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忠次の家
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その後は、忠次が呼んでくれた車で会長の実家に気絶した会長を届けた。
「実は私の家もこの辺りなんです。今日はもう遅いですし、泊まって行きませんか?」
忠次がそう言ってくれて俺は渡りに船とばかりにうなずいた。
「いいのか?」
「ええ。むしろこの格好で2人して寮に帰るわけには……」
忠次は自分の格好を見下ろしながら片眉を上げてそう言った。
確かに俺たちの格好はその辺をただ歩くだけでも警察に止められそうだ。
車で忠次の家に向かっている間、忠次は申し訳なさそうに言った。
「本当は実家の名前に頼ることはしたくなかったのですが。私の今の力では難しくて。お恥ずかしいところをお見せしてすみません」
「いや、俺も叔父さんの会社に迷惑がかかるかもってヒヨってたから。忠次が居てくれて本当に良かった」
「そう言っていただけて安心しました」
「安心?」
「最近、凛太郎と話すことが増えて嬉しく思っていましたから。もしも私がヤクザの息子だと知られたら嫌われたり、怖がられたり、距離を置かれたりするんじゃないかと」
「そんなことしねぇよ。正直、俺はヤクザとかそういうのよく分かってねぇけど、さっきの話を聞いてる感じだと忠次の家は普通に生きてりゃ手だししねぇってことだろ?」
「はい。一般人に危害を加えることは禁止されています」
「なら、でたらめに怖がることもねぇよ。それに親がヤクザだったとしてそんなの関係ねぇし。忠次といると何かホッとするって言うか。まぁ、怖がるとか距離おいたりとかしねぇから安心して」
「はい。ありがとうございます」
忠次はそう言って本当に嬉しそうに笑った。
車が止まって運転手が目的地に着いた事を知らせてきた。
見るとものすごい高層マンションのロータリーだった。
「すっげぇ~。忠次の家は金持ちだなぁ。もしかして最上階だったりするのか?」
そう尋ねると、忠次は少し気まずげに目を逸らした。
やべ、最上階じゃないから恥ずかしいとかか?
めっちゃ失礼な質問したのか?
ああ分かんねぇ。人付き合いしてこなかったツケがここにきた。
「私の部屋はまぁ最上階です」
忠次がそう言ったので俺は安心した。
「すげぇなぁ。最上階! 憧れるよなぁ」
だが異常はすぐに気がついた。
玄関ホールにドアマンみたいな人が立っていたのでそれにも興奮しているとそいつらがとんでもない事を口にした。
「おかえりなさいませ、忠次様」
「ただいま」
「汚れたお召し物は後ほど回収に伺います」
「ありがとう。頼みます」
その会話を聞いてギョッとした俺が忠次を見ると忠次は観念したように肩を落とした。
「このマンションは全てうちの家のものなんです。ひけらかすようで恥ずかしかったし、面倒みてもらうだけで何もできない私を知られるのが不甲斐なかったので……その、隠すような事をしてすみません」
うなだれて落ち込む忠次に俺は首を傾げた。
「そんなの、高校生なら大体の人間が面倒見てもらうだけだろ? それに今は寮にいるんだし。俺も、忠次も面倒見てもらうだけじゃないだろ」
「ええ。ですがどうにも恥ずかしくて……」
そんな会話をしつつエレベーターに乗って最上階に向かい一番左の部屋が忠次の部屋だと案内された。
鍵を開けて中に入るとまるで高級ホテルのように綺麗でびっくりした。
「お風呂先どうぞ。そこの左の扉です。着替えを準備しておきます」
「えっ。おんなじくらい汚れてるんだから一緒に入ろうぜ」
「えっ!? 一緒には流石に……」
忠次はびっくしした顔でそう言った。
「何だよ。俺と入りたくねぇの?」
「いや……入りたくないわけでは……んんん。入りたいです」
最後は小さくなっていって聞き取りづらかったが一緒に入る事を了承してくれたらしい。
だが俺は服を脱いでいる段階で思い出した。
そういや俺……忠次のこと好きだと自覚したばっかじゃん。
高級マンションにテンション上がって忘れてた。
ど、どうしよう。
「実は私の家もこの辺りなんです。今日はもう遅いですし、泊まって行きませんか?」
忠次がそう言ってくれて俺は渡りに船とばかりにうなずいた。
「いいのか?」
「ええ。むしろこの格好で2人して寮に帰るわけには……」
忠次は自分の格好を見下ろしながら片眉を上げてそう言った。
確かに俺たちの格好はその辺をただ歩くだけでも警察に止められそうだ。
車で忠次の家に向かっている間、忠次は申し訳なさそうに言った。
「本当は実家の名前に頼ることはしたくなかったのですが。私の今の力では難しくて。お恥ずかしいところをお見せしてすみません」
「いや、俺も叔父さんの会社に迷惑がかかるかもってヒヨってたから。忠次が居てくれて本当に良かった」
「そう言っていただけて安心しました」
「安心?」
「最近、凛太郎と話すことが増えて嬉しく思っていましたから。もしも私がヤクザの息子だと知られたら嫌われたり、怖がられたり、距離を置かれたりするんじゃないかと」
「そんなことしねぇよ。正直、俺はヤクザとかそういうのよく分かってねぇけど、さっきの話を聞いてる感じだと忠次の家は普通に生きてりゃ手だししねぇってことだろ?」
「はい。一般人に危害を加えることは禁止されています」
「なら、でたらめに怖がることもねぇよ。それに親がヤクザだったとしてそんなの関係ねぇし。忠次といると何かホッとするって言うか。まぁ、怖がるとか距離おいたりとかしねぇから安心して」
「はい。ありがとうございます」
忠次はそう言って本当に嬉しそうに笑った。
車が止まって運転手が目的地に着いた事を知らせてきた。
見るとものすごい高層マンションのロータリーだった。
「すっげぇ~。忠次の家は金持ちだなぁ。もしかして最上階だったりするのか?」
そう尋ねると、忠次は少し気まずげに目を逸らした。
やべ、最上階じゃないから恥ずかしいとかか?
めっちゃ失礼な質問したのか?
ああ分かんねぇ。人付き合いしてこなかったツケがここにきた。
「私の部屋はまぁ最上階です」
忠次がそう言ったので俺は安心した。
「すげぇなぁ。最上階! 憧れるよなぁ」
だが異常はすぐに気がついた。
玄関ホールにドアマンみたいな人が立っていたのでそれにも興奮しているとそいつらがとんでもない事を口にした。
「おかえりなさいませ、忠次様」
「ただいま」
「汚れたお召し物は後ほど回収に伺います」
「ありがとう。頼みます」
その会話を聞いてギョッとした俺が忠次を見ると忠次は観念したように肩を落とした。
「このマンションは全てうちの家のものなんです。ひけらかすようで恥ずかしかったし、面倒みてもらうだけで何もできない私を知られるのが不甲斐なかったので……その、隠すような事をしてすみません」
うなだれて落ち込む忠次に俺は首を傾げた。
「そんなの、高校生なら大体の人間が面倒見てもらうだけだろ? それに今は寮にいるんだし。俺も、忠次も面倒見てもらうだけじゃないだろ」
「ええ。ですがどうにも恥ずかしくて……」
そんな会話をしつつエレベーターに乗って最上階に向かい一番左の部屋が忠次の部屋だと案内された。
鍵を開けて中に入るとまるで高級ホテルのように綺麗でびっくりした。
「お風呂先どうぞ。そこの左の扉です。着替えを準備しておきます」
「えっ。おんなじくらい汚れてるんだから一緒に入ろうぜ」
「えっ!? 一緒には流石に……」
忠次はびっくしした顔でそう言った。
「何だよ。俺と入りたくねぇの?」
「いや……入りたくないわけでは……んんん。入りたいです」
最後は小さくなっていって聞き取りづらかったが一緒に入る事を了承してくれたらしい。
だが俺は服を脱いでいる段階で思い出した。
そういや俺……忠次のこと好きだと自覚したばっかじゃん。
高級マンションにテンション上がって忘れてた。
ど、どうしよう。
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