養父の命令で嫌われ生徒会親衛隊長になって全校生徒から嫌われることがタスクになりました

いちみやりょう

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副会長

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俺はその足で生徒会室に向かった。
ただ何となく、俺を否定する奴と話したくなったのかもしれない。

「会長さまぁ~、すき~……って、副会長さまだけですかぁ?」

久しぶりに足を踏み入れた生徒会室には副会長だけがいた。
こいつは最初からずっと仕事のことしか考えていない将来の夢はおそらく社畜になることだろう男だ。

「……ええ」

副会長はパソコンから顔を上げることなく短く答えた。
俺は何となくの暇つぶしに副会長の隣の椅子を引いて副会長が愛してやまないパソコンの画面を覗き込んだ。

「副会長様はぁ仕事、好きですねぇ~」
「……特に好きと言うわけでは」
「え! 好きじゃないんですか!?」
「まぁ……好きか嫌いかで話すことでもないでしょう。やらなければならないから、やる。それだけです」
「へぇ~。ずっと仕事してるから好きなんだと思ってましたぁ」
「私が他の生徒会役員の仕事をまとめているので、おのずと私の仕事量が多くなっているだけです」
「そんなの、分担すれば良いと思うけどなぁ~」

俺がそう言っても副会長は無言でパソコンに向き合うだけになってしまった。
ま、俺が口出すことでもねぇか。


「なんです?」

俺が生徒会室の給湯エリアでコーヒーを作って副会長の机に置くと、ここにきて初めて顔を上げた副会長と目があった。

「会長さまが来るまで暇だったので~、コーヒーお嫌いですかぁ?」
「……いえ、ありがとうございます」

そう言ってお礼を言った副会長の目元が少し和らいだので少し嬉しくなった。
そして一口飲んだ副会長は少し驚いた顔をした。

「ふふ。おいしいですかぁ~?」
「……ええ。コーヒーを入れるの、お上手なのですね」

素直にそう言って褒める副会長を見て、好きなタイプの人間だと思う。

「まぁ、僕も好きなのでよく入れるんですぅ。喜んでもらえてよかったです」

副会長はただ一人、俺が嫌われようとどう頑張っても最初からずっと俺に対して興味すら示さなかった。だからいつも少しばかり気になってしまう。どんなことをしたら笑うのかとか、どんなことで怒るのかとか。

そうして、また副会長はパソコンに向き直って仕事をし始めた。
副会長がカタカタと文字を打つ音と、たまにコーヒーカップを持ち上げる音だけがする。
最近は騒がしい毎日だったけど何だかすごく落ち着く空間で、窓から心地よい風が流れてくるのもあって俺はすっかりうとうととしてしまった。
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