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12.ヒート

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ギルも僕を好きだと言ってくれて抱き寄せてもらって、暖かくて、やっぱりダミアンとクロエのように好きな人とくっついていると幸せになるんだと思った。

ギルはなんだかとてもいい匂いがして、ギルにくっついているだけで心地が良い。

部屋の外からはニコラ達が慌ただしくお祝いの準備をする音が聞こえてきているけど、この部屋にはギルと僕の2人だけだ。こんなこと、別に今までだって何度もあったけど、気持ちが通じ合った今は嬉しい気持ちと同じくらい緊張している。

だからか、妙に顔が暑くて体もなんだかポカポカしてきたし頭もふわふわしてきた。

「……カミーユ?」
「なぁに?」
「うっ。いや、カミーユ、もしかして体が熱いか?」

ギルは、なんだか顔を赤くしてそう言った。
ギルも暑いのかもしれない。

「ん。ふふ。なんでだろう。ポカポカぁするぅ」

言っている側からどんどん体は熱くなっていって、体の奥の方からどうすれば良いのか分からないムズムズした感覚が襲ってきた。

「っ。そうか。お祝いはまた後日になりそうだな?」
「んゃ、なんで……? お祝い、したい」
「そうだな。楽しみにしていたもんな? だが、カミーユはヒートを起こしている。このままの状態ではこの部屋から出すわけにはいかない」
「んん」
「……気持ちが通じ合って、初日で手を出したくはないしな」

僕を見るギルの目はなんだかいつもと違う気がして、ゾクゾクとよく分からないものが背中を這うような不思議な感覚がした。そしてどうしてもギルにくっついていたい。
頭がふわふわするけど、それだけは強く感じた。

けれどギルにくっつく僕を抱え上げて、ベットに寝かせてから離れていってしまった。

『抑制剤を持ってきてくれ』

扉の外にそう呼びかけると、すぐに何かを受け取ってまた僕の方に近づいてきた。

「飲め。数分で楽になるはず」
「っ……やだぁ、さわって……ギル……」

体のムズムズはどうしたらいいのか分からないけど、とにかくギルにくっついていたいし、ギルの匂いを嗅いでいたいし、ギルに触って欲しい。

「っ、だめだ。ほら」

ギルは僕の口に無理やり薬を入れてきて舌に乗った薬はすぐに溶けて無くなった。どうして触ってくれないのかと胸がギュッと切なくなった。

「ギルぅ……」
「もう少し大人になったらな?」

薬によって落ち着いてきた頭は少しクリアになっていた。

「僕は、今日でもう成人だよ」
「それでも。ちゃんと式を挙げて、国中の人に認めてもらってからの方がいいだろう?」
「……ん」

ギルの声は優しく響いて、僕を落ち着かせてくれた。
確かにギルの言う通りに、みんなにギルとのことを認めてもらいたい。
そのまま眠ってしまい、次に起きたのは翌日だった。
僕がくっついたまま眠ってしまったようで、目の前にはギルの胸があった。

「ギル、おはよう」

昨日の記憶があやふやで不思議だ。
どうしてギルとくっついて寝ているんだっけ。想いが通じ合ったけど、それからどうなったんだっけ。

「……おはようカミーユ。よく眠れたか?」
「うん。でもギルはよく眠れなかった……?」

ギルの目の下にはうっすら隈ができていて、よく眠れたようには見えなかった。

「いや、そんなことはない。今日は、体調はどうだ?」
「僕はいつも通りだよ」
「そうか。なら、昨日できなかったパーティーをしようか。無理をしてはダメだぞ?」
「うん! やった。楽しみ」

ぽんぽんと僕の頭を優しく叩いたギルは僕から離れてベットから降りた。

「では、準備をしないとな? 俺も着替えてくる。また後でな」
「分かった!」

それからその日は僕の成人の祝いと、ギルと僕の婚約の祝いで盛大なパーティーになった。
いつも城で働いてくれている使用人達や、会ったこともないギルの臣下までみんなにお祝いされて、とても楽しく過ごすことができた。

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