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和馬の気持ち
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ずっと一緒にいた弟の琢磨に好きな人ができた。
その好きな人は嫌われ者で、最初は琢磨のことが心配だった。
それに僕といる時間も減って寂しくて琢磨にひどいことを言ってしまったりした。
だけどその人……リンくんはそんな僕も守ってくれて、優しく諭してくれたんだ。
琢磨のようにリンくんのことを恋愛対象として好きなわけじゃなかったけど、大好きだった。
いつか琢磨とリンくんは結ばれて、このままこんな時間が続くんだって思ってたのに。
リンくんが突然、恋人ができたと言ってきた。
琢磨はしばらくは落ち込んで、リンくんを避けたりしていたけど僕にリンくんを諦める決心がついたと報告してくれた。
でも、琢磨が諦めても僕は諦めたくない。
だって、今まで僕と、琢磨と、リンくんと3人だけだったじゃないか。
それなのにいつの間にか、リンくんは他の人とも仲良くしていたんだ。
そんなの許せない。
僕はいつもリンくんとお昼ご飯を食べる場所の椅子の裏に盗聴器を仕掛けた。
何日かして、琢磨がリンくんに避けてたことを謝って告白をしてくると言ってきた。
僕は頑張ってと送り出してイヤホンをつけた。
そうして琢磨とリンくんの話を聞いたんだ。
ーー琢磨……ごめん。気がつかなくて。それに気持ちにも答えられない
何で。何で。琢磨を振るんだよ。今まで仲良くしてくれてたのに。
ーーうん、分かってるよ。でも今まで通り友達でいて欲しいんだ
何で琢磨も今まで通りなんて言うんだ。
ーーああ、それはもちろん
ーー僕が知ってる相手なの……? その、リンが付き合ってるのは
ーーああ。忠次だ
副会長だって? それなら琢磨の方が可愛いじゃないか。
ーーそっか……副会長と。じゃあもうお泊まりも済ませた仲なんだ
ーーああ
何で?
何で副会長?
ああ。そうか。副会長はきっとビッチなんだ。
リンくんは副会長に騙されているんでしょう?
リンくんだって本当は琢磨の方が好きなはずなんだ。
それなら気づかせてあげなきゃ。
だから僕は噂を流した。
リンくんが多少傷ついてもいい。琢磨を傷つけたんだから。
でもこんな噂が流れたらきっとリンくんだって副会長と別れて琢磨と付き合ってくれるはず。
そうして噂が流れ始めて僕は琢磨に言った。
「あんな噂が流れてちゃ、リンくんもすぐに副会長を見限って琢磨に戻ってきてくれるよ!」
だけど琢磨は悲しそうな顔をした。
「僕に戻ってきてくれるって。僕はリンの居場所だったことなんてないよ」
「でも、僕たち3人で仲良くしてたじゃん。あの頃にきっと戻れるよ」
「無理だよ。だって、リンはあの噂は僕が流したって思ってるんだ……」
「な、何で……?」
「僕聞いちゃったんだ。リンが副会長と話してるところ。副会長と付き合ってることは僕にしか言ってないって。リンが言ってた。僕に伝える時、言い方が悪かったかもしれないって」
「そんな……」
「ねぇ、和馬。何でリンが副会長と付き合ってることを知ってるの? もしかして」
「違うよ! 僕じゃないよ!」
「……そっか。でも僕はもうリンとはいられないんだ」
悲しそうな琢磨。
何で一緒にいられないの?
きっとリンくんは話せば分かってくれるのに。
だって琢磨が流した噂じゃないのに。
だから僕はリンくんに言いに行った。
「琢磨を信じてあげてよっ」
「和馬」
リンくんはびっくりしたように僕の名前を呼んだ。
「リンくんは……琢磨が流したと思ってるかもしれないけど、琢磨はリンくんが大好きなんだよ? リンくんのことを傷つけるかもしれないのに……あんな噂ながすわけないでしょ!」
そう叫んだのに、リンくんはすごく冷たい目をしてた。
「ああ。俺もそう信じたい」
「じゃあ」
「ところで、和馬は何の噂のことを言っている?」
何でそんなことを聞いてくるの?
今流れている噂なんて一つじゃないか。
「そんなの、副会長のだよ」
「そうか」
そう返事をしたリンくんはやっぱり冷たい目をしてた。
「あ、ねぇリンくん?」
僕の言葉を無視して歩いていくリンくんに、僕はそれ以上話しかけることも、追いかけることもできなかった。
その好きな人は嫌われ者で、最初は琢磨のことが心配だった。
それに僕といる時間も減って寂しくて琢磨にひどいことを言ってしまったりした。
だけどその人……リンくんはそんな僕も守ってくれて、優しく諭してくれたんだ。
琢磨のようにリンくんのことを恋愛対象として好きなわけじゃなかったけど、大好きだった。
いつか琢磨とリンくんは結ばれて、このままこんな時間が続くんだって思ってたのに。
リンくんが突然、恋人ができたと言ってきた。
琢磨はしばらくは落ち込んで、リンくんを避けたりしていたけど僕にリンくんを諦める決心がついたと報告してくれた。
でも、琢磨が諦めても僕は諦めたくない。
だって、今まで僕と、琢磨と、リンくんと3人だけだったじゃないか。
それなのにいつの間にか、リンくんは他の人とも仲良くしていたんだ。
そんなの許せない。
僕はいつもリンくんとお昼ご飯を食べる場所の椅子の裏に盗聴器を仕掛けた。
何日かして、琢磨がリンくんに避けてたことを謝って告白をしてくると言ってきた。
僕は頑張ってと送り出してイヤホンをつけた。
そうして琢磨とリンくんの話を聞いたんだ。
ーー琢磨……ごめん。気がつかなくて。それに気持ちにも答えられない
何で。何で。琢磨を振るんだよ。今まで仲良くしてくれてたのに。
ーーうん、分かってるよ。でも今まで通り友達でいて欲しいんだ
何で琢磨も今まで通りなんて言うんだ。
ーーああ、それはもちろん
ーー僕が知ってる相手なの……? その、リンが付き合ってるのは
ーーああ。忠次だ
副会長だって? それなら琢磨の方が可愛いじゃないか。
ーーそっか……副会長と。じゃあもうお泊まりも済ませた仲なんだ
ーーああ
何で?
何で副会長?
ああ。そうか。副会長はきっとビッチなんだ。
リンくんは副会長に騙されているんでしょう?
リンくんだって本当は琢磨の方が好きなはずなんだ。
それなら気づかせてあげなきゃ。
だから僕は噂を流した。
リンくんが多少傷ついてもいい。琢磨を傷つけたんだから。
でもこんな噂が流れたらきっとリンくんだって副会長と別れて琢磨と付き合ってくれるはず。
そうして噂が流れ始めて僕は琢磨に言った。
「あんな噂が流れてちゃ、リンくんもすぐに副会長を見限って琢磨に戻ってきてくれるよ!」
だけど琢磨は悲しそうな顔をした。
「僕に戻ってきてくれるって。僕はリンの居場所だったことなんてないよ」
「でも、僕たち3人で仲良くしてたじゃん。あの頃にきっと戻れるよ」
「無理だよ。だって、リンはあの噂は僕が流したって思ってるんだ……」
「な、何で……?」
「僕聞いちゃったんだ。リンが副会長と話してるところ。副会長と付き合ってることは僕にしか言ってないって。リンが言ってた。僕に伝える時、言い方が悪かったかもしれないって」
「そんな……」
「ねぇ、和馬。何でリンが副会長と付き合ってることを知ってるの? もしかして」
「違うよ! 僕じゃないよ!」
「……そっか。でも僕はもうリンとはいられないんだ」
悲しそうな琢磨。
何で一緒にいられないの?
きっとリンくんは話せば分かってくれるのに。
だって琢磨が流した噂じゃないのに。
だから僕はリンくんに言いに行った。
「琢磨を信じてあげてよっ」
「和馬」
リンくんはびっくりしたように僕の名前を呼んだ。
「リンくんは……琢磨が流したと思ってるかもしれないけど、琢磨はリンくんが大好きなんだよ? リンくんのことを傷つけるかもしれないのに……あんな噂ながすわけないでしょ!」
そう叫んだのに、リンくんはすごく冷たい目をしてた。
「ああ。俺もそう信じたい」
「じゃあ」
「ところで、和馬は何の噂のことを言っている?」
何でそんなことを聞いてくるの?
今流れている噂なんて一つじゃないか。
「そんなの、副会長のだよ」
「そうか」
そう返事をしたリンくんはやっぱり冷たい目をしてた。
「あ、ねぇリンくん?」
僕の言葉を無視して歩いていくリンくんに、僕はそれ以上話しかけることも、追いかけることもできなかった。
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