30 / 49
30 外出許可
しおりを挟む
表向きは、ルーナストもベルガリュードも何も変わらず、ただ、肩書きだけが婚約者となり1ヶ月が経った。ベルガリュードは兄のグランツェが皇帝になるにあたり様々な仕事が増え、忙しそうにしていたが、それもある程度落ち着きを見せ、やっとゆっくりと訓練を見てもらう時間ができるようになった。
カンッ、キンッ!!
「訓練に励んでいるようだな。以前よりも腕が上がっている」
「本当ですか! ありがとうございます!」
剣を交えながら褒められ、ルーナストは素直に喜んだ。
トーナメント1位の願いで、ベルガリュードとの一戦を望んだルーナストだったが、それは3ヶ月の訓練が終わるのを待つことなくこうして何度か叶えられている……とも言える。
けれど現在の訓練では剣なら剣だけ、魔法なら魔法だけなど、やや実戦向きではない方法で戦っているので、手放しに喜んではいなかった。
キンッ!! カンカンッ! カッ!
「分かっているだろうが攻めてばかりでは、隙を作るぞ」
「わっ」
スッと身をよけられ、ベルガリュードとの久々の手合わせが楽しくなりガツガツと突っ込んでいたルーナストは、あえなくバランスを崩し、前のめりに倒れ込みそうになった。
それをひょいとベルガリュードが支える。
「ルート、お前重くなったな」
「えっ! 本当ですか!? やったぁ」
筋肉が付きやすいタイプではないので、重くなったと言われルーナストは両手をあげて喜んだ。
そんな2人を見て横で手合わせをしていたショーンとロイは、呆れたような反応を示していた。
「普通はあんなこと言われたら怒るよね」
「そうだな。あの2人は少しずれてるからな」
「でも歳の離れた男兄弟って感じだよね」
「そうだな」
ルーナストたちの会話が、ショーンたちに聞こえているということは、その逆もしかりだ。
ルーナストは剣を打ちながらベルガリュードに、にんまりと笑いかけた。
「私は閣下の弟に見えるみたいです」
「嬉しそうだな」
「兄があのドラスティールの鬼神なんて、学校で自慢できるネタです」
「そうか」
ベルガリュードはそう言ってかすかに笑った。
その後ベルガリュードがまた帝国から呼び出され午後からは自主トレになった。
走り込みでもしようかとそのまま訓練場に残り、敷地内を柵に沿って走っていると、リンローズがまた来ていた。今日はちゃんと護衛を連れているようだったので、ルーナストは手を振るリンローズをスルーして走ろうとした。
「ちょっと待ってくださいっ! ねぇ!」
近くを走るたびに大声で呼び掛けられ、3周目で諦め答えた。
「なんですか」
「外出許可が下りるようになったって聞きました!」
「ええ。まぁ、許可をもらうのに2日はかかるそうですが」
ルーナストは特に許可をもらうつもりはなかったので、あまり興味もなくうろ覚えだったが、確か食堂でそんな話を聞いたことを思い出しながら答えた。
「そうなんですね! 私、ルート様とぜひゆっくりお話したいんです! ぜひ2日後に外出許可を取って私の家に遊びにいらしてください!」
「いえ、私は」
「ねぇ、お願い。絶対来たら楽しいんですから! ルート様が召し上がったことのないような料理やお菓子もたくさん用意して待ってますから! 絶対待ってますからね!!」
「あ……ちょっと」
リンローズは強引にそう言って去っていってしまった。
決して同意したわけでも、約束したわけでもない。
だが、なんとなく無視するのも忍びなく、ルーナストは不本意ながらも外出許可をとりつけた。
カンッ、キンッ!!
「訓練に励んでいるようだな。以前よりも腕が上がっている」
「本当ですか! ありがとうございます!」
剣を交えながら褒められ、ルーナストは素直に喜んだ。
トーナメント1位の願いで、ベルガリュードとの一戦を望んだルーナストだったが、それは3ヶ月の訓練が終わるのを待つことなくこうして何度か叶えられている……とも言える。
けれど現在の訓練では剣なら剣だけ、魔法なら魔法だけなど、やや実戦向きではない方法で戦っているので、手放しに喜んではいなかった。
キンッ!! カンカンッ! カッ!
「分かっているだろうが攻めてばかりでは、隙を作るぞ」
「わっ」
スッと身をよけられ、ベルガリュードとの久々の手合わせが楽しくなりガツガツと突っ込んでいたルーナストは、あえなくバランスを崩し、前のめりに倒れ込みそうになった。
それをひょいとベルガリュードが支える。
「ルート、お前重くなったな」
「えっ! 本当ですか!? やったぁ」
筋肉が付きやすいタイプではないので、重くなったと言われルーナストは両手をあげて喜んだ。
そんな2人を見て横で手合わせをしていたショーンとロイは、呆れたような反応を示していた。
「普通はあんなこと言われたら怒るよね」
「そうだな。あの2人は少しずれてるからな」
「でも歳の離れた男兄弟って感じだよね」
「そうだな」
ルーナストたちの会話が、ショーンたちに聞こえているということは、その逆もしかりだ。
ルーナストは剣を打ちながらベルガリュードに、にんまりと笑いかけた。
「私は閣下の弟に見えるみたいです」
「嬉しそうだな」
「兄があのドラスティールの鬼神なんて、学校で自慢できるネタです」
「そうか」
ベルガリュードはそう言ってかすかに笑った。
その後ベルガリュードがまた帝国から呼び出され午後からは自主トレになった。
走り込みでもしようかとそのまま訓練場に残り、敷地内を柵に沿って走っていると、リンローズがまた来ていた。今日はちゃんと護衛を連れているようだったので、ルーナストは手を振るリンローズをスルーして走ろうとした。
「ちょっと待ってくださいっ! ねぇ!」
近くを走るたびに大声で呼び掛けられ、3周目で諦め答えた。
「なんですか」
「外出許可が下りるようになったって聞きました!」
「ええ。まぁ、許可をもらうのに2日はかかるそうですが」
ルーナストは特に許可をもらうつもりはなかったので、あまり興味もなくうろ覚えだったが、確か食堂でそんな話を聞いたことを思い出しながら答えた。
「そうなんですね! 私、ルート様とぜひゆっくりお話したいんです! ぜひ2日後に外出許可を取って私の家に遊びにいらしてください!」
「いえ、私は」
「ねぇ、お願い。絶対来たら楽しいんですから! ルート様が召し上がったことのないような料理やお菓子もたくさん用意して待ってますから! 絶対待ってますからね!!」
「あ……ちょっと」
リンローズは強引にそう言って去っていってしまった。
決して同意したわけでも、約束したわけでもない。
だが、なんとなく無視するのも忍びなく、ルーナストは不本意ながらも外出許可をとりつけた。
0
お気に入りに追加
375
あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる