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玉集め
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そして、ビルに入ってからすぐに一つ目の玉を見つけたのだが、ボーリングの玉だった。
これ7個ももって上まであがんの?
そう思いながら所々にある矢印の張り紙に沿って先に進んでいると奥から人が出てきた。
「凛太郎! 抜け出してきたから寮に帰ろ」
「は?」
「それとも……する?」
「お前、だれ?」
俺がそう聞くとそいつはショックそうな顔をした。
「誰って、忠次だよ。忘れちゃったの?」
「いや、確かに見た目はそっくりだけどよ。明らかに忠次じゃねぇじゃん」
「な、何でそんなこと言うの……?」
「いや、だって。忠次はもっと可愛いしかっこいいだろ? 見た目が似てても内から溢れ出る雰囲気が違うな。それに忠次は誰に対しても敬語だ」
「ぐ……貴様。なかなかやるな」
「まぁ、忠次のことはちゃんと知りたいと思ってるからな」
「でも俺たちはよく似てるだろ? どうだ? 俺にしておかないか?」
俺の体に気持ち悪い触れ方で触れつつそんなことを言ってくるそいつに俺は一発パンチを決め込んだ。
だが、そいつはその場から一歩も動くこともなく、すごい体幹を見せつけられただけだった。
「俺は忠次の見た目が好きなわけじゃねぇ……で、あんた誰なの?」
「俺は忠次の兄だ!」
「え?」
「大事な可愛い可愛い弟がどこの馬の骨とも分からない男と付き合っていると聞いたので、そいつを蹴落とすのに協力しにきたのだ」
忠次……。
兄もこんなか。
苦労してんだな。
「じゃあ俺は先を急ぐので」
そう言って脇を通り抜けようとすると肩をつかんで止められた。
「まぁ、待て。この玉を持っていくがよい」
そうして1個目より少し大きくなっている玉を渡された。
全力で忠次との交際を阻止しようとしている感が否めないな。
だがありがたくそのずっしりと重い玉をもらって俺は先を急いだ。
所々に雑に置いてある重い玉を持って俺は階段を上った。
エレベーターは止められていたのだ。
忠次の部屋は最上階の45階だからただ登るだけでも一苦労だ。
なんなら落ちていた玉を含めてあと1つで集め終わる。
この階段をその重みで登ることが今回のゲームの頑張りどころなのだろう。
だがこんなところに人が居るはずもないのに、階段に老婆がいた。
座り込んで休憩しているようだが、これもきっと親父さんが準備した妨害なんだろう。
「おい、婆さん。こんな所で何してる?」
「あたしかい? 息子に会いに来たんだけどよぉ? エレベーターが動かんくてなぁ? 階段で行こうって思ってたんだけどよぉ? もう疲れて動けんわぁ」
語尾が上がる独特な話し方が癇に障るが、どうやらこの婆さんは妨害のための人間じゃないらしい。このタイミングでただの徘徊しているご老人が迷い込んだだけみたいだ。
「そうかー。エレベーターももう少ししたら治るだろうから、それ待ってた方が早いかもな? じゃあな」
そう言って先を進もうとすると服の裾を引っ張って止められた。
「お兄ちゃんよぉ。おぶってってくれんかぁ」
「え」
「最上階なんだけどよぉ? あたしは早く正次に会いたいんだぁ」
こいつ、妖怪か?
小泣きじじいか? いやばばあか。
でも正次って忠次の親父の名前だったよな。
「くそ。仕方ねぇな」
結局こいつも妨害じゃねぇか。
そう思いつつも俺は婆さんが持っていた風呂敷に玉を詰めて持って、婆さんを背負った。
これ7個ももって上まであがんの?
そう思いながら所々にある矢印の張り紙に沿って先に進んでいると奥から人が出てきた。
「凛太郎! 抜け出してきたから寮に帰ろ」
「は?」
「それとも……する?」
「お前、だれ?」
俺がそう聞くとそいつはショックそうな顔をした。
「誰って、忠次だよ。忘れちゃったの?」
「いや、確かに見た目はそっくりだけどよ。明らかに忠次じゃねぇじゃん」
「な、何でそんなこと言うの……?」
「いや、だって。忠次はもっと可愛いしかっこいいだろ? 見た目が似てても内から溢れ出る雰囲気が違うな。それに忠次は誰に対しても敬語だ」
「ぐ……貴様。なかなかやるな」
「まぁ、忠次のことはちゃんと知りたいと思ってるからな」
「でも俺たちはよく似てるだろ? どうだ? 俺にしておかないか?」
俺の体に気持ち悪い触れ方で触れつつそんなことを言ってくるそいつに俺は一発パンチを決め込んだ。
だが、そいつはその場から一歩も動くこともなく、すごい体幹を見せつけられただけだった。
「俺は忠次の見た目が好きなわけじゃねぇ……で、あんた誰なの?」
「俺は忠次の兄だ!」
「え?」
「大事な可愛い可愛い弟がどこの馬の骨とも分からない男と付き合っていると聞いたので、そいつを蹴落とすのに協力しにきたのだ」
忠次……。
兄もこんなか。
苦労してんだな。
「じゃあ俺は先を急ぐので」
そう言って脇を通り抜けようとすると肩をつかんで止められた。
「まぁ、待て。この玉を持っていくがよい」
そうして1個目より少し大きくなっている玉を渡された。
全力で忠次との交際を阻止しようとしている感が否めないな。
だがありがたくそのずっしりと重い玉をもらって俺は先を急いだ。
所々に雑に置いてある重い玉を持って俺は階段を上った。
エレベーターは止められていたのだ。
忠次の部屋は最上階の45階だからただ登るだけでも一苦労だ。
なんなら落ちていた玉を含めてあと1つで集め終わる。
この階段をその重みで登ることが今回のゲームの頑張りどころなのだろう。
だがこんなところに人が居るはずもないのに、階段に老婆がいた。
座り込んで休憩しているようだが、これもきっと親父さんが準備した妨害なんだろう。
「おい、婆さん。こんな所で何してる?」
「あたしかい? 息子に会いに来たんだけどよぉ? エレベーターが動かんくてなぁ? 階段で行こうって思ってたんだけどよぉ? もう疲れて動けんわぁ」
語尾が上がる独特な話し方が癇に障るが、どうやらこの婆さんは妨害のための人間じゃないらしい。このタイミングでただの徘徊しているご老人が迷い込んだだけみたいだ。
「そうかー。エレベーターももう少ししたら治るだろうから、それ待ってた方が早いかもな? じゃあな」
そう言って先を進もうとすると服の裾を引っ張って止められた。
「お兄ちゃんよぉ。おぶってってくれんかぁ」
「え」
「最上階なんだけどよぉ? あたしは早く正次に会いたいんだぁ」
こいつ、妖怪か?
小泣きじじいか? いやばばあか。
でも正次って忠次の親父の名前だったよな。
「くそ。仕方ねぇな」
結局こいつも妨害じゃねぇか。
そう思いつつも俺は婆さんが持っていた風呂敷に玉を詰めて持って、婆さんを背負った。
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