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副会長のその時2
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その後、何だかんだ市原組のことを解決して私は凛太郎を自分の家に誘った。
血や埃だらけでとても寮にはこのまま帰れなそうだったからだ。
マンションを見て興奮する彼を可愛く思うと同時に、何もかも親や父の舎弟や使用人に頼る自分を彼に知られたくなくて無駄に隠そうとしてしまった。
だが、謝った私に凛太郎は特に気にした様子も見せずにいてくれた。
「お風呂先どうぞ。そこの左の扉です。着替えを準備しておきます」
そう言った私に彼は心底不思議そうな顔をした。
「えっ。おんなじくらい汚れてんだから一緒に入ろうぜ」
そう言った凛太郎に私は一瞬思考が停止した。
今……え? 一緒に入ると言ったのか?
「えっ!? 一緒には流石に……」
「何だよ。俺と入りたくねぇの?」
むんとした顔をした凛太郎は、いつもより幼く感じる。
いつも余裕だという顔をしているからだろうか。
「いや……入りたく無いわけでは……んんん。入りたいです」
そうだ。こんなチャンスは二度とこないかもしれない。
凛太郎が俺と2人で行動してくれるなんてことはもうこの先ないかもしれない。
そうと決まれば私は凛太郎の気が変わらないうちにとパパっと服を脱いで風呂の準備をした。
凛太郎もすぐに入ってきた。
「頭洗いましょうか?」
実は前から一度触ってみたいと思っていたのだ。
私より少し短めの髪は固そうだがどんな心地なのだろうかと。
「お。お願いします」
「ふふ、はい。じゃあ目を閉じておいてくださいね」
少し緊張した様子の彼の髪に触れると、どこかで触ったことのある感覚がした。
そう。これは芝犬だ。
昔飼っていた芝犬のいっくんにそっくりの触り心地なのだ。
だが、そんなことを言ったら怒るだろうな。
と思ったら少し面白くて凛太郎にバレないようにふふと笑った。
「俺も洗おうか?」
私が凛太郎の髪を洗い終えると、願ってもない申し出をしてくれた。
「ええ、お願いします」
間髪入れずに答えた私に凛太郎は少し困った顔をした。
「やったことねぇから気持ちいか分からねぇけど」
「大丈夫です。ぜひお願いします」
そうして今度は私が座ってその後ろから凛太郎が洗い始めてくれた。
確かにやり慣れない感があって不器用な手つきで洗われた。
だが、やはり彼の人間性がそこに表されているかのように、不器用の中に優しさがあって心地よかった。
全身傷があって染みるが2人でジャグジーに入って私だけが意識している形ではあったけどゆっくり浸かることができた。
彼のことを知りたいと思っていた。
そして、今は少し彼のことを知っている。
体育祭では1年生のMVPを取るほど運動神経がいい。
女装が案外にあっている。
誰もが知っているような彼の情報しか知らなかったあの頃とは違う。
凛太郎の強さや優しさを知っている。
凛太郎の髪の毛の固さを知っている。
凛太郎に背中を預ける安心感と、預けられる幸福感を知っている。
でも、それ以外ももっと知りたい。
もっともっと知りたい。
そして、私に興味を持って欲しい。
私のことも知りたいと思って欲しい。
私を好きになって欲しい。
そう思った。
風呂から上がり、簡単にホットサンドを作って彼に渡すと包みを開けておいしそうに食べてくれた。
「あ」
「どうしたんです?」
「いや、着信がすごい来てる」
そう言った凛太郎のスマホの画面を覗き込むと琢磨くんからすごい量のメッセージがきていた。
私も生徒会室を飛び出してから連絡をすっかり忘れていた。
凛太郎が連絡してくれると言うのでお願いして待っていると、すぐに琢磨くんから折り返しの電話がかかってきたようだった。
何やら話しているが、もう疲れの限界でうつらうつらとしてしまいには寝てしまった。
ゆらゆらとする感覚で意識が少し浮上し、ベッドにいるのだと頭の隅で認識した。
私の髪を撫でる手が心地いい。
これは誰の手なのだろうか。
これは夢なのだろうか。
だが寝ていた私にその言葉だけはやけにはっきり聞こえた。
「忠次。俺に好きだなんて言われたら困るよな」
血や埃だらけでとても寮にはこのまま帰れなそうだったからだ。
マンションを見て興奮する彼を可愛く思うと同時に、何もかも親や父の舎弟や使用人に頼る自分を彼に知られたくなくて無駄に隠そうとしてしまった。
だが、謝った私に凛太郎は特に気にした様子も見せずにいてくれた。
「お風呂先どうぞ。そこの左の扉です。着替えを準備しておきます」
そう言った私に彼は心底不思議そうな顔をした。
「えっ。おんなじくらい汚れてんだから一緒に入ろうぜ」
そう言った凛太郎に私は一瞬思考が停止した。
今……え? 一緒に入ると言ったのか?
「えっ!? 一緒には流石に……」
「何だよ。俺と入りたくねぇの?」
むんとした顔をした凛太郎は、いつもより幼く感じる。
いつも余裕だという顔をしているからだろうか。
「いや……入りたく無いわけでは……んんん。入りたいです」
そうだ。こんなチャンスは二度とこないかもしれない。
凛太郎が俺と2人で行動してくれるなんてことはもうこの先ないかもしれない。
そうと決まれば私は凛太郎の気が変わらないうちにとパパっと服を脱いで風呂の準備をした。
凛太郎もすぐに入ってきた。
「頭洗いましょうか?」
実は前から一度触ってみたいと思っていたのだ。
私より少し短めの髪は固そうだがどんな心地なのだろうかと。
「お。お願いします」
「ふふ、はい。じゃあ目を閉じておいてくださいね」
少し緊張した様子の彼の髪に触れると、どこかで触ったことのある感覚がした。
そう。これは芝犬だ。
昔飼っていた芝犬のいっくんにそっくりの触り心地なのだ。
だが、そんなことを言ったら怒るだろうな。
と思ったら少し面白くて凛太郎にバレないようにふふと笑った。
「俺も洗おうか?」
私が凛太郎の髪を洗い終えると、願ってもない申し出をしてくれた。
「ええ、お願いします」
間髪入れずに答えた私に凛太郎は少し困った顔をした。
「やったことねぇから気持ちいか分からねぇけど」
「大丈夫です。ぜひお願いします」
そうして今度は私が座ってその後ろから凛太郎が洗い始めてくれた。
確かにやり慣れない感があって不器用な手つきで洗われた。
だが、やはり彼の人間性がそこに表されているかのように、不器用の中に優しさがあって心地よかった。
全身傷があって染みるが2人でジャグジーに入って私だけが意識している形ではあったけどゆっくり浸かることができた。
彼のことを知りたいと思っていた。
そして、今は少し彼のことを知っている。
体育祭では1年生のMVPを取るほど運動神経がいい。
女装が案外にあっている。
誰もが知っているような彼の情報しか知らなかったあの頃とは違う。
凛太郎の強さや優しさを知っている。
凛太郎の髪の毛の固さを知っている。
凛太郎に背中を預ける安心感と、預けられる幸福感を知っている。
でも、それ以外ももっと知りたい。
もっともっと知りたい。
そして、私に興味を持って欲しい。
私のことも知りたいと思って欲しい。
私を好きになって欲しい。
そう思った。
風呂から上がり、簡単にホットサンドを作って彼に渡すと包みを開けておいしそうに食べてくれた。
「あ」
「どうしたんです?」
「いや、着信がすごい来てる」
そう言った凛太郎のスマホの画面を覗き込むと琢磨くんからすごい量のメッセージがきていた。
私も生徒会室を飛び出してから連絡をすっかり忘れていた。
凛太郎が連絡してくれると言うのでお願いして待っていると、すぐに琢磨くんから折り返しの電話がかかってきたようだった。
何やら話しているが、もう疲れの限界でうつらうつらとしてしまいには寝てしまった。
ゆらゆらとする感覚で意識が少し浮上し、ベッドにいるのだと頭の隅で認識した。
私の髪を撫でる手が心地いい。
これは誰の手なのだろうか。
これは夢なのだろうか。
だが寝ていた私にその言葉だけはやけにはっきり聞こえた。
「忠次。俺に好きだなんて言われたら困るよな」
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