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44 惹かれる
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仮面舞踏会当日になり、ルーナストはきっちりと夜会着に身を包み、前もって皇帝から渡されていた招待状を門番に渡した。
会場に入ると仮面をつけた紳士淑女が大勢いる。
今回、接触しなければならない人物は1人しか指定されいない。
そもそも仮面舞踏会で特定の人物を探すのは至難の技だが、今回指定されたその人物はかなり大柄な女性らしい。一目見れば分かるはずと伝えられての参加だった。
ルーナストは不自然にならない程度にその人物を探しつつ、数人の女性をダンスに誘って踊った。会場の入り口のあたりがざわついたので見てみると探していた人物がいた。
確かに大きな女性だ。
肌を隠すようなドレスだが、服の上からでも筋肉質であることが分かるほどだ。
その女性はちょうど令嬢と踊り終えたルーナストのもとにやってきた。
「私と、踊っていただけませんか」
やや緊張した面持ちの声は、どこか聞き覚えのあるような声に聞こえた。
「もちろんです。貴女のような方と踊る機会を与えていただけるなんて光栄です」
手を差し出し、微笑みながらそう答えた。
目的の人物に話しかける手間が省けたと、それくらいしか感じていなかった。
自分より背の高い女性には会ったことがなかったので、うまくリードできるか不安だったが、なんとかその大きな体を支え、踊った。
女性はダンスは不慣れなようで、動きはぎこちなかったが、一生懸命な様はルーナストの目には愛らしく映った。
「動いたら喉が乾きました。一緒にどうでしょうか」
「ええ、もちろんです」
誘うと乗ってくれたので、ルーナストは女性をエスコートして近くのベンチに座ってもらい、飲み物を取りに行き、女性に渡した。
「ありがとうございます」
「いえ」
それからルーナストと女性は仮面舞踏会が終わるまで楽しく話した。
今当たっている任務で、女性から情報を得るために話しているというのに、楽しくて仕方がなくルーナストは自分でも自覚するほど、久々に心から笑った気がした。
聞けば女性も鍛えるのが趣味だということで話も合い、控えめに笑う口元も、朗らかに笑う口元も好ましく思えて仕方がなかった。
仮面舞踏会は素性を隠すのが基本だ。
名前も名乗らないか、仮名を名乗る。
その上、あの女性の仮面は目の部分にも網が張ってあり、目の色すらも見えなかった。
けれど、なぜだろう。あの女性の名前も聞けなかったことをとても後悔していた。
その上、話に夢中になりすぎて任務として聞き出したい情報を引き出すために誘導することもできず、パーティーが終わった後、ルーナストは自分の不甲斐なさに項垂れた。
あの大柄の女性の事を思い出すと胸がドキドキする。
この感覚は初めてじゃなかった。
ベルガリュードに感じた気持ちと同じだと思った。
(名前も顔も知らないけど、もう一度会えるかもわからないけど、あの女性に惹かれてるんだ)
たかが3ヶ月。されど3ヶ月。
ベルガリュードが婚約を解消してすぐに本命の女性が出来たように、ルーナストも3ヶ月が経ってやっと他の人を好きになることができたのだ。この恋がうまく行くかとか、相手が自分と同じ女性であることは、気にならなかった。そもそも、女性の方はルーナストを男性だと思っているし、ルーナストも動くつもりはない。ただ、また会えたら嬉しい。ルーナストの中にあるのはそれだけだった。
会場に入ると仮面をつけた紳士淑女が大勢いる。
今回、接触しなければならない人物は1人しか指定されいない。
そもそも仮面舞踏会で特定の人物を探すのは至難の技だが、今回指定されたその人物はかなり大柄な女性らしい。一目見れば分かるはずと伝えられての参加だった。
ルーナストは不自然にならない程度にその人物を探しつつ、数人の女性をダンスに誘って踊った。会場の入り口のあたりがざわついたので見てみると探していた人物がいた。
確かに大きな女性だ。
肌を隠すようなドレスだが、服の上からでも筋肉質であることが分かるほどだ。
その女性はちょうど令嬢と踊り終えたルーナストのもとにやってきた。
「私と、踊っていただけませんか」
やや緊張した面持ちの声は、どこか聞き覚えのあるような声に聞こえた。
「もちろんです。貴女のような方と踊る機会を与えていただけるなんて光栄です」
手を差し出し、微笑みながらそう答えた。
目的の人物に話しかける手間が省けたと、それくらいしか感じていなかった。
自分より背の高い女性には会ったことがなかったので、うまくリードできるか不安だったが、なんとかその大きな体を支え、踊った。
女性はダンスは不慣れなようで、動きはぎこちなかったが、一生懸命な様はルーナストの目には愛らしく映った。
「動いたら喉が乾きました。一緒にどうでしょうか」
「ええ、もちろんです」
誘うと乗ってくれたので、ルーナストは女性をエスコートして近くのベンチに座ってもらい、飲み物を取りに行き、女性に渡した。
「ありがとうございます」
「いえ」
それからルーナストと女性は仮面舞踏会が終わるまで楽しく話した。
今当たっている任務で、女性から情報を得るために話しているというのに、楽しくて仕方がなくルーナストは自分でも自覚するほど、久々に心から笑った気がした。
聞けば女性も鍛えるのが趣味だということで話も合い、控えめに笑う口元も、朗らかに笑う口元も好ましく思えて仕方がなかった。
仮面舞踏会は素性を隠すのが基本だ。
名前も名乗らないか、仮名を名乗る。
その上、あの女性の仮面は目の部分にも網が張ってあり、目の色すらも見えなかった。
けれど、なぜだろう。あの女性の名前も聞けなかったことをとても後悔していた。
その上、話に夢中になりすぎて任務として聞き出したい情報を引き出すために誘導することもできず、パーティーが終わった後、ルーナストは自分の不甲斐なさに項垂れた。
あの大柄の女性の事を思い出すと胸がドキドキする。
この感覚は初めてじゃなかった。
ベルガリュードに感じた気持ちと同じだと思った。
(名前も顔も知らないけど、もう一度会えるかもわからないけど、あの女性に惹かれてるんだ)
たかが3ヶ月。されど3ヶ月。
ベルガリュードが婚約を解消してすぐに本命の女性が出来たように、ルーナストも3ヶ月が経ってやっと他の人を好きになることができたのだ。この恋がうまく行くかとか、相手が自分と同じ女性であることは、気にならなかった。そもそも、女性の方はルーナストを男性だと思っているし、ルーナストも動くつもりはない。ただ、また会えたら嬉しい。ルーナストの中にあるのはそれだけだった。
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