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6.夢の中
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「カミーユ。カミーユ起きろ」
僕の名を呼ぶ声が聞こえて目を開けると、そこはとっても豪華な部屋の中だった。
僕は見たことがないけど、お城とかはこのくらい豪華かもしれないと思うくらい豪華だ。
「起きたか。どうだ? どこか具合の悪いところはないか? ……と言ってもカミーユは今意識だけだから不調を感じたりはしないはずだが」
「意識だけ……?」
「ここはカミーユの夢の中だからな。俺が意識を失ってる間にカミーユの体が限界を迎えたようで……どうした?」
「……ぴーちゃん?」
僕を心配げに見つめる美丈夫は黒い髪で赤い目をしていて、どこかぴーちゃんを思わせる。
そんなはずはないけれど、僕はポロリとその名を口にしてしまっていた。
目の前の美丈夫はわずかに目を見開いて驚いたような顔をした後に、嬉しそうに目を細めた。
「この状態の時に、その名で呼ばれるのは少しこそばいな」
そう言うってことは。
「本当に……? 本当にぴーちゃんなの?」
「ああ」
頷く美丈夫に僕は呆然とした。
ぴーちゃんにまた会えた嬉しさよりも、申し訳なさがこみ上げてきた。
僕はもしかしたら血が出過ぎて死んじゃったのかも。
ということは、ここは死んだ後の世界だよね。
「あ……。ごめんね、ぴーちゃん。僕のせいで死んじゃって」
「カミーユのせい?」
「汚い僕がそばにいたから、ぴーちゃんは死んじゃったんだよ。だから、ごめんね」
「俺は死んでなどいない。昔封印されたせいで今は力が弱っているが、後少しでその封印も解ける。それに、カミーユは汚くなどない。お前はずっときれいだよ」
「ふ、封印? なんでぴーちゃんがそんなことをされるの? まさか魔物ってだけで……?」
「まぁ、そうだな。そんなところだ。だが、もうそんな不覚はとらない。それにしても綺麗と言ったことにはコメントはなしか?」
「だって僕が綺麗なわけ、ないし……ぴーちゃん?」
ぴーちゃんは僕をギュッと抱きしめてくれた。
人間の姿のぴーちゃんは僕よりかなり大きくて子供の僕の体なんてすっぽりと包み込まれた。
それになんだかいい匂いがする。
「あったかい……。ぴーちゃんってあったかいね」
「そうだろう。これからはいつでも抱きしめてやる。封印が解けて俺が力を取り戻したら、カミーユの新しい体を作ってやろう。あの体はもう限界だったからな。そうしたら、この夢の中から出て俺のところでずっと暮せばいい」
「ぴーちゃんとずっと?」
そんなの、嬉しすぎる提案だった。
「ああ。俺の家族になってくれ」
「僕が、家族?」
「ああ。俺と家族になるのは嫌か?」
「ううん。嬉しい。僕、家族なんて初めてだから、分からないことたくさんあるけど、僕、ぴーちゃんと家族になりたい」
僕の家族。
僕に家族が。
嬉しい。
「そうか。なら、俺も早いところ封印を解かなければな。今のままじゃカミーユを少しも守ることなどできない」
「でも、危なくないの? 僕にできること、ある?」
そう言うと、ぴーちゃんはふわりと笑った。
「その気持ちだけで十分だ」
「で、でも、家族って守られるだけじゃないんでしょう? 僕もぴーちゃんを守りたい……。って、僕じゃ力不足すぎると思うけど」
「カミーユは俺を癒してくれてる。もう少し大きくなったら、カミーユは俺の望みを叶えるのに忙しくなるだろうから、子供のうちくらいただ甘えて欲しい」
なんだかよく分からなかったけど、僕はコクリとうなずいた。
「それと、俺の名はギルガリードだ。ぴーちゃんと呼ばれるのも悪くないが、これからはギルと呼んで欲しい」
「ギル……」
「ああ」
ぴーちゃん、もといギルは花が咲き誇るように笑った。
ギルはここを僕の夢の中だというけど、ここは僕の来たこともない建物の中だし、しかも僕の世話をしてくれる侍従を何人もつけられた。
記憶にある中では世話をされたことは一度もないから、風呂に入るのも手伝われてなんだか違和感だけど、みんなが僕と目を合わせて、僕に話しかけては笑いかけてくれるし、ギルという家族もできたこの夢の中は、本当に僕の幸せそのものだ。本当にここが夢だと言うのならば、絶対に目覚めたくない。
僕の名を呼ぶ声が聞こえて目を開けると、そこはとっても豪華な部屋の中だった。
僕は見たことがないけど、お城とかはこのくらい豪華かもしれないと思うくらい豪華だ。
「起きたか。どうだ? どこか具合の悪いところはないか? ……と言ってもカミーユは今意識だけだから不調を感じたりはしないはずだが」
「意識だけ……?」
「ここはカミーユの夢の中だからな。俺が意識を失ってる間にカミーユの体が限界を迎えたようで……どうした?」
「……ぴーちゃん?」
僕を心配げに見つめる美丈夫は黒い髪で赤い目をしていて、どこかぴーちゃんを思わせる。
そんなはずはないけれど、僕はポロリとその名を口にしてしまっていた。
目の前の美丈夫はわずかに目を見開いて驚いたような顔をした後に、嬉しそうに目を細めた。
「この状態の時に、その名で呼ばれるのは少しこそばいな」
そう言うってことは。
「本当に……? 本当にぴーちゃんなの?」
「ああ」
頷く美丈夫に僕は呆然とした。
ぴーちゃんにまた会えた嬉しさよりも、申し訳なさがこみ上げてきた。
僕はもしかしたら血が出過ぎて死んじゃったのかも。
ということは、ここは死んだ後の世界だよね。
「あ……。ごめんね、ぴーちゃん。僕のせいで死んじゃって」
「カミーユのせい?」
「汚い僕がそばにいたから、ぴーちゃんは死んじゃったんだよ。だから、ごめんね」
「俺は死んでなどいない。昔封印されたせいで今は力が弱っているが、後少しでその封印も解ける。それに、カミーユは汚くなどない。お前はずっときれいだよ」
「ふ、封印? なんでぴーちゃんがそんなことをされるの? まさか魔物ってだけで……?」
「まぁ、そうだな。そんなところだ。だが、もうそんな不覚はとらない。それにしても綺麗と言ったことにはコメントはなしか?」
「だって僕が綺麗なわけ、ないし……ぴーちゃん?」
ぴーちゃんは僕をギュッと抱きしめてくれた。
人間の姿のぴーちゃんは僕よりかなり大きくて子供の僕の体なんてすっぽりと包み込まれた。
それになんだかいい匂いがする。
「あったかい……。ぴーちゃんってあったかいね」
「そうだろう。これからはいつでも抱きしめてやる。封印が解けて俺が力を取り戻したら、カミーユの新しい体を作ってやろう。あの体はもう限界だったからな。そうしたら、この夢の中から出て俺のところでずっと暮せばいい」
「ぴーちゃんとずっと?」
そんなの、嬉しすぎる提案だった。
「ああ。俺の家族になってくれ」
「僕が、家族?」
「ああ。俺と家族になるのは嫌か?」
「ううん。嬉しい。僕、家族なんて初めてだから、分からないことたくさんあるけど、僕、ぴーちゃんと家族になりたい」
僕の家族。
僕に家族が。
嬉しい。
「そうか。なら、俺も早いところ封印を解かなければな。今のままじゃカミーユを少しも守ることなどできない」
「でも、危なくないの? 僕にできること、ある?」
そう言うと、ぴーちゃんはふわりと笑った。
「その気持ちだけで十分だ」
「で、でも、家族って守られるだけじゃないんでしょう? 僕もぴーちゃんを守りたい……。って、僕じゃ力不足すぎると思うけど」
「カミーユは俺を癒してくれてる。もう少し大きくなったら、カミーユは俺の望みを叶えるのに忙しくなるだろうから、子供のうちくらいただ甘えて欲しい」
なんだかよく分からなかったけど、僕はコクリとうなずいた。
「それと、俺の名はギルガリードだ。ぴーちゃんと呼ばれるのも悪くないが、これからはギルと呼んで欲しい」
「ギル……」
「ああ」
ぴーちゃん、もといギルは花が咲き誇るように笑った。
ギルはここを僕の夢の中だというけど、ここは僕の来たこともない建物の中だし、しかも僕の世話をしてくれる侍従を何人もつけられた。
記憶にある中では世話をされたことは一度もないから、風呂に入るのも手伝われてなんだか違和感だけど、みんなが僕と目を合わせて、僕に話しかけては笑いかけてくれるし、ギルという家族もできたこの夢の中は、本当に僕の幸せそのものだ。本当にここが夢だと言うのならば、絶対に目覚めたくない。
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