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41 特殊部隊に
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幸いにもルーナストがカンドルニアの王国軍に所属していることで、ルーナストのことが機密事項になっており、2人の婚約は一部の人しか知らない。
その数少ない者の中には、帝国の宰相もいたが、顔合わせの時にルーナストを勝手に追い返したことで今は牢屋に入っているし、結果的にルーナストに媚薬を盛ったセリアとソフィは、都合が悪いルーナストの存在を他言していないだろうし、これからもしないだろう。
ルーナストには大好きなベルガリュードと結婚ができないことに加え、もう一つ問題がある。
「私も、私の侍従も帝国軍に入れてもらえる約束だったのですが、それは」
目の前でホッとした顔をして紅茶を飲んでいたグランツェに尋ねると、驚いた顔をした。
「なるほど。帝国軍は実力主義だ。だが、基本的には帝国に国籍のある者だけが入隊できる」
「はい」
「ベルガリュードと結婚できれば国籍が取れる手筈だったろうが……。これは俺の責任だな。では、皇帝の権限を持って、ルーナスト嬢とその侍従を帝国軍の特殊部隊に歓迎しよう」
「特殊部隊、ですか?」
「ああ。裏の仕事をしてもらうのが特殊部隊だ。いくら円満な婚約解消だとしても、君もベルガリュードも顔を合わせることがあれば気まずいだろう。特殊部隊ならまず顔を合わせることはないし、万が一の場合でも、特殊部隊の人間には常に面をつけることを義務付けているから、ルーナスト嬢の存在に気がつくことはないだろう」
「なるほど」
確かに、その提案はルーナストにとって魅力的だった。
婚約解消をしたとしても、ルーナストはベルガリュードのことが好きだし、尊敬し憧れる上司であることには変わらない。
たとえベルガリュードに関わることがなくなったとしても、陰ながらでも役に立てるのならそれもまた良いだろうと考えた。
けれど、ショーンは違う。
「私はその条件を飲みます。ですが、侍従には意思を確認して参りますので、侍従の方は保留にさせてください。彼とならば閣下は気まずくはならないでしょうし」
「そうか。相分かった」
グランツェは満足そうに頷いた。
ルーナストは急ぎグランツェの前から辞してブラクルト辺境伯領に戻った。
そうして、ショーンに全て説明した。
「んー、そっか。でも、閣下はルーナストのこと好きだと思うけどな」
「……うん。私もそう思っていたし、なんなら今だってそうだったら良いのにって思ってるけど」
閣下の言葉を思い出すと、ルーナストはじんわりと心が温まる。
『鉄アレイや剣をプレゼントすれば嬉しそうにするルーナストが。訓練を見てやるだけで喜ぶルーナストが。努力家なルーナストが好きだ』
(本当、この先そんなことを言ってくれる人なんていないだろうなぁ)
「婚約解消の返事をしちゃう前に、閣下に相談した方が良かったんじゃないの?」
ショーンにもっともな事を指摘され、ルーナストは肩を落とした。
「けど、そんな婚約解消なんて話、普通私よりも先に閣下にしているはずだよね。だって閣下は陛下の弟だよ。つまりは閣下の方はきっと……」
「それは聞いてみないと分からないじゃん」
「まぁ、そうだけど。とにかくもう解消は承諾しちゃったし、私は陰ながら閣下をお支えすることに決めたの。ショーンはどうする? 表の方に居ても閣下と気まずい思いはしないでしょ?」
「僕もルーナストと行くよ。主がいないなら表に居たって意味なんかないんだから」
「……そっか。ありがとう」
それから、ショーンも特殊部隊で納得した旨を記した手紙をすぐにグランツェに送った。
その数少ない者の中には、帝国の宰相もいたが、顔合わせの時にルーナストを勝手に追い返したことで今は牢屋に入っているし、結果的にルーナストに媚薬を盛ったセリアとソフィは、都合が悪いルーナストの存在を他言していないだろうし、これからもしないだろう。
ルーナストには大好きなベルガリュードと結婚ができないことに加え、もう一つ問題がある。
「私も、私の侍従も帝国軍に入れてもらえる約束だったのですが、それは」
目の前でホッとした顔をして紅茶を飲んでいたグランツェに尋ねると、驚いた顔をした。
「なるほど。帝国軍は実力主義だ。だが、基本的には帝国に国籍のある者だけが入隊できる」
「はい」
「ベルガリュードと結婚できれば国籍が取れる手筈だったろうが……。これは俺の責任だな。では、皇帝の権限を持って、ルーナスト嬢とその侍従を帝国軍の特殊部隊に歓迎しよう」
「特殊部隊、ですか?」
「ああ。裏の仕事をしてもらうのが特殊部隊だ。いくら円満な婚約解消だとしても、君もベルガリュードも顔を合わせることがあれば気まずいだろう。特殊部隊ならまず顔を合わせることはないし、万が一の場合でも、特殊部隊の人間には常に面をつけることを義務付けているから、ルーナスト嬢の存在に気がつくことはないだろう」
「なるほど」
確かに、その提案はルーナストにとって魅力的だった。
婚約解消をしたとしても、ルーナストはベルガリュードのことが好きだし、尊敬し憧れる上司であることには変わらない。
たとえベルガリュードに関わることがなくなったとしても、陰ながらでも役に立てるのならそれもまた良いだろうと考えた。
けれど、ショーンは違う。
「私はその条件を飲みます。ですが、侍従には意思を確認して参りますので、侍従の方は保留にさせてください。彼とならば閣下は気まずくはならないでしょうし」
「そうか。相分かった」
グランツェは満足そうに頷いた。
ルーナストは急ぎグランツェの前から辞してブラクルト辺境伯領に戻った。
そうして、ショーンに全て説明した。
「んー、そっか。でも、閣下はルーナストのこと好きだと思うけどな」
「……うん。私もそう思っていたし、なんなら今だってそうだったら良いのにって思ってるけど」
閣下の言葉を思い出すと、ルーナストはじんわりと心が温まる。
『鉄アレイや剣をプレゼントすれば嬉しそうにするルーナストが。訓練を見てやるだけで喜ぶルーナストが。努力家なルーナストが好きだ』
(本当、この先そんなことを言ってくれる人なんていないだろうなぁ)
「婚約解消の返事をしちゃう前に、閣下に相談した方が良かったんじゃないの?」
ショーンにもっともな事を指摘され、ルーナストは肩を落とした。
「けど、そんな婚約解消なんて話、普通私よりも先に閣下にしているはずだよね。だって閣下は陛下の弟だよ。つまりは閣下の方はきっと……」
「それは聞いてみないと分からないじゃん」
「まぁ、そうだけど。とにかくもう解消は承諾しちゃったし、私は陰ながら閣下をお支えすることに決めたの。ショーンはどうする? 表の方に居ても閣下と気まずい思いはしないでしょ?」
「僕もルーナストと行くよ。主がいないなら表に居たって意味なんかないんだから」
「……そっか。ありがとう」
それから、ショーンも特殊部隊で納得した旨を記した手紙をすぐにグランツェに送った。
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