15 / 32
ぴーちゃん視点3
しおりを挟む
ドクリドクリと血がめぐる感覚で目を覚ますと、臣下に囲まれていた。
「陛下!! お目覚めですか!! 大変なのです!!」
臣下の1人、カミーユに対して特に熱烈な思いを向けるニコラが泣きながら訴えてきた。
「どうした」
「それが! 陛下が意識を失われている間にカミーユ様が!!」
「なんだ! カミーユがどうした!!」
「お部屋から飛び降られました。かろうじて命は助かったようですが、目を覚まされていないようです。もう!! カミーユ様をあんなところには置いておけません!! 早く、早く陛下の封印をどうにかしなかれば!!」
「落ち着け、ニコラ。実は封印がどうにかなりそうかもしれない」
「な!!! 教えてください!! どうすればいいんですか!」
ニコラは必死の形相で俺に詰め寄ってきた。
魔族は全員家族も同然といえども、身分社会には変わりない。
王である俺に対してこの態度なのは、カミーユの一大事だから仕方がないだろう。
何せ魔国ではカミーユは女神すぎて崇拝の対象になりつつある。
少しだけ軽くなった体を確認しながらはっきりと告げた。
「血だ」
「血?」
「カミーユの血を舐めてから少し封印が解けている」
「血、血を……? な……何してるんですか。一体」
ニコラが先ほどまでの勢いをなくし、俺を軽蔑の目で見てくる。
「少し気になって、壁についた血をほんの少し舐めただけだ」
「い、いやいや」
ドン引きのニコラだが、俺だってその気持ち悪さを分かっている。
「だが、その気持ちの悪い行動のおかげで封印を解く手がかりが見つかったんだ」
「開き直った……」
「とにかく、カミーユの命が助かったこと、本当によかった。夢渡りの魔術が使える魔族を呼び寄せろ」
「は、はい!!」
そうして、夢渡りによって俺やニコラ達がカミーユに会うことができるようになった。
バイヤール公爵家別邸前からカミーユの血を回収し、俺はそれを少しずつ摂取することになった。
封印を解いてくれるカミーユの血は、一度にたくさん摂ると体への影響が強く寝込んでしまうためだ。けれども少しずつ摂取しているおかげで封印はもうあと少しで解けそうなほど解けた。
カミーユには俺の家族になってくれと願った。
カミーユはそれを喜んでくれて、俺たちは家族になった。
俺はカミーユのことを愛している。
幸いなことに俺はアルファで、カミーユの番に立候補することができる。
けれど、カミーユの番相手はカミーユが成長してから、カミーユが決めることだ。
俺が束縛してはならない。
俺は自分の年齢を覚えていないほどに年上で、カミーユからしたらお爺さんもいいところだ。
今はただ、8歳に相応しく周りの大人に甘え、よく遊びよく食べ、よく眠って健全に過ごしてくれればいい。今の俺は、カミーユが心から欲して得ることのできなかった愛を、充分に注ごう。父親として、兄として、カミーユの成長を見届けよう。
「陛下!! お目覚めですか!! 大変なのです!!」
臣下の1人、カミーユに対して特に熱烈な思いを向けるニコラが泣きながら訴えてきた。
「どうした」
「それが! 陛下が意識を失われている間にカミーユ様が!!」
「なんだ! カミーユがどうした!!」
「お部屋から飛び降られました。かろうじて命は助かったようですが、目を覚まされていないようです。もう!! カミーユ様をあんなところには置いておけません!! 早く、早く陛下の封印をどうにかしなかれば!!」
「落ち着け、ニコラ。実は封印がどうにかなりそうかもしれない」
「な!!! 教えてください!! どうすればいいんですか!」
ニコラは必死の形相で俺に詰め寄ってきた。
魔族は全員家族も同然といえども、身分社会には変わりない。
王である俺に対してこの態度なのは、カミーユの一大事だから仕方がないだろう。
何せ魔国ではカミーユは女神すぎて崇拝の対象になりつつある。
少しだけ軽くなった体を確認しながらはっきりと告げた。
「血だ」
「血?」
「カミーユの血を舐めてから少し封印が解けている」
「血、血を……? な……何してるんですか。一体」
ニコラが先ほどまでの勢いをなくし、俺を軽蔑の目で見てくる。
「少し気になって、壁についた血をほんの少し舐めただけだ」
「い、いやいや」
ドン引きのニコラだが、俺だってその気持ち悪さを分かっている。
「だが、その気持ちの悪い行動のおかげで封印を解く手がかりが見つかったんだ」
「開き直った……」
「とにかく、カミーユの命が助かったこと、本当によかった。夢渡りの魔術が使える魔族を呼び寄せろ」
「は、はい!!」
そうして、夢渡りによって俺やニコラ達がカミーユに会うことができるようになった。
バイヤール公爵家別邸前からカミーユの血を回収し、俺はそれを少しずつ摂取することになった。
封印を解いてくれるカミーユの血は、一度にたくさん摂ると体への影響が強く寝込んでしまうためだ。けれども少しずつ摂取しているおかげで封印はもうあと少しで解けそうなほど解けた。
カミーユには俺の家族になってくれと願った。
カミーユはそれを喜んでくれて、俺たちは家族になった。
俺はカミーユのことを愛している。
幸いなことに俺はアルファで、カミーユの番に立候補することができる。
けれど、カミーユの番相手はカミーユが成長してから、カミーユが決めることだ。
俺が束縛してはならない。
俺は自分の年齢を覚えていないほどに年上で、カミーユからしたらお爺さんもいいところだ。
今はただ、8歳に相応しく周りの大人に甘え、よく遊びよく食べ、よく眠って健全に過ごしてくれればいい。今の俺は、カミーユが心から欲して得ることのできなかった愛を、充分に注ごう。父親として、兄として、カミーユの成長を見届けよう。
85
お気に入りに追加
2,267
あなたにおすすめの小説

王子のこと大好きでした。僕が居なくてもこの国の平和、守ってくださいますよね?
人生1919回血迷った人
BL
Ωにしか見えない一途なαが婚約破棄され失恋する話。聖女となり、国を豊かにする為に一人苦しみと戦ってきた彼は性格の悪さを理由に婚約破棄を言い渡される。しかしそれは歴代最年少で聖女になった弊害で仕方のないことだった。
・五話完結予定です。
※オメガバースでαが受けっぽいです。

白い部屋で愛を囁いて
氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。
シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。
※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。

【完結】可愛いあの子は番にされて、もうオレの手は届かない
天田れおぽん
BL
劣性アルファであるオズワルドは、劣性オメガの幼馴染リアンを伴侶に娶りたいと考えていた。
ある日、仕えている王太子から名前も知らないオメガのうなじを噛んだと告白される。
運命の番と王太子の言う相手が落としていったという髪飾りに、オズワルドは見覚えがあった――――
※他サイトにも掲載中
★⌒*+*⌒★ ☆宣伝☆ ★⌒*+*⌒★
「婚約破棄された不遇令嬢ですが、イケオジ辺境伯と幸せになります!」
が、レジーナブックスさまより発売中です。
どうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m
【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜
ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。
そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。
幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。
もう二度と同じ轍は踏まない。
そう決心したアリスの戦いが始まる。

捨てられオメガの幸せは
ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。
幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。
婚約破棄?しませんよ、そんなもの
おしゃべりマドレーヌ
BL
王太子の卒業パーティーで、王太子・フェリクスと婚約をしていた、侯爵家のアンリは突然「婚約を破棄する」と言い渡される。どうやら真実の愛を見つけたらしいが、それにアンリは「しませんよ、そんなもの」と返す。
アンリと婚約破棄をしないほうが良い理由は山ほどある。
けれどアンリは段々と、そんなメリット・デメリットを考えるよりも、フェリクスが幸せになるほうが良いと考えるようになり……
「………………それなら、こうしましょう。私が、第一王妃になって仕事をこなします。彼女には、第二王妃になって頂いて、貴方は彼女と暮らすのです」
それでフェリクスが幸せになるなら、それが良い。
<嚙み痕で愛を語るシリーズというシリーズで書いていきます/これはスピンオフのような話です>

ふしだらオメガ王子の嫁入り
金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか?
お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる