チートな男装令嬢は婚約破棄されても気にしない

いちみやりょう

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30 外出許可

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表向きは、ルーナストもベルガリュードも何も変わらず、ただ、肩書きだけが婚約者となり1ヶ月が経った。ベルガリュードは兄のグランツェが皇帝になるにあたり様々な仕事が増え、忙しそうにしていたが、それもある程度落ち着きを見せ、やっとゆっくりと訓練を見てもらう時間ができるようになった。

カンッ、キンッ!!

「訓練に励んでいるようだな。以前よりも腕が上がっている」
「本当ですか! ありがとうございます!」

剣を交えながら褒められ、ルーナストは素直に喜んだ。
トーナメント1位の願いで、ベルガリュードとの一戦を望んだルーナストだったが、それは3ヶ月の訓練が終わるのを待つことなくこうして何度か叶えられている……とも言える。
けれど現在の訓練では剣なら剣だけ、魔法なら魔法だけなど、やや実戦向きではない方法で戦っているので、手放しに喜んではいなかった。

キンッ!! カンカンッ! カッ!

「分かっているだろうが攻めてばかりでは、隙を作るぞ」
「わっ」

スッと身をよけられ、ベルガリュードとの久々の手合わせが楽しくなりガツガツと突っ込んでいたルーナストは、あえなくバランスを崩し、前のめりに倒れ込みそうになった。
それをひょいとベルガリュードが支える。

「ルート、お前重くなったな」
「えっ! 本当ですか!? やったぁ」

筋肉が付きやすいタイプではないので、重くなったと言われルーナストは両手をあげて喜んだ。

そんな2人を見て横で手合わせをしていたショーンとロイは、呆れたような反応を示していた。

「普通はあんなこと言われたら怒るよね」
「そうだな。あの2人は少しずれてるからな」
「でも歳の離れた男兄弟って感じだよね」
「そうだな」

ルーナストたちの会話が、ショーンたちに聞こえているということは、その逆もしかりだ。
ルーナストは剣を打ちながらベルガリュードに、にんまりと笑いかけた。

「私は閣下の弟に見えるみたいです」
「嬉しそうだな」
「兄があのドラスティールの鬼神なんて、学校で自慢できるネタです」
「そうか」

ベルガリュードはそう言ってかすかに笑った。

その後ベルガリュードがまた帝国から呼び出され午後からは自主トレになった。
走り込みでもしようかとそのまま訓練場に残り、敷地内を柵に沿って走っていると、リンローズがまた来ていた。今日はちゃんと護衛を連れているようだったので、ルーナストは手を振るリンローズをスルーして走ろうとした。

「ちょっと待ってくださいっ! ねぇ!」

近くを走るたびに大声で呼び掛けられ、3周目で諦め答えた。

「なんですか」
「外出許可が下りるようになったって聞きました!」
「ええ。まぁ、許可をもらうのに2日はかかるそうですが」

ルーナストは特に許可をもらうつもりはなかったので、あまり興味もなくうろ覚えだったが、確か食堂でそんな話を聞いたことを思い出しながら答えた。

「そうなんですね! 私、ルート様とぜひゆっくりお話したいんです! ぜひ2日後に外出許可を取って私の家に遊びにいらしてください!」
「いえ、私は」
「ねぇ、お願い。絶対来たら楽しいんですから! ルート様が召し上がったことのないような料理やお菓子もたくさん用意して待ってますから! 絶対待ってますからね!!」
「あ……ちょっと」

リンローズは強引にそう言って去っていってしまった。
決して同意したわけでも、約束したわけでもない。
だが、なんとなく無視するのも忍びなく、ルーナストは不本意ながらも外出許可をとりつけた。

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