、会長って結構優しい感じの対応だと思うんだけど、みんななんで親衛隊は嫌われてるって思うんだ?」
「それには深ーい事情があるのですよ」
和葉は嬉々として話し始めた。
「あれは、まだ僕らが中学生だった頃」
「はは、なんだよその語り口調」
「いいから聞いてよ。あれは、まだ僕らが中学生だった頃。久我会長はすごく仲良くしている生徒がいたんだ。付き合ってる風には見えなかったけど、どこに行っても2人は一緒に過ごしてたよ。でもその子はどんどん元気がなくなっていった。会長の親衛隊が裏でいじめてたんだ。会長は途中でそれに気がついて止めるように言ったんだけど、それは逆効果だったんだ。親衛隊の一人が自分たちは近づけもしない、話すこともできないのにって逆恨みして、会長が仲良くしてたその子を、久我会長の目の前で刺したんだ。刺した本人は少年院に送られたよ」
「えっ。刺した!?」
「そう。その子の命に別状は無かったんだけど、その子の親はカンカンに怒ってた。まぁ、当たり前だけど。会長に二度と息子に近づくなって学校の廊下で大きな声で言ってた」
「そんな……それって会長は悪くないじゃん」
「そうだけど、その子のご両親は会長がその子と仲良くしてさえいなければって。そう思ったみたい」
「だからお茶会をするようになったのか」
「うん。久我会長は最初はすごく嫌がってたよ。ホモは近くなって怒ってた。だけど久我会長とちょっとでも話した相手がターゲットになったりして風紀が乱れて。だから1ヶ月に一回必ず会長と話せるお茶会を作ったんだ」
「そんなことがあったんだ」
「うん。だから会長は親衛隊を嫌ってるのをみんな知ってる。今の会長は誰に対しても当たり障りなく過ごしているよ。まぁだいぶ過激だった親衛隊はみんな卒業するか自主退学するかになったから今の親衛隊は純粋に会長に片思いしている子が多いと思うから安心して」
「そっか。教えてくれてありがとう和葉」
「ううん。嫌になったらちゃんと言ってよ? 隊長なんていつ辞めてもいいんだから」
和葉はそう言って俺を心配そうに見た。
本当に優しいやつなんだな。
そこで会長に挨拶をしてから正式に隊長になる流れらしい。
お茶会に遅れてやってきた会長は鋭い目つきだが確かに極めて整った顔立ちだ。
俺は会長の座った椅子のところまで行って声をかけた。
「始めまして、久我会長。会長の親衛隊の隊長を務めることになりました石平です。よろしくお願いいたします」
「ああ、よろしく」
そう言って笑った会長は確かに冷たい印象はあるものの、和葉や親衛隊の人たちに言われていたように親衛隊を嫌っている風には感じなかった。
それから隊長だけの特権らしいがスマホのアドレスを交換してその日のお茶会は終わった。
正式に隊長になった俺はこれから忙しくなるらしい。
書類仕事なんかや、会長の登下校の間の親衛隊員たちの統率や他の親衛隊とトラブルがあった際の話し合いなど、上げだすとキリがないくらい忙しそうだ。
その中でも一番神経を使う仕事だと思うのが、会長への告白の補助だ。
正直勝手にやってくれよと思うのだが、それでは風紀が乱れるとかで、会長に告白したい場合は必ず俺を通して日時を決定して間違いの起こらないように隊長である俺同席で告白をしなければならないらしい。
まぁ今のところまだ告白の打診はないからいいんだけど。
「おーい、近づきすぎんなー」
俺はプラスチックのメガホン片手に叫んでいる。
会長の登校の時間の交通整理だ。
「「「きゃーー!! かいちょーーー!!」」」
よくもまぁ朝からそんな甲高い声が出せるなと朝の眠い頭でぼんやりと思いながら、隊員があまり近づきすぎないように声をかけ続ける。
「おはよう。ご苦労様」
「へ? ああ。おはようございます」
会長が俺にいきなり話しかけてきてびっくりして若干うろたえながら返事をした。
「隊長うらやまし~」
「でも隊長はさすがにできないよね~」
と、隊員たちに会長が去ってから次々と話しかけられた。
やっぱり、会長が親衛隊を嫌ってるのって本当なのかなと思った。
だって、そんなそぶり一回も見ていない。
その日の食堂で和葉に聞いてみた。
「なぁ、会長って結構優しい感じの対応だと思うんだけど、みんななんで親衛隊は嫌われてるって思うんだ?」
「それには深ーい事情があるのですよ」
和葉は嬉々として話し始めた。
「あれは、まだ僕らが中学生だった頃」
「はは、なんだよその語り口調」
「いいから聞いてよ。あれは、まだ僕らが中学生だった頃。久我会長はすごく仲良くしている生徒がいたんだ。付き合ってる風には見えなかったけど、どこに行っても2人は一緒に過ごしてたよ。でもその子はどんどん元気がなくなっていった。会長の親衛隊が裏でいじめてたんだ。会長は途中でそれに気がついて止めるように言ったんだけど、それは逆効果だったんだ。親衛隊の一人が自分たちは近づけもしない、話すこともできないのにって逆恨みして、会長が仲良くしてたその子を、久我会長の目の前で刺したんだ。刺した本人は少年院に送られたよ」
「えっ。刺した!?」
「そう。その子の命に別状は無かったんだけど、その子の親はカンカンに怒ってた。まぁ、当たり前だけど。会長に二度と息子に近づくなって学校の廊下で大きな声で言ってた」
「そんな……それって会長は悪くないじゃん」
「そうだけど、その子のご両親は会長がその子と仲良くしてさえいなければって。そう思ったみたい」
「だからお茶会をするようになったのか」
「うん。久我会長は最初はすごく嫌がってたよ。ホモは近くなって怒ってた。だけど久我会長とちょっとでも話した相手がターゲットになったりして風紀が乱れて。だから1ヶ月に一回必ず会長と話せるお茶会を作ったんだ」
「そんなことがあったんだ」
「うん。だから会長は親衛隊を嫌ってるのをみんな知ってる。今の会長は誰に対しても当たり障りなく過ごしているよ。まぁだいぶ過激だった親衛隊はみんな卒業するか自主退学するかになったから今の親衛隊は純粋に会長に片思いしている子が多いと思うから安心して」
「そっか。教えてくれてありがとう和葉」
「ううん。嫌になったらちゃんと言ってよ? 隊長なんていつ辞めてもいいんだから」
和葉はそう言って俺を心配そうに見た。
本当に優しいやつなんだな。
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