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会長3

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「あのぉ、僕と一緒に」
「しつこい」

もう一度僕と一緒にご飯が食べたいのかを確認しようとしたら怒られた。
いや、だって。会長がそれほどまでにおかしなことを言っているんだ。仕方ないだろう。

「会長さま、もしかして熱」
「ない。今朝も測った。平熱だ」
「なんか拾って食べました?」
「俺がそんなことすると思うのか」
「いえ、えーっと。じゃあ」
「何を聞いても無駄だ。俺は最初からお前と昼食を取るためにわざわざ一般の食堂に行っていた」
「えっとぉ……すみません。理解が追いつかないんですけどぉ、何で僕と食べたいんですか?」

そう尋ねると会長は視線を逸らした。

「別に」

うぉい、こいつここにきて女優気取りか。
別にじゃねぇ。
くそ、こんなやつにかまってられっか。

「そうですかぁ。では失礼しますねぇ~」
「っおい、違う! その、お前と! その、友達になりたい」
「えぇ!?」
「だめか」
「いや、ダメっていうか、会長さまは僕のこと嫌いじゃないですかぁ。だからえっとぉ」
「嫌いじゃ……ない」
「はい?」
「だからっ、別にお前のことを嫌っているわけじゃない」
「えぇ~」

何言ってんだこいつ。
あれか? なんかの罰ゲームか?
いや、そんなことをするタイプじゃなさそうだが。

「でもぉ、嫌いじゃなきゃゴミ虫なんて呼び方しないですよねぇ~?」
「その……呼んでもいいのか」
「え?」
「名前……突然呼ばれたらびっくりするだろうと思って」

はぁ?
こいつどういう神経してやがる!
いきなりゴミ虫呼ばわりの方がびっくりするわ!

「あ、ああ~。えっとぉ、今まで通りの呼び方で結構ですぅ」
「……そうか」

少しだけ残念そうにそう言われて俺は全く意味がわからなかった。

ああ。そうか。
こいつがもしも俺と友達になりたいと思ったんだとしても、それは普段のブリブリな俺に対してだ。本当の俺と友達になりたいと思ったわけではない。

それならいっそその幻想を壊してやろう。

「会長が友達になりたいと思ったのは、本当の俺じゃねぇよ」

口調を本来の自分に戻して会長を見た。
だが、会長の表情は先ほどと何も変わっていなかった。

「驚かねぇの?」

無言の会長にそう問いかけると会長の体が少しだけピクリと動いた。

「お前が本当はあんな感じじゃないんだろうってのは……気がついていた」
「え?」
「体育祭の準備の時、お前は熱中症になって朦朧としていたからか気がついていなかったが、お前にうぜぇと言った俺に『はいはい、うぜぇなら話しかけんなカス』と言ったんだ」
「ええ!?」

やばいな。そんな記憶はない。
だが、まぁこいつに対してそう思うだろうことは容易に想像できるので多分本当に口に出してしまっていたんだろう。

「俺はあの時も、最初からお前の具合の悪さに気がついていたから、教室に返してやろうと思ったんだが」
「はぁ!? あれで!?」

それは確かに覚えている。
体育祭準備でただでさえ面倒臭えのにお前の顔なんて見たら余計疲れる、教室帰れ。
みたいなことを言われたよな。
こいつ本当に俺を心配した発言なら言葉を選ぶセンスがまるでないな!

「とにかく、俺は、その、お前と友達になりたいんだ」
「ちょっと、遠慮したいというか」
「お前、俺のこと嫌いだろう。それは何となく分かっていた。だが、お前が俺のことを嫌いだと考えると、それは嫌なことだなと思ったんだ。だから」
「それは自分のモンだと思ってたものが実は違ったって時のなんか、あれだろ。俺と友達になりてぇ訳じゃない」
「俺は、お前と友達になりたい。これは俺の感情だ、お前が決めることじゃない」

それは確かに。
くそ。
こいつに言い負かされるのは癇に障るな。

「俺は、口悪いぞ」
「構わない」
「喧嘩だって割とする」
「それは……理由によるが程々にがいいんじゃないか」
「それにタバコも吸うぞ」
「俺の前では吸わないでくれ。報告とか結構だるいからな」
「……」

俺が無言になると会長はもう一度言った。

「友達になってくれないか」

俺はもう仕方ないしとタスクのことも忘れてやけになり言ってしまった。

「まぁ、いいけど」
「そうか」

そう言って会長は嬉しそうに笑った。
友達になるのに許可っているんだっけ。
なんか小学生に戻ったみてぇだなぁ。
と、俺は何だか懐かしい気持ちになった。
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