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母
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パソコンについてのあれこれを勉強し始めて、忠次の作業や他の役員の作業を見て回った。
「なぁ会長、こっちのエクセルからコピペしてきてるのって、こっちのデータから探して来て入力してるのか?」
「ああ」
「じゃあさ、これここまでの作業は自動化できるから、ここのボタン押して……このボタン押せば今の作業を出来るようにしとくな」
「へぇ。そんなこと出来るんだな。今まで考えもしなかった」
会長は感心したようにうなずいた。
そんな調子で割といろいろな作業を自動化したり、簡易化したりして少しずつ時間削減につながっていってる。
和馬はあれから生徒会の方にも来なくなり、廊下でもすれ違わないため何をしているのかは分からないが、その分の仕事は成り行きで俺が引き受けることになった。
まぁ、忠次といられる時間が増えるからいいのだが。
俺の思惑通り、忠次とお昼ご飯も毎日食べられるようになり、俺は満足だ。
しばらくして、俺は母親を忠次に紹介することにした。
お互いの了承を得て母が一人暮らしをするアパートの近くの喫茶店で待ち合わせることにした。
俺たちよりも先に到着していた母が俺たちに気がついて軽く手をあげてくれた。
「久しぶり、凛ちゃん」
「久しぶり、お袋」
会うのは料理を手伝ってもらった時から1ヶ月くらい経っている。
そうでなくても会わない期間が長かったからか少し緊張してしまって声が硬くなってしまったかもしれない。
「忠次、この人が俺のお袋。お袋、この人が俺の付き合ってる忠次だよ」
「初めまして、榊さん。結城 忠次と申します。息子さんと真剣におつきあいさせていただいております」
忠次が人のいい顔で挨拶するのを母親は嬉しげに見た。
「初めまして。凛太郎の母です。この子にはたくさん苦労をかけてしまったけど、あなたのような人に出会ってくれて嬉しいです……。忠次さん、凛ちゃんをよろしくね」
「はい」
母親はほんの少し涙目になって、それでも嬉しそうに笑って祝福してくれた。
その後も和やかに食事が進んですっかりと夕方になり、解散することになった。
「お袋、好きな人いないの?」
帰り際にそう尋ねると予期していなかった質問に母親は真っ赤になって手をブンブンと振った。
「そそ、そんなのいるわけないじゃない!」
「そうなのか……」
「そ、そうよ」
「あのさお袋。俺、お袋に好きな人ができたら応援したいと思ってるから」
「ええ。ありがとう凛ちゃん」
母親の笑顔がどこかぎこちない気がした。
先ほどの反応から見るに母親には好きな人が居るんだろう。
それは長いこと入院していて、会う人も病院関係の人とかに限られていただろうから、そっち関係の人か、もしくは養父だろう。
「養父とは」
養父とは会ったりすることがあるのか聞こうとしたが、母親がびくりと体を震わせたので途中でやめた。
「お袋……。俺、父さんと呼んでみたい人がいる」
「えっ?」
母親は困惑顔だ。
「養父のこと、父さんと呼んでみたい。いいかな」
「そ、そりゃあ、義理とは言えあなたの父であることには変わりないのだから、呼んでいいのよ。私に許可を得なくても」
「そっか、じゃあ呼んでみるよ」
「……ええ」
きっと母親は養父のことが気になってる。だから養父の方も確認しに行かないとな。
母親は俺の意図など全く読めないと言うようにぽかんとした顔をしていた。
「なぁ会長、こっちのエクセルからコピペしてきてるのって、こっちのデータから探して来て入力してるのか?」
「ああ」
「じゃあさ、これここまでの作業は自動化できるから、ここのボタン押して……このボタン押せば今の作業を出来るようにしとくな」
「へぇ。そんなこと出来るんだな。今まで考えもしなかった」
会長は感心したようにうなずいた。
そんな調子で割といろいろな作業を自動化したり、簡易化したりして少しずつ時間削減につながっていってる。
和馬はあれから生徒会の方にも来なくなり、廊下でもすれ違わないため何をしているのかは分からないが、その分の仕事は成り行きで俺が引き受けることになった。
まぁ、忠次といられる時間が増えるからいいのだが。
俺の思惑通り、忠次とお昼ご飯も毎日食べられるようになり、俺は満足だ。
しばらくして、俺は母親を忠次に紹介することにした。
お互いの了承を得て母が一人暮らしをするアパートの近くの喫茶店で待ち合わせることにした。
俺たちよりも先に到着していた母が俺たちに気がついて軽く手をあげてくれた。
「久しぶり、凛ちゃん」
「久しぶり、お袋」
会うのは料理を手伝ってもらった時から1ヶ月くらい経っている。
そうでなくても会わない期間が長かったからか少し緊張してしまって声が硬くなってしまったかもしれない。
「忠次、この人が俺のお袋。お袋、この人が俺の付き合ってる忠次だよ」
「初めまして、榊さん。結城 忠次と申します。息子さんと真剣におつきあいさせていただいております」
忠次が人のいい顔で挨拶するのを母親は嬉しげに見た。
「初めまして。凛太郎の母です。この子にはたくさん苦労をかけてしまったけど、あなたのような人に出会ってくれて嬉しいです……。忠次さん、凛ちゃんをよろしくね」
「はい」
母親はほんの少し涙目になって、それでも嬉しそうに笑って祝福してくれた。
その後も和やかに食事が進んですっかりと夕方になり、解散することになった。
「お袋、好きな人いないの?」
帰り際にそう尋ねると予期していなかった質問に母親は真っ赤になって手をブンブンと振った。
「そそ、そんなのいるわけないじゃない!」
「そうなのか……」
「そ、そうよ」
「あのさお袋。俺、お袋に好きな人ができたら応援したいと思ってるから」
「ええ。ありがとう凛ちゃん」
母親の笑顔がどこかぎこちない気がした。
先ほどの反応から見るに母親には好きな人が居るんだろう。
それは長いこと入院していて、会う人も病院関係の人とかに限られていただろうから、そっち関係の人か、もしくは養父だろう。
「養父とは」
養父とは会ったりすることがあるのか聞こうとしたが、母親がびくりと体を震わせたので途中でやめた。
「お袋……。俺、父さんと呼んでみたい人がいる」
「えっ?」
母親は困惑顔だ。
「養父のこと、父さんと呼んでみたい。いいかな」
「そ、そりゃあ、義理とは言えあなたの父であることには変わりないのだから、呼んでいいのよ。私に許可を得なくても」
「そっか、じゃあ呼んでみるよ」
「……ええ」
きっと母親は養父のことが気になってる。だから養父の方も確認しに行かないとな。
母親は俺の意図など全く読めないと言うようにぽかんとした顔をしていた。
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