13 / 32
ぴーちゃん視点1
しおりを挟む
ギルガリード・レオン・シュタウピッツ(ぴーちゃん)視点
俺が、カミーユに出会ったのは、まだ俺を封印する力が強く残っている頃だった。
勇者の手によって封印されるまでは、愚かな人間を制圧し統一することで平和になると傲慢な考えで生きていた。
傲慢に振る舞うものは隙だらけで、激しい攻防の末、力の差は歴然だったにも関わらず私は封印されてしまった。魔王である俺が封印されたことで魔国に住う魔族や魔物は力が弱まり、俺の守りたかったものたちを危険にさらしてしまったのだ。
それでも皆、俺の封印を解こうと頑張ってくれた。
封印を解くことのできる人間を探す中、魔族の間でカミーユの噂が広まった。
動物や植物に擬態し、情報を集めをしてくれていた魔族たちが大変な時、幼いオメガの人間が自分のことを顧みずに助けてくれたと、皆口々にそう噂した。
魔族たちは皆その少年のことを大変に気に入ったようだったが、俺は人間に対する嫌悪感があった。
けれど、魔族たちがあまりにもカミーユを褒めるため、俺は魔力で鳥の体を作りカミーユを見に行ってみることにしたのだ。
封印の力は強く残っていたものの、意識だけで鳥のように過ごすだけならなんとか可能だと思い、カミーユの住む場所に行ってみれば、カミーユの住む建物の前で力尽きてしまった。なんとか意識だけ保って回復を待っているところにカミーユが来てくれた。
「鳥さんっ? だいじょうぶ? けがしちゃったの?」
まだ幼さの残る舌足らずな話し方で俺を心配し、乱暴な手つきでもおかしくないほどの幼い子供の手で俺をそっと抱き上げて自分のベットに運んでくれた。
あまりにも細すぎるカミーユの体は、まともな食べ物を食べていないのだろうと想像にたやすかった。それでも魔族たちが言っていたようにカミーユは自分の少ない食べ物を惜しげもなく俺に差し出した。
差し出されるままに啄んでみると、カミーユは嬉しそうに微笑んだ。
「元気になってね、鳥さん」
「ぴー」
「ふふ、くすぐったい。甘えんぼさんなの?」
パンを差し出している手に頭を押し付けると、カミーユはそっと俺の頭を撫でた。
「体調がわるいときは、いつもよりさみしくなっちゃうよね。ぼくもね、わかるよ。あんまり長い間はいっしょにいてあげられないけど、もし体調が戻ってここを離れても、いつでも遊びにきてね」
「ぴー」
カミーユの手は暖かくて、その心も暖かくて。
カミーユにまた会いたいと思った。
けれどカミーユは行くたびに俺にパンクズをくれる。
カミーユの食べるものを減らすのが嫌だったので、カミーユの元に向かう時に、飴玉を一つ咥えて行った。飴玉1つ咥えて飛ぶのもギリギリで、カミーユに与えられてばかりでカミーユのために何もできない自分が悔しかった。
世の中にはたくさんの甘味が溢れてる。それでも、カミーユはきっとこの飴玉を喜んでくれるだろう。
カミーユの元まで頑張って運んだ飴玉をカミーユに渡すとそれはそれは喜んでくれた。
「わあ。飴玉だね。拾ったのかな。包み紙を開けて欲しいの?」
「ぴぴ」
違う。これは俺が食べるものじゃなくて、カミーユのために持ってきたものだ。
その気持ちは、なんとかカミーユに伝わったようで、カミーユはそれを大切そうに両手で包み胸元でギュッと握った。
「僕に、くれるの?」
「ぴ」
「ありがとう。ぴーちゃん。大切な日に食べられるように、大事に取っておくね」
「ぴ?」
それが俺が“ぴーちゃん”になった最初の日だった。
俺が、カミーユに出会ったのは、まだ俺を封印する力が強く残っている頃だった。
勇者の手によって封印されるまでは、愚かな人間を制圧し統一することで平和になると傲慢な考えで生きていた。
傲慢に振る舞うものは隙だらけで、激しい攻防の末、力の差は歴然だったにも関わらず私は封印されてしまった。魔王である俺が封印されたことで魔国に住う魔族や魔物は力が弱まり、俺の守りたかったものたちを危険にさらしてしまったのだ。
それでも皆、俺の封印を解こうと頑張ってくれた。
封印を解くことのできる人間を探す中、魔族の間でカミーユの噂が広まった。
動物や植物に擬態し、情報を集めをしてくれていた魔族たちが大変な時、幼いオメガの人間が自分のことを顧みずに助けてくれたと、皆口々にそう噂した。
魔族たちは皆その少年のことを大変に気に入ったようだったが、俺は人間に対する嫌悪感があった。
けれど、魔族たちがあまりにもカミーユを褒めるため、俺は魔力で鳥の体を作りカミーユを見に行ってみることにしたのだ。
封印の力は強く残っていたものの、意識だけで鳥のように過ごすだけならなんとか可能だと思い、カミーユの住む場所に行ってみれば、カミーユの住む建物の前で力尽きてしまった。なんとか意識だけ保って回復を待っているところにカミーユが来てくれた。
「鳥さんっ? だいじょうぶ? けがしちゃったの?」
まだ幼さの残る舌足らずな話し方で俺を心配し、乱暴な手つきでもおかしくないほどの幼い子供の手で俺をそっと抱き上げて自分のベットに運んでくれた。
あまりにも細すぎるカミーユの体は、まともな食べ物を食べていないのだろうと想像にたやすかった。それでも魔族たちが言っていたようにカミーユは自分の少ない食べ物を惜しげもなく俺に差し出した。
差し出されるままに啄んでみると、カミーユは嬉しそうに微笑んだ。
「元気になってね、鳥さん」
「ぴー」
「ふふ、くすぐったい。甘えんぼさんなの?」
パンを差し出している手に頭を押し付けると、カミーユはそっと俺の頭を撫でた。
「体調がわるいときは、いつもよりさみしくなっちゃうよね。ぼくもね、わかるよ。あんまり長い間はいっしょにいてあげられないけど、もし体調が戻ってここを離れても、いつでも遊びにきてね」
「ぴー」
カミーユの手は暖かくて、その心も暖かくて。
カミーユにまた会いたいと思った。
けれどカミーユは行くたびに俺にパンクズをくれる。
カミーユの食べるものを減らすのが嫌だったので、カミーユの元に向かう時に、飴玉を一つ咥えて行った。飴玉1つ咥えて飛ぶのもギリギリで、カミーユに与えられてばかりでカミーユのために何もできない自分が悔しかった。
世の中にはたくさんの甘味が溢れてる。それでも、カミーユはきっとこの飴玉を喜んでくれるだろう。
カミーユの元まで頑張って運んだ飴玉をカミーユに渡すとそれはそれは喜んでくれた。
「わあ。飴玉だね。拾ったのかな。包み紙を開けて欲しいの?」
「ぴぴ」
違う。これは俺が食べるものじゃなくて、カミーユのために持ってきたものだ。
その気持ちは、なんとかカミーユに伝わったようで、カミーユはそれを大切そうに両手で包み胸元でギュッと握った。
「僕に、くれるの?」
「ぴ」
「ありがとう。ぴーちゃん。大切な日に食べられるように、大事に取っておくね」
「ぴ?」
それが俺が“ぴーちゃん”になった最初の日だった。
94
お気に入りに追加
2,245
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
ふしだらオメガ王子の嫁入り
金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか?
お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
白い部屋で愛を囁いて
氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。
シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。
※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
こじらせΩのふつうの婚活
深山恐竜
BL
宮間裕貴はΩとして生まれたが、Ωとしての生き方を受け入れられずにいた。
彼はヒートがないのをいいことに、ふつうのβと同じように大学へ行き、就職もした。
しかし、ある日ヒートがやってきてしまい、ふつうの生活がままならなくなってしまう。
裕貴は平穏な生活を取り戻すために婚活を始めるのだが、こじらせてる彼はなかなかうまくいかなくて…。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完結】愛してるから。今日も俺は、お前を忘れたふりをする
葵井瑞貴
BL
『好きだからこそ、いつか手放さなきゃいけない日が来るーー今がその時だ』
騎士団でバディを組むリオンとユーリは、恋人同士。しかし、付き合っていることは周囲に隠している。
平民のリオンは、貴族であるユーリの幸せな結婚と未来を願い、記憶喪失を装って身を引くことを決意する。
しかし、リオンを深く愛するユーリは「何度君に忘れられても、また好きになってもらえるように頑張る」と一途に言いーー。
ほんわか包容力溺愛攻め×トラウマ持ち強気受け
【完結】あなたの恋人(Ω)になれますか?〜後天性オメガの僕〜
MEIKO
BL
この世界には3つの性がある。アルファ、ベータ、オメガ。その中でもオメガは希少な存在で。そのオメガで更に希少なのは┉僕、後天性オメガだ。ある瞬間、僕は恋をした!その人はアルファでオメガに対して強い拒否感を抱いている┉そんな人だった。もちろん僕をあなたの恋人(Ω)になんてしてくれませんよね?
前作「あなたの妻(Ω)辞めます!」スピンオフ作品です。こちら単独でも内容的には大丈夫です。でも両方読む方がより楽しんでいただけると思いますので、未読の方はそちらも読んでいただけると嬉しいです!
後天性オメガの平凡受け✕心に傷ありアルファの恋愛
※独自のオメガバース設定有り
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる