器量なしのオメガの僕は

いちみやりょう

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帰りの車の中では、四宮は千秋と一緒に後部座席に座ってずっと抱きしめていてくれた。

「……僕が、あの人たちの家族だったって知ってたんだね」

千秋がそう言うと、四宮は優しく千秋の頭を撫でた。

「ごめんね……気持ち悪いと思われるかもしれないと思って黙っていたんだけど、千秋のことは大体調べた。だけど、調べても千秋はずっとあの屋敷の中で生活していたから、屋敷の中であそこまでひどい扱いを受けているとは知らなかった。今日のパーティーへの参加者を確認していなくてごめん。こんなことは未然に防げたのに、俺のせいだ」
「ううん。晴臣が来てくれて本当に嬉しかったよ。守ってくれてありがとう」

ギュッと四宮に抱きくと背中を優しくポンポンと叩いてくれて千秋はいつの間にか眠りについていた。

目が覚めたら、千秋は自分のベットの上にいて、隣で四宮が眠っていた。

胸がドキドキしてきて体の奥底の方から幸せだという気持ちが湧き上がってくる。
けれど、それと同時に千秋は四宮に守られてばかりで、四宮に対して何も出来ていないことに不安を感じていた。

四宮のために、自分は何ができるのか。
千秋には見当もつかなかった。

「千秋、おはよう」

晴臣が重そうにまぶたを開けて、千秋を見た。

「おはよう、晴臣」
「どうしたの?」
「え?」
「何か難しいこと考えてるでしょ?」
「か、考えてないよ。ただ」
「ただ?」
「ただ、晴臣と一緒にいるのが幸せすぎて僕はどうやったらそれが返せるかなって、思って」

千秋がそう呟くと、四宮は愉快そうにククと笑った。

「かわいいなぁ千秋は。俺は千秋が居てくれるだけで幸せだよ。千秋を見てるだけで癒されるし、仕事の疲れも吹っ飛ぶし、俺は千秋の全部が好きなんだから、千秋はもう存在しているだけで俺に利があるんだよ」

唐突な四宮の褒めの勢いに押され千秋は若干引き気味に四宮を見た。

「い、言い過ぎじゃない?」
「言い足りないくらいだよ」

四宮が千秋を抱き寄せて、ベットの中で密着すると千秋はドキドキと胸が高なった。

『四宮様、起床時間を5分ほど過ぎております』
「ああ」

扉の外から熊井の声が聞こえ、四宮は名残惜しそうに千秋の体を離し、上体を起こした。

「ごめんね。今日は大事な会議がいくつか入っているからいつもより少し遅くなりそうなんだ。屋敷の中で暇だと思うけど、入用があったらなんでも熊井に伝えてね」
「うん、ありがとう。お仕事気をつけてね」

四宮は嬉しそうに微笑み、千秋の額にキスをした。

「千秋は昨日のことで疲れてるでしょう? まだ眠っていて」
「僕、疲れてないよ。一緒に起きるよ」
「だーめ。心配なんだ。まだ朝早いから、俺を安心させると思ってもう少し寝ててよ」
「……わかった」
「ありがとう。じゃあ、行ってきます」
「……行ってらっしゃい」

四宮はそれから身支度をして慌ただしく出社していった。
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