【完結】いつか幸せになれたら

いちみやりょう

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ぴーちゃん視点3

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ドクリドクリと血がめぐる感覚で目を覚ますと、臣下に囲まれていた。

「陛下!! お目覚めですか!! 大変なのです!!」

臣下の1人、カミーユに対して特に熱烈な思いを向けるニコラが泣きながら訴えてきた。

「どうした」
「それが! 陛下が意識を失われている間にカミーユ様が!!」
「なんだ! カミーユがどうした!!」
「お部屋から飛び降られました。かろうじて命は助かったようですが、目を覚まされていないようです。もう!! カミーユ様をあんなところには置いておけません!! 早く、早く陛下の封印をどうにかしなかれば!!」
「落ち着け、ニコラ。実は封印がどうにかなりそうかもしれない」
「な!!! 教えてください!! どうすればいいんですか!」

ニコラは必死の形相で俺に詰め寄ってきた。
魔族は全員家族も同然といえども、身分社会には変わりない。
王である俺に対してこの態度なのは、カミーユの一大事だから仕方がないだろう。
何せ魔国ではカミーユは女神すぎて崇拝の対象になりつつある。

少しだけ軽くなった体を確認しながらはっきりと告げた。

「血だ」
「血?」
「カミーユの血を舐めてから少し封印が解けている」
「血、血を……? な……何してるんですか。一体」

ニコラが先ほどまでの勢いをなくし、俺を軽蔑の目で見てくる。

「少し気になって、壁についた血をほんの少し舐めただけだ」
「い、いやいや」

ドン引きのニコラだが、俺だってその気持ち悪さを分かっている。

「だが、その気持ちの悪い行動のおかげで封印を解く手がかりが見つかったんだ」
「開き直った……」
「とにかく、カミーユの命が助かったこと、本当によかった。夢渡りの魔術が使える魔族を呼び寄せろ」
「は、はい!!」

そうして、夢渡りによって俺やニコラ達がカミーユに会うことができるようになった。
バイヤール公爵家別邸前からカミーユの血を回収し、俺はそれを少しずつ摂取することになった。
封印を解いてくれるカミーユの血は、一度にたくさん摂ると体への影響が強く寝込んでしまうためだ。けれども少しずつ摂取しているおかげで封印はもうあと少しで解けそうなほど解けた。

カミーユには俺の家族になってくれと願った。
カミーユはそれを喜んでくれて、俺たちは家族になった。

俺はカミーユのことを愛している。
幸いなことに俺はアルファで、カミーユの番に立候補することができる。
けれど、カミーユの番相手はカミーユが成長してから、カミーユが決めることだ。

俺が束縛してはならない。
俺は自分の年齢を覚えていないほどに年上で、カミーユからしたらお爺さんもいいところだ。

今はただ、8歳に相応しく周りの大人に甘え、よく遊びよく食べ、よく眠って健全に過ごしてくれればいい。今の俺は、カミーユが心から欲して得ることのできなかった愛を、充分に注ごう。父親として、兄として、カミーユの成長を見届けよう。

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