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嫉妬のその後

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最近、忠次は何か悩んでいるようだった。
俺にはその理由は分からなくて、でも、何かに悩んでいることを隠すようにいつも通りに振る舞う忠次に何も聞くことができずにいた。

優生はそんな俺に気がついていたのか、昨日の夕方俺を寮の中庭に呼び出した。
学校の一服スペースのようにベンチのあるその場所で優生を待っていると突然上から大量の水が降って来たのだ。
上を見上げると寮の窓からバケツを持った優生が顔を覗かせていて、びしょ濡れになった俺を満足そうに見ていた。

「てめぇ……」

怒鳴りつけようとすると優生がかぶせるように叫んだ。

「これで全てうまくいくっす!!」
「てめぇ何のつもりだ! 今すぐ降りて来やがれ!!」

そう叫んでいると、心臓がドクリと大きく脈打ったように感じた。

「な……んだ、これ……」

体が熱い。
何も意識も刺激もしていない俺のソレがムクムクと起き上がっていくのを感じた。
あいつ……。何しやがった。

でも、忠次は今学校で仕事中なはずだ。
今忠次のところに行ったらひどいことをしてしまいそうだ。
だめだ。
ああ。でも耐えられねぇ。

忠次の部屋に行って……それで……。
あそこは忠次の匂いがするはずだから、とりあえずそれでどうにか。

そう思いながら忠次の部屋に行き、今の時間忠次がいないことは分かっているし部屋の鍵は一応もらっていたが習慣のようにチャイムを慣らしてしまった。

それなのに、いないはずの忠次が出てきて俺は我慢の限界が訪れてしまった。

朝になって正気を取り戻した俺は、気を失うように眠っていた忠次を抱えて風呂場に駆け込んだ。風呂場に連れて行かれても一向に起きる気配のない忠次を丁寧に洗って拭いて、ベットにシーツを変えてそこにもう一度寝かせた。

優生からはラインにメッセージが来ていた。

ーーうまくいったっすか? 仲直りできたっすか?

「仲直りも何も、別に喧嘩してねぇよ」

そう呟きながらメッセージを返す。

ーーお前、学校で会ったら覚悟しとけよ

そう送るとすぐに返事が来た。

ーーえっ!? 怒ってるんすか!? うまくいかなかったっすか!?

もうそれには返事を返さない。明日、学校で会うまで怯えていればいいんだ。
俺はベットに横たわる忠次の髪をさらさらと撫でながらそう思った。

まぁ理性に負けて忠次にこんなことをしでかしてしまったのは他でもない自分自身なので、優生だけを責めることはできない。
忠次が起きたら謝り倒そう。そう思っていると忠次が身動いだ。

「ん……」

忠次の様子をジッと観察していると、自分を見ていることに気がついた忠次が俺の顔を見てふにゃりと笑った。

「おはようございます、凛太郎」
「お、はよ。忠次……俺」
「ふふ」

忠次は寝ぼけているのか俺を抱き寄せて腕の中に囲い込んだ。

「忠次……?」
「昨日の凛太郎は……可愛かったです」
「可愛かった?」

怖かったの間違いじゃないのか?
でも忠次は俺の背中をポンポンと優しく叩きながら笑った。

「本当は媚薬か何かを盛られた凛太郎にこんなことを言うのは不謹慎だと思うのですが……。必死に私を求める凛太郎は可愛かったです」

そう言っている忠次の顔は嘘を言っているように見えないので、俺に対して怒っていることはなさそうだと安心した。謝るのも押し付けがましいかもと俺は目を閉じた。
その後もふふふと笑う忠次の声が抱き寄せられた胸からくぐこもって聞こえて、それが心地よく感じて俺は眠くなった。

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