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入学

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4月1日、エイプリルフールで世の中に嘘が蔓延る日に俺は生まれた。
上には2人の兄がいてどちらも優秀だったために、俺は何の期待もされることなく過ごしてきた。兄2人は優秀だったかも知れないが、性格は最悪だ。
俺はいつもいじめられてきた。
父も母も俺に興味はなく、兄2人の横暴は見て見ぬふりで一応と形ばかりに「おめでとう」と言われる。
俺は自分の誕生日が大嫌いだった。
兄たちからはお前が生まれてきたのはエイプリールフールの間違いだったと毎年のようにからかわれた。

俺が今まで生きてこられたのはおじさんのおかげだ。
母の兄で、漫画家をしていたおじさんは家族の中でいないものとして扱われる俺を大切にしてくれた。
おじさんからは色々なことを教わった。
家族が俺を忘れて外食に行ってしまいホームアローン状態だった俺に気がついて一緒に食事をしてくれたこともあった。
おじさんだけが俺の誕生日を心の底から祝ってくれた。

そんな優しいおじさんは俺が中学卒業と同時に天国へと旅立ってしまった。
遺伝性の病気で、もう少し発見が早ければ助かっていたはずの病気だったらしい。

俺はおじさんに沢山恩があるのに気がついてあげられなかったんだ。


中学まではおじさんのところに入り浸って普通の学校に通っていた。
だが、おじさんが死んで俺の両親は俺を全寮制の高校に進学させた。
中高一貫のその学校は男子校で、兄2人が卒業した学校だ。


「君、外部生? 珍しいね」

入学式の最中、俺の横に座っていた可愛らしい顔の生徒が話しかけてきた。

「うん。親の都合で」
「なぁに暗い顔してんのさ。君みたいにきれいな顔の男子は暗い顔してるのはモテないよ?」
「モテるもモテないも、ここは男子しかいねぇだろ?」
「分かってないねぇ、君。男子校ってことはみんな自ずと男子に目が行っちゃうのさ。この学校は島に建ってて外の世界と分断されてるだろ? だからかな、ここは8割の生徒はゲイかバイなんだよ」
「ふーん」
「ま、君もわかる日がくるさ。君、名前は? 僕の名前は斎藤 和葉」
「俺は石平 龍介」
「かっこいい名前だね。よろしく龍!」
「……よろしく」

退屈な入学式が終わってトイレに行ってから教室に向かうと、俺の席は和葉の隣だった。
嬉しそうに和葉が手招きしている。

「龍! 隣だったよ! 嬉しいなぁ」
「うん」

「おーい。席付けぇお前らぁ」

前方のドアからやけに気怠げな白衣の先生が入ってきた。
アンニュイを前面に押し出して目は死んだ魚のようなのに先生が入ってきた瞬間クラスの生徒は嬉しそうに歓声を上げ始めた。

「静かにしろ、あー、もうほとんどの生徒は知ってると思うけどお前らの担任になった一十木 善だ。よろしく頼む」

わーっと歓声が上がって、先生は諦めたようにため息をついて教卓の横に置いてあった椅子に座った。

「じゃあ、自己紹介でもしてくれ」

先生がそう言うと可愛らしい見た目の男子が立ち上がって指揮をとり、出席番号の1番から自己紹介をしていく流れになった。
俺は石平なので2番めで、すぐに順番がきた。

「石平 龍介です。外部生で知らないことも多くあると思いますが、よろしく」

前に出て自己紹介をした時、俺を見て頬を染めているやつもいた。
なるほど、と思った。和葉の言ってたことはあながち間違っていないらしい。

俺には恋愛なんて感情は今のところ分からないけど、何だか楽しそうでいいなと思った。

「お昼、食堂行く? それとも購買?」
「あー、食堂かな」
「龍が行くなら僕も食堂にしよー」
「和葉も行くならよかった。道がわからないから」

素直にそう言うと和葉は目を丸くして俺を見た。

「なに?」
「いや、可愛いなって思って」

和葉は至って真面目な顔をして俺にそう言ってきた。

「? 和葉の方が可愛いと思うけど。ってか和葉もゲイかバイなの?」
「僕は女の子が好きかな。でも僕は腐男子だから偏見はないよ」
「腐男子?」
「男同士の恋愛を見るのが好きだって言えばわかるかな」
「分からないけど、分かった」
「ははっ、まぁすぐ分かるようになるよ」

そうこう話しているうちに食堂についた。
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