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副会長2

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気がついたら窓の外は薄暗くなっていて、俺は飛び起きた。
俺の肩には副会長のものだろうジャケットがかかっていて、副会長は相変わらずカタカタとパソコンを打っていた。

「っすみません! 僕寝ちゃってたみたいで!」

副会長は一度こちらを見やるとまたパソコンに目を戻した。

「いえ。私は仕事をしていただけですので」
「……副会長さまは、いつもこんな時間まで仕事してるんですか?」
「まぁ……そうですね。そうなることも多いです」
「そうなんですか。それに、今日は会長さまは来なかったんですね~」
「ええ。もう少し早い時間なら大体はいますので明日からはもしも来るときは、もう少し早い時間が良いかもしれませんね」
「そうですか。え、っと。もう一杯コーヒーいかがですか?」

副会長のすっかり空になってしまったカップを見てそう言うと副会長は不思議そうな顔をした。

「さすがに会長はもう今日は来ないと思いますよ?」

ああ。会長がいないなら俺がここに居る意味は無いだろうと言いたいのか。

「会長さまには明日また会えるからいいんです~」
「そうですか。ですが、もう遅いですから大丈夫ですよ。ありがとうございます」


そう言って柔らかく笑った副会長を見て何故だか胸がざわついたような気がした。

俺はそのざわつきが一体何なのか分からなかったが、とりあえずコーヒーを入れることにした。
自分の分と副会長の分を入れて。もしも断られたら自分で飲めば良いし。

そうして出来上がったコーヒーを副会長のところまで運ぶと副会長は迷惑そうにすることもなくただありがとうございますと少しだけ嬉しそうに笑った。

何だ。結局飲みたかったのか。

副会長が仕事をしている間、俺はキョロキョロと生徒会室を観察しながらコーヒーを飲んだ。

本棚のところにエクセルの本があって、俺は手持ち無沙汰にそれを読むことにした。

本を見ているうちに楽しくなってきて俺はふんふん言いながら副会長のパソコンと本を見比べた。

「ち、近いですよ。榊くん」
「えっ!?」
「な、何です」
「あ、すみません。本当だ、確かに! 近づきすぎてすみませんっ。いや、そうじゃなくて、おr、僕の名前知ってるんですね」

俺が慌てふためきながらそう言うと副会長はおかしそうにふふと笑った。
副会長でも微笑むとかじゃなくて、笑うことあんのか。

「そりゃあ、知っていますよ。一時期は毎日ここに来ていたでしょう。最近は来る頻度が減っていて、そのおかげで会長の機嫌が悪いんですよ。あ……いや失礼、無駄話ですね」
「えっ、いやいや! 副会長さまともっとお話ししたいです!」

そう言うと副会長はまた笑った。
名前覚えてもらうってのはこんなに嬉しいものなのか。
そういえば、琢磨も名前で呼べって怒ってたな。

「私とお話をしたがる生徒は珍しいですね。なぜだか怖がられているようですから」
「え、そうなんですか。僕はどちらかと言うと怖いって言うよりは仕事が好きなんだろうって思ってたから話しかけたら嫌がると思ってました」
「そんなことはないんですが、まぁ。仕事が忙しいのは事実です。でも君と話すのはなかなか楽しいですね」
「え、」

俺と話すのが楽しい……?
この副会長が……?
何だかそれを聞いてふわふわと気持ちが上がるような気がした。

「僕も! 副会長さまと話すの楽しいです。あ、でも、僕が来る頻度が減って会長さまが機嫌が悪いって……?」

もしかして、俺がいつ来るか分からないイライラで会長が副会長に当たってたりするんだろうか。俺はそう不安になりながら尋ねた。

「あの人はあれで素直じゃありませんから君のことも本当は嫌いじゃ無いのに、あの態度なんですよ」
「嫌いじゃない?」

会長が俺のことを嫌いじゃ無い? 
いやいやいや、それはない。
流石にそれは人の機微に鈍感すぎるわ副会長。
あの態度で俺のこと嫌ってない可能性はゼロだろ。

「ふ、ふふ。まぁ、君もなかなかの鈍感ですよね。君の前ではいつも緊張していますよ、会長は」

俺の思考が盗聴されている。
だが、鈍感なのは俺じゃなくてあんただろう。全く。
会長が俺を嫌ってないなんておかしなことを言うんだからな。

「さぁ、そろそろ帰りましょうか」
「……はい」

そうしてその日俺は混乱の思考の中、副会長と寮に帰った。
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