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ベッド

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『リン! 大丈夫なの!? 怪我とかしてない!?』

電話越しに聞こえてきた琢磨の声はかなり心配している様子だった。

「ああ。連絡が遅くなって悪かった。会長は気絶してたんで実家のほうに預けてきて、今俺は忠次の家にいる」
『忠次って……副会長のこと!? いつの間に下の名前で呼び合う中になったの!』
「いつの間にって、まぁ。さっき」
『そんな……』

琢磨はなぜだかショックそうだ。
自分たちだけの秘密というのが楽しいと思っていたのかもしれない。

「今回の件は帰ったら説明するが、とにかく会長と忠次と俺は無事だから、それだけは安心してくれ」
『……分かった。じゃあ帰ってくるのは明日なの? 気をつけてね』
「ああ。ありがとう」

電話を切ると忠次はコクリコクリと船を漕いでいた。

「忠次、ベットで寝ろよ。風邪引くぞ」
「……は、ぃ」

返事はするものの一向に起きない。

まぁ、仕方ねぇよな。
あんだけあばれりゃ疲れるだろう。

俺は失礼ながら寝室を探して勝手にいくつか扉を開けて確認してベットを発見した。
こんな大きさのベット存在すんのかと思うほどの巨大なベットだ。

「おーい。忠次、行くぞ」

少し揺すっても起きない。
このまま椅子に座ったまま寝かせるのは疲れた体にあまりにもかわいそうなので忠次の膝に手を差し込んで横抱きにしてベットまで運んだ。
ベッドに下ろしてやったが、それでも忠次は目を覚ますことはなく、心地よさそうにすやすやと寝ている。

「無防備な顔して寝てやがんな」

忠次はいつもパソコンに向かってバリバリと仕事をしているイメージなので、何の警戒心もない寝顔を見て心臓のあたりがざわざわとした。

「忠次。俺に好きだなんて言われたら困るよな」

寝ているのをいい事に忠次の髪をもう一度触ってみた。
乾いた状態でもやはり柔らかくて猫みたいだ。

俺はしばらくそうして忠次の髪を触っていたが疲れもあってそのまま忠次の横で寝てしまった。

「な、なななな何で、凛太郎っ!」

そんな叫び声で起きると、掛け布団を自分の身を隠すように持った忠次が俺から距離を置くようにして叫んでいた。

「おはよ、忠次。ゴキブリでも出たか?」
「なっ、いや! あれ、そういえば何で私はベットに?」
「何でって。机で寝てて起きねぇから俺が運んだんだが」
「なっ、運んだって……お、重かったでしょう」
「……いや? 普通だと思うが」
「んん。そうですか……ご迷惑をおかけしてすみません」
「こんくらいで何言ってんだよ……というか、もう少し、寝ようぜ……」

窓の外の明るさを見るにまだ明け方なのだろう。
俺はまだまだ寝足りなく、頭もうまく回らない。
とりあえず、布団で身を隠し続けている忠次ごと抱え込んで布団を被り俺はもう一度眠りについた。忠次の抵抗にあった気もするし、ものすごく叫び声を上げていた気もするが、もはや俺の思考は眠りの海へと投げ出された後だった。

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