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薄い本1
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前回『会長とその後』の話で、卒業後の話が少し出ましたが、これは麟太郎が2年に上がり生徒会長をしている話です。
ーー
「会長様~、抱いてください~」
「きゃ~こっち向いたぁ」
「今絶対僕を見たよね?」
廊下を歩くだけでこれだ。
俺が隊長を務めていた生徒会長の親衛隊メンバーは、俺が生徒会長になったことによりほとんど俺の親衛隊員になったらしい。
つまるところ奴らは見てくれだけを見ているわけだ。
会長……いや、今は違うが前生徒会長のあの人にも同情する。
忠次は東京にある名門の大学に進学すると言うことで、3年になってからは、より勉強を追い込み始めた。けれどどんなに忙しくても俺たちは寮ではほぼ同じ部屋で過ごす。
忠次がカリカリとノートに書く音、俺が入れたコーヒーの匂い。
俺たち2人で居る時は相変わらず穏やかに過ごしている。
夜食として作った焼きおにぎりを忠次に渡すと、嬉しそうな顔で受け取ってくれた。
「わぁ、ありがとうございます。凛太郎の作る焼きおにぎり好きなんです」
「そう言ってもらえるなら毎日だって作るけど」
「んん、嬉しいことばかり言ってくれますね」
ニコニコと嬉しそうにおにぎりを食べていたかと思えば、頬を赤く染めて照れる忠次が可愛い。
学校でのストレスは全て忠次が癒してくれている。
「それで忠次、ひとつ聞きたいんだけど」
「なんですか?」
「あれ」
指を刺した先は、忠次の部屋の隅に積み上げられた薄い本の束だ。
忠次が勉強に集中している間は聞くことができなかったが、食事の休憩でやっと聞けた。
一番上に乗っている本の表紙しか見えないが、その表紙には生徒会長×前生徒会副会長と書かれており、おそらく俺に似せて書かれたキャラクターが忠次に似せて書かれたキャラクターを後ろから抱きしめ、こちらに向かって挑戦的な目で笑っている様子が描かれている。
俺が最近、生徒会として一部規制している如何わしい漫画本に見える。
「あ……あれは、その。勉強の息抜きに」
「んー」
忠次の勉強の息抜きなら、強く言いたくはない。
そもそも規制した理由が、忠次がたとえ紙の上だとしても俺以外の生徒と仲良くするのは許せなかったからだし、忠次が自分を題材にされたとして、嫌な気持ちになるかもしれないという私情からだった。
一応、高校生が商売として校内で金銭のやり取りをしていることや、その内容が卑猥すぎることも理由の一つだが。
「す、すみません。凛太郎がああいった本を規制していることを知りながら……っ。すぐに処分します!」
「あ、待って」
本を処分しようと立ち上がった忠次を止めて俺も立ち上がった。
「別に、忠次が読みたいんなら規制は少し緩めるよ。今だって本人の許可を取った場合は描いていいことにしているし。俺は許可した覚えはないけど」
積み上がった薄い本を手に取って見てみると、どれもこれも忠次と俺の絡み合った表紙だ。
だが他の生徒のものは一つもなかったので少しホッとして中身を見た。
「忠次」
「は、はい!」
「こーゆー本って、自分の好みで買うんだよな。忠次はこういうの……興味あるのか」
「えっ、ち、ちが」
漫画の中身は、俺の知っているようなものとはかけ離れた、めくるめく官能の世界だ。
その中でもややアブノーマルではないかと思うくらいのSM物が多くある。
「俺は、こういうのは……やぶさかではない」
「え!?」
もちろん、本当に興味があるわけではなかったが、忠次が望んでいるならできる限り応えたい。
当の忠次は俺の言葉に驚いた顔をしたものの少し嬉しそうで、とりあえず優しく押し倒して覆いかぶさってみると忠次はおずおずと俺の背中に手を回しぎゅっと抱きしめ返してくれた。
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「会長様~、抱いてください~」
「きゃ~こっち向いたぁ」
「今絶対僕を見たよね?」
廊下を歩くだけでこれだ。
俺が隊長を務めていた生徒会長の親衛隊メンバーは、俺が生徒会長になったことによりほとんど俺の親衛隊員になったらしい。
つまるところ奴らは見てくれだけを見ているわけだ。
会長……いや、今は違うが前生徒会長のあの人にも同情する。
忠次は東京にある名門の大学に進学すると言うことで、3年になってからは、より勉強を追い込み始めた。けれどどんなに忙しくても俺たちは寮ではほぼ同じ部屋で過ごす。
忠次がカリカリとノートに書く音、俺が入れたコーヒーの匂い。
俺たち2人で居る時は相変わらず穏やかに過ごしている。
夜食として作った焼きおにぎりを忠次に渡すと、嬉しそうな顔で受け取ってくれた。
「わぁ、ありがとうございます。凛太郎の作る焼きおにぎり好きなんです」
「そう言ってもらえるなら毎日だって作るけど」
「んん、嬉しいことばかり言ってくれますね」
ニコニコと嬉しそうにおにぎりを食べていたかと思えば、頬を赤く染めて照れる忠次が可愛い。
学校でのストレスは全て忠次が癒してくれている。
「それで忠次、ひとつ聞きたいんだけど」
「なんですか?」
「あれ」
指を刺した先は、忠次の部屋の隅に積み上げられた薄い本の束だ。
忠次が勉強に集中している間は聞くことができなかったが、食事の休憩でやっと聞けた。
一番上に乗っている本の表紙しか見えないが、その表紙には生徒会長×前生徒会副会長と書かれており、おそらく俺に似せて書かれたキャラクターが忠次に似せて書かれたキャラクターを後ろから抱きしめ、こちらに向かって挑戦的な目で笑っている様子が描かれている。
俺が最近、生徒会として一部規制している如何わしい漫画本に見える。
「あ……あれは、その。勉強の息抜きに」
「んー」
忠次の勉強の息抜きなら、強く言いたくはない。
そもそも規制した理由が、忠次がたとえ紙の上だとしても俺以外の生徒と仲良くするのは許せなかったからだし、忠次が自分を題材にされたとして、嫌な気持ちになるかもしれないという私情からだった。
一応、高校生が商売として校内で金銭のやり取りをしていることや、その内容が卑猥すぎることも理由の一つだが。
「す、すみません。凛太郎がああいった本を規制していることを知りながら……っ。すぐに処分します!」
「あ、待って」
本を処分しようと立ち上がった忠次を止めて俺も立ち上がった。
「別に、忠次が読みたいんなら規制は少し緩めるよ。今だって本人の許可を取った場合は描いていいことにしているし。俺は許可した覚えはないけど」
積み上がった薄い本を手に取って見てみると、どれもこれも忠次と俺の絡み合った表紙だ。
だが他の生徒のものは一つもなかったので少しホッとして中身を見た。
「忠次」
「は、はい!」
「こーゆー本って、自分の好みで買うんだよな。忠次はこういうの……興味あるのか」
「えっ、ち、ちが」
漫画の中身は、俺の知っているようなものとはかけ離れた、めくるめく官能の世界だ。
その中でもややアブノーマルではないかと思うくらいのSM物が多くある。
「俺は、こういうのは……やぶさかではない」
「え!?」
もちろん、本当に興味があるわけではなかったが、忠次が望んでいるならできる限り応えたい。
当の忠次は俺の言葉に驚いた顔をしたものの少し嬉しそうで、とりあえず優しく押し倒して覆いかぶさってみると忠次はおずおずと俺の背中に手を回しぎゅっと抱きしめ返してくれた。
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