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夢を
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それから教室に戻って授業を受けたり、お昼は琢磨と和馬と一緒に他愛ない話をしながら食べたりして、いつも通り学校生活を過ごした。
最近は俺のことを大々的に嫌ってくる奴が一人もいなくなってしまって嫌われるためのタスクが進行できないでいることに少しだけ焦りを覚えていた。
だが今の俺はあの生徒会のメンバーたちを友人だと思ってしまっているから、彼らに対して今までのように嫌われるような行動をするのは躊躇われた。
「どうすりゃいいんだろうなぁ……」
放課後の一服エリアで一人、煙を吐き出しながら呟いた。
「君、こんなところで何をしているのだ」
びっくりして振り返るとよく知らない生徒だった。
だが、いかにも真面目という感じできっちりと制服を着込んだそいつの腕に付けられた腕章でそいつが何の生徒なのかは嫌でもわかる。
風紀委員と書かれたその腕章を付けている生徒は、生徒会長の親衛隊長よりも嫌われていると言っても過言ではない。彼らは規則を少しでも破ろうとする生徒を許さないからだ。
服装の乱れや、まぁタバコとかは言われてもしょうがないが、風紀委員の奴らはお菓子類や、雑誌類までもを規制しようとする。それも、寮の中でまで。
俺も例に漏れずこいつらのことはあまり好きじゃない。
「特に何も~。強いて言えば~、好きな人の部活が終わるのを待っているって感じですぅ」
俺がそう言うとそいつは訝しげな顔をして俺を見た。
「だが、君の好きな人と言うのは生徒会長だろう? いつも生徒会室に無理やり立ち入っていると聞いていたが」
ちっ。俺のことなんて知ってるよなそりゃ。
「そうなんですぅ。あまり行って迷惑になるのもなぁって思ってぇ」
「そうなのか。それはいい心がけだ。だが、先ほど君がタバコを吸っていたように見えたのだが」
「ええ~。僕ぅ、タバコなんてぇ、煙たくてぇ嫌いですぅ。見間違いじゃないですかぁ?」
「そうだろうか。まぁ、僕もしっかりと確認したわけではないから今回はそう言うことにしておこう」
そう言ってそいつは去っていった。
俺はそろそろかなと生徒会室に向かって、恐る恐る扉を開けてみると、やはり副会長しか残っていなかった。
「こんにちわ~。副会長さまだけですかぁ~?」
「ああ。榊くん。今日も遅かったですね。会長はもう帰ってしまいましたよ」
やはりパソコンから目を離さずにそう言ってくる副会長を見て安心した。
何だか、この人を見ていると安心するんだよなぁ。
「そうですかぁ。残念ですぅ」
俺も口ではそう言うもののさっさと副会長用にコーヒーを作りに行った。
そして出来上がったコーヒーを渡すとそこでやっと目が合う。
おそらく副会長は俺じゃなくコーヒーにかなり好感を持っているんだろう。
だがコーヒーをもらってありがとうと微笑む副会長はいつもの冷たそうな印象はまるでなく、可愛らしいと思うくらいふわっと笑う。その顔が何だかとても好きだと思った。
そしてまたカタカタという音を聴きながら俺はウトウトとする。
だけど、また。
あの夢を見た。
いつも見る、母を助けてあげられない夢。
悔しくて、痛い夢。
昨日ここで寝た時は見なかったのに。
ああ。
そうか。
俺が嫌われタスクを怠って、生徒会と仲良く過ごしてしまっているから。
幼き日の俺が訴えてきているのかもしれないな。
お母さんを助けてって。
みんなと仲良くしている場合じゃないでしょうって。
最近は俺のことを大々的に嫌ってくる奴が一人もいなくなってしまって嫌われるためのタスクが進行できないでいることに少しだけ焦りを覚えていた。
だが今の俺はあの生徒会のメンバーたちを友人だと思ってしまっているから、彼らに対して今までのように嫌われるような行動をするのは躊躇われた。
「どうすりゃいいんだろうなぁ……」
放課後の一服エリアで一人、煙を吐き出しながら呟いた。
「君、こんなところで何をしているのだ」
びっくりして振り返るとよく知らない生徒だった。
だが、いかにも真面目という感じできっちりと制服を着込んだそいつの腕に付けられた腕章でそいつが何の生徒なのかは嫌でもわかる。
風紀委員と書かれたその腕章を付けている生徒は、生徒会長の親衛隊長よりも嫌われていると言っても過言ではない。彼らは規則を少しでも破ろうとする生徒を許さないからだ。
服装の乱れや、まぁタバコとかは言われてもしょうがないが、風紀委員の奴らはお菓子類や、雑誌類までもを規制しようとする。それも、寮の中でまで。
俺も例に漏れずこいつらのことはあまり好きじゃない。
「特に何も~。強いて言えば~、好きな人の部活が終わるのを待っているって感じですぅ」
俺がそう言うとそいつは訝しげな顔をして俺を見た。
「だが、君の好きな人と言うのは生徒会長だろう? いつも生徒会室に無理やり立ち入っていると聞いていたが」
ちっ。俺のことなんて知ってるよなそりゃ。
「そうなんですぅ。あまり行って迷惑になるのもなぁって思ってぇ」
「そうなのか。それはいい心がけだ。だが、先ほど君がタバコを吸っていたように見えたのだが」
「ええ~。僕ぅ、タバコなんてぇ、煙たくてぇ嫌いですぅ。見間違いじゃないですかぁ?」
「そうだろうか。まぁ、僕もしっかりと確認したわけではないから今回はそう言うことにしておこう」
そう言ってそいつは去っていった。
俺はそろそろかなと生徒会室に向かって、恐る恐る扉を開けてみると、やはり副会長しか残っていなかった。
「こんにちわ~。副会長さまだけですかぁ~?」
「ああ。榊くん。今日も遅かったですね。会長はもう帰ってしまいましたよ」
やはりパソコンから目を離さずにそう言ってくる副会長を見て安心した。
何だか、この人を見ていると安心するんだよなぁ。
「そうですかぁ。残念ですぅ」
俺も口ではそう言うもののさっさと副会長用にコーヒーを作りに行った。
そして出来上がったコーヒーを渡すとそこでやっと目が合う。
おそらく副会長は俺じゃなくコーヒーにかなり好感を持っているんだろう。
だがコーヒーをもらってありがとうと微笑む副会長はいつもの冷たそうな印象はまるでなく、可愛らしいと思うくらいふわっと笑う。その顔が何だかとても好きだと思った。
そしてまたカタカタという音を聴きながら俺はウトウトとする。
だけど、また。
あの夢を見た。
いつも見る、母を助けてあげられない夢。
悔しくて、痛い夢。
昨日ここで寝た時は見なかったのに。
ああ。
そうか。
俺が嫌われタスクを怠って、生徒会と仲良く過ごしてしまっているから。
幼き日の俺が訴えてきているのかもしれないな。
お母さんを助けてって。
みんなと仲良くしている場合じゃないでしょうって。
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