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庶務2

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俺たちは学校からバスを使って1時間かけて大きなショッピングモールに向かうことになった。

「ごみ虫は俺の隣に座りたいだろ~?」

うぜぇよ。会計。
お前の隣に座ったらストレスで死ぬわ。

「僕は~、書記さまとがいいかなぁ」
「だめ!!」

俺の言葉に即座に庶務が叫んで琢磨の腕を掴んだ。

「だよねぇ~。じゃあ僕は会長さまと一緒に乗りたいですぅ」

え、ちょっと。と琢磨が止めようとするのを無視して会長の腕にくっついた。

「ゴミ虫の分際で俺は次点か」
「まさか~。会長さまのことが好きすぎてちょっと緊張しちゃっただけですよぅ」

会計の隣に座るよりは会長の方がマシなだけだ。
そして会長から窓際に押しやられて逃げ場のない窮屈感の中、1時間のドライブが始まった。

俺たちの前に座った琢磨と庶務の2人は葬式のような雰囲気で会話がない。
俺も特に話すことはないし、会長は無口だし、会計一人がずっと喋るだけの車内はひどくカオスだった。

あれ? 合計5人で奇数なんだから俺が1人で座れば良かったんじゃん。
もっと早く気がつけば良かった。悔しすぎる。

「おい。早く降りるぞ」

会長に声をかけられて俺はやっとバスが止まっていたことに気がついた。

「あ、はぁい」

急いでバスを降りるとショッピングモールは人でごった返していた。
どうやら超有名なアイドルグループか何かが来ているらしい。

しばらくは一緒に行動できていたのだが案の定俺たちは逸れてしまった。
これが普通の友人同士ならスマホで連絡すればあっという間に集合できるのだろうが、俺はあの中の琢磨意外と友人ではないし、琢磨の連絡先すら知らない。
そもそも全寮制なので連絡先を交換すると言う考えもなかったのが不味かったな。

そんな中、俺はとりあえず喫煙所に向かった。
ニコチンが足りないのだ。

喫煙所に着いてタバコを吸っていると遠くの方で琢磨のような人物が男に絡まれているのが見えた。

あいつ。よく絡まれんなぁ。

俺は吸っていたタバコをもみ消して琢磨らしき人物のところまで走って向かった。
近づくに連れてそれが琢磨ではないことに気がついた。
目の下の隈があるってことは庶務か。

俺がそこにたどり着く前に、男たちと庶務との間に琢磨が立ち塞がったのが見えた。
男の一人が琢磨に手をあげようとしている。
琢磨が衝撃に備えて目をギュッとつぶったが、そのパンチがギリギリ琢磨に届く前にたどり着けた俺は地面を蹴って男への飛び蹴りが決まった。

男は吹っ飛んで伸びた。
男の仲間が殴りかかってきたのもかわしてカウンターを喰らわし、回し蹴りで気絶させた。

「ふぇ……ふぁぁん」

庶務が緊張の糸が切れたのか泣き出したのを、琢磨が肩を支えて慰めている。
泣いてるのに酷だとは思うが俺は庶務の近くに寄って屈んで目線を合わせた。

「庶務さま。何で襲われたの?」
「ナンパ……断った」
「そっかぁ。今でも思う?」
「え?」
「襲われる方にも問題あるって」
「っ。思わないっ。僕はっ、あんなこと言うつもりも思ってもいなかったんだ……」
「ふっ……だよな。俺もお前がそんなこと思ってないと思ってた」

庶務はギョッとした顔で俺を見て、それから何やら腑に落ちたような顔をした。

「琢磨……ごめん。ひどいこと言って。さっきも言ったけど、僕は本当はあんなこと言うつもりじゃなかったんだ。言い訳にしかならないけど、琢磨が僕と一緒に居てくれなくなってすごく寂しくて、僕一人だけ取り残されたような気持ちになってたんだ。ごめん……それから、リンくん? もごめん。僕ずっと君にひどい態度だったのに。助けてくれてありがとう」
「ああ」

そう言って笑うと庶務も琢磨もおかしそうに笑った。

「ね? リンはかっこいいでしょ?」
「うん。ずっとそうしてればいいのに」
「リンにも事情ってのがあるんだよ」

そう会話する2人にやっと俺は自分の失態に気がついた。

「あ! えぇっと……はぁ~……庶務」
「はい」
「内緒にしてくれるか?」

庶務は驚いた顔をしてそれからふわりと笑った。

「いいよ」
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