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和馬のその後
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僕があんなにひどい事をしたのに、副会長……いや、忠次様は僕を助けてくれた。
学校を辞めて、忠次様のお兄さんの吉次さんのところに引き取られ、馬車馬のように働いた。
人に言えないような仕事も、なんだってこなした。
高校を中退するまでの僕は、本当に甘ちゃんだったんだって思う。
そして、忠次様が高校を卒業し、大学に進学したのを機に僕は組の弁護士事務所で秘書としてしごかれることになった。
将来的に、忠次様が認めて下さったら、僕を忠次様の秘書にしてくださるそうだ。
「ヤクザのおっちゃん、来たよ~」
「ヤクザじゃないってば。僕はあの辺の人たちより優しい顔してるでしょ? だからヤクザじゃないの」
僕はヤクザの構成員だけど、そんなことが広まれば将の将来に関わるので否定せざるを得ないのだ。
「でも~」
「でもじゃない。ほら、早く宿題出して。分からないところがあったら教えてあげるから」
「んー。分かった!」
元気よく右手を上げ背負っていたランドセルを下ろした男の子は、うんしょと宿題を出した。
この子は将という名前でいわゆる放置子というやつだ。小学1年生で親からはネグレクト状態らしい。
ある日、組の事務所に1人で乗り込んできて、たまたま居合わせた僕になついている。
『僕を舎弟にしてくださいっ』
乗り込んできた時、将は目に涙を溜めて必死に叫んでいた。
服はボロボロだし、痩せこけていた。
詳しく話を聞けば、組の舎弟になればお腹いっぱいご飯が食べられると思ったらしい。
組の連中は将の話を聞いて全員涙した。
それから、組に子供が出入りするのは良くないという事で、将は僕がいる弁護士事務所に通ってきている。
ここには別のフロアにシャワーが備え付けられているし、小さいながらもキッチンがあるので簡単な食事を出すことができる。
「僕、将来弁護士になる! それで、ここで働く!」
「そっか。頑張れ。応援してるよ」
「うん!」
将は無邪気に笑って宿題にとりかかった。
「お邪魔しまーす」
「リンくん、こんにちは」
「リン!! 久しぶりだぁ!!」
「ぅおっと、すげぇな。将。また重くなったか?」
リンくんに飛びついた将を軽々受け止め、そのまま高い高いで持ち上げている。
「ふふん。そうだよ! 和馬が作ってくれる料理が美味しいからいっぱい食べちゃうんだ!」
「そうか、そりゃ良かったな」
リンくんは嬉しそうに微笑んだ。
あれからリンくんにも一応許してもらえて、こうしてたまに事務所に顔を出してくれる。
忠次様が大学に通っているので、休みの日になると、忠次様に会いにリンくんは高校からわざわざ街まで出てくるのだ。
そうしてたまに事務所に訪れるリンくんに将はとてもなついている。
「和馬、今日行くだろ?」
「はい」
僕たちは将をきっかけに、炊き出しなどを行うようになった。
今日はその日だ。
炊き出しに来るのは大人が多いけど、子供ももらいにくる。
将のようにネグレクトで食うに困っている子供達が来ることもある。
炊き出しのついでにその子たちに勉強も教えている。
炊き出しも、勉強も全てリンくんが言い出したことだ。
リンくんは天性の人たらしだから、子供たちもすぐに懐いて、リンくんに勉強を教わりにくる。
本当にかっこいい人だから、リンくんの周りには人が集まってしまうんだと思う。
こんな人を、束縛しようだなんて、やっぱり高校時代の僕は馬鹿で無謀だったんだなぁと、リンくんに会うたびに、忠次様に会うたびにそう思う。
学校を辞めて、忠次様のお兄さんの吉次さんのところに引き取られ、馬車馬のように働いた。
人に言えないような仕事も、なんだってこなした。
高校を中退するまでの僕は、本当に甘ちゃんだったんだって思う。
そして、忠次様が高校を卒業し、大学に進学したのを機に僕は組の弁護士事務所で秘書としてしごかれることになった。
将来的に、忠次様が認めて下さったら、僕を忠次様の秘書にしてくださるそうだ。
「ヤクザのおっちゃん、来たよ~」
「ヤクザじゃないってば。僕はあの辺の人たちより優しい顔してるでしょ? だからヤクザじゃないの」
僕はヤクザの構成員だけど、そんなことが広まれば将の将来に関わるので否定せざるを得ないのだ。
「でも~」
「でもじゃない。ほら、早く宿題出して。分からないところがあったら教えてあげるから」
「んー。分かった!」
元気よく右手を上げ背負っていたランドセルを下ろした男の子は、うんしょと宿題を出した。
この子は将という名前でいわゆる放置子というやつだ。小学1年生で親からはネグレクト状態らしい。
ある日、組の事務所に1人で乗り込んできて、たまたま居合わせた僕になついている。
『僕を舎弟にしてくださいっ』
乗り込んできた時、将は目に涙を溜めて必死に叫んでいた。
服はボロボロだし、痩せこけていた。
詳しく話を聞けば、組の舎弟になればお腹いっぱいご飯が食べられると思ったらしい。
組の連中は将の話を聞いて全員涙した。
それから、組に子供が出入りするのは良くないという事で、将は僕がいる弁護士事務所に通ってきている。
ここには別のフロアにシャワーが備え付けられているし、小さいながらもキッチンがあるので簡単な食事を出すことができる。
「僕、将来弁護士になる! それで、ここで働く!」
「そっか。頑張れ。応援してるよ」
「うん!」
将は無邪気に笑って宿題にとりかかった。
「お邪魔しまーす」
「リンくん、こんにちは」
「リン!! 久しぶりだぁ!!」
「ぅおっと、すげぇな。将。また重くなったか?」
リンくんに飛びついた将を軽々受け止め、そのまま高い高いで持ち上げている。
「ふふん。そうだよ! 和馬が作ってくれる料理が美味しいからいっぱい食べちゃうんだ!」
「そうか、そりゃ良かったな」
リンくんは嬉しそうに微笑んだ。
あれからリンくんにも一応許してもらえて、こうしてたまに事務所に顔を出してくれる。
忠次様が大学に通っているので、休みの日になると、忠次様に会いにリンくんは高校からわざわざ街まで出てくるのだ。
そうしてたまに事務所に訪れるリンくんに将はとてもなついている。
「和馬、今日行くだろ?」
「はい」
僕たちは将をきっかけに、炊き出しなどを行うようになった。
今日はその日だ。
炊き出しに来るのは大人が多いけど、子供ももらいにくる。
将のようにネグレクトで食うに困っている子供達が来ることもある。
炊き出しのついでにその子たちに勉強も教えている。
炊き出しも、勉強も全てリンくんが言い出したことだ。
リンくんは天性の人たらしだから、子供たちもすぐに懐いて、リンくんに勉強を教わりにくる。
本当にかっこいい人だから、リンくんの周りには人が集まってしまうんだと思う。
こんな人を、束縛しようだなんて、やっぱり高校時代の僕は馬鹿で無謀だったんだなぁと、リンくんに会うたびに、忠次様に会うたびにそう思う。
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