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養父の電話

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ブー……ブー……

琢磨と庶務と一緒に、会長と会計との合流地点を目指しているとスマホが鳴っているのに気がついた。
合流地点はもうすぐ近くのショッピングモール内にあるカフェだったので俺は2人に先に向かってもらうように断りを入れてから電話に出た。

「もしもし」
『私だ』
養父おやじ

電話から聞こえてきたのは養父の声だった。
何の電話だ。
まさか母に何かあったのだろうか。

『どうだ。嫌われ者生活はうまくいっているのか』
「……ああ」
『お前の母親のことだが』

その声で一気に緊張が走った。

「……何だよ」
『概ね手術は順調だ』
「っ。そうか」
『だがこれからも何かと金は入用だろう。お前の母親の命はお前の生活の仕方にかかっているんだ。気を抜くなよ』
「分かってる」
『それで? 弱いものの立場に立って物事を考えられるようになったか?』
「さぁな。だが、どんだけ嫌われようが俺の考えは昔から変わりゃしねぇよ」
『そうか』

電話をしながらカフェの方に視線をやるとちょうどカフェに合流した2人を確認できた。
みんなが笑い合って話しているのがやけに遠く感じる。

『じゃあな。頑張れよ』
「……ああ」

優しい声で養父が言ったがんばれよと言う声はどこか懐かしい気持ちを起こさせた。

みんなのいるカフェに合流すると俺の分のドリンクバーが既に頼まれていて、琢磨が嬉々として注ぎに行ってくれた。

「リン! コーヒーで良かったよね! ほらどうぞっ」
「ありがとう、書記さま」
「親衛隊のくせに生徒会の書記をパシリに使うなんていいご身分だな」

会長が嫌みったらしく突っついてきて、養父からの電話で体に力が入っていたのが、怒りの力に変わった。

「僕と書記さまは~、お友達ですから。ね?」
「う、うんっ!」
「僕も! さっきリンくんとお友達になった!」

庶務が張り合うように言った。
一体誰に張り合っているんだ。そんなので羨ましい~ってなるやつなんていないぞ庶務。

「そういえばリン、結局まだ石鹸買ってないでしょう? この後買いに行こうよ」
「僕の石鹸なんていつでも買えるからいいよ~。ただの出かけたい口実だったんだぁ。書記さまと庶務さまはどこか行きたいところはないの~?」
「おい。俺らの行きたいところは無視か」


横から会長が口を挟んできたがお前らの行きたいところなど知るところではない。
勝手に着いてきたのはそっちだろ。

「そんなことないですよぅ。僕はぁ、会長さまがいるならどこでも楽しいですからぁ」
「っ……うぜぇ。まぁ特に俺も行きたいところはないが」

こいつ! うぜぇのはお前だろ!
行きてぇとこねぇならすっこんでろハゲろ。

「僕っ、リンくんと一緒にプリクラ撮りたい!」

庶務が可愛らしく笑ってそう言った。

「いいね! 僕もリンと撮りたい!」
「じゃあゲーセン行こっかぁ~」

そして俺たちはゲーセンに行ってプリクラを取ったりメダルゲームをしたり、クレーンゲームをしたりして寮に帰った。

1日がこんなに疲れたのはいつぶりだろう。
もうだいぶ長いことなかった気がするな。

その日の夜は泥のように眠ることができた。
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