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69:訓練を見つめる
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「フランツ様。せっかく来てくださった奥様候補のバトラル様に向かって、そのようなことを言ってはいけません」
「っ、うるさい!! オットマーもオットマーだ! 僕を子供扱いするな!」
「そのようなつもりはありませんが。いつまでもそのような態度を取られるようでは、とても大人扱いなどできないでしょう」
オットマーは侍従というよりもフランツの世話係みたいだ。
癇癪を起こしている子供相手に、俺もどうこう言うつもりはない。小さく息を吐いて、両手をふりながら口を開いた。
「あー、いいって、いいって。わかった。しばらくここに滞在させてもらうのは変わらないけど、極力顔を見せないようにするから」
「なんのつもりだ!! 聞き分けがいいふりをしても無駄だぞ!! どうせ、オメガなんて……。良いからここから出ていけ!!」
無理やりと言う感じで執務室から出された俺は、執務室の外で控えていた侍従の1人に案内してもらい部屋に向かった。すれ違う使用人たちは俺が当主に歓迎されていないと早くも気がついているのか、敵意のこもった目こそしていないものの、よそよそしくすぐに目を逸らしてしまう。ここまで歓迎ムードじゃないのならば帰った方が良いのだろうかとも思うが、すぐすぐ帰るには馬車があまりに体力を削りすぎる。お腹の中にはルカとの子がいるし、流石にそこまでの無理はしたくない。
まぁそもそも歓迎ムードじゃない場所の方が、ドマゾ心を満たせるかもしれない。
最近は、あの夫たちが気をつかって俺好みのプレイをしてくれてはいるけれど、やはり元々のバトラルのエンドを考えると陵辱度合いは低いから、この辺境伯領で屈強な男たち相手にムフフな妄想をして時間を潰そう。
その日の夕飯は1人で部屋でとり、翌日の朝食も1人でとった。質素な食事とかではなく、普通に新鮮で美味しい食事だ。まぁ、腐っても皇太子や、公爵、侯爵の妻の俺にそう言った冷遇はできないのかもしれない。
けれど、衣食住以外を充実させる気はないのか、食事の時以外、部屋には誰も訪れないので、俺は目立たないようにしながら屋敷の中を探索することにした。
辺境伯領は、隣国との要であるからか、かなり大きな屋敷で、要塞などもいかつい。すれ違う軍人たちもやはり想像通り屈強で、彼らにサンドイッチの具のように挟まれてガツガツと揺さぶられる想像をしながら歩くのは、なんとも楽しかった。
やはり帝都の騎士や軍人たちとは表情や所作、体の大きさが違う。荒々しく、猛々しい。体から湯気が出てきそうな勢いだ。
「次!! 隙だらけだ!! 腰が引けてるぞ!!」
怒号が聞こえ、ちょうど通りかかっていた廊下の窓の下を覗くと、オットマーが軍服姿で兵に指導をしているところのようだ。木刀で向かってくる兵を、オットマーが少ない動作でいなしていく。やはり元軍人だけあって、軍服が様になってる。
「あ……」
ふと、向かいの建物の3階から俺と同じように訓練を見下ろしている人がいることに気がついた。
熱心に見入っているその人は、フランツだ。
フランツは向かいの建物の2階の廊下にいる俺には全く気がつくことなく、一心に訓練を見ているのだ。
「っ、うるさい!! オットマーもオットマーだ! 僕を子供扱いするな!」
「そのようなつもりはありませんが。いつまでもそのような態度を取られるようでは、とても大人扱いなどできないでしょう」
オットマーは侍従というよりもフランツの世話係みたいだ。
癇癪を起こしている子供相手に、俺もどうこう言うつもりはない。小さく息を吐いて、両手をふりながら口を開いた。
「あー、いいって、いいって。わかった。しばらくここに滞在させてもらうのは変わらないけど、極力顔を見せないようにするから」
「なんのつもりだ!! 聞き分けがいいふりをしても無駄だぞ!! どうせ、オメガなんて……。良いからここから出ていけ!!」
無理やりと言う感じで執務室から出された俺は、執務室の外で控えていた侍従の1人に案内してもらい部屋に向かった。すれ違う使用人たちは俺が当主に歓迎されていないと早くも気がついているのか、敵意のこもった目こそしていないものの、よそよそしくすぐに目を逸らしてしまう。ここまで歓迎ムードじゃないのならば帰った方が良いのだろうかとも思うが、すぐすぐ帰るには馬車があまりに体力を削りすぎる。お腹の中にはルカとの子がいるし、流石にそこまでの無理はしたくない。
まぁそもそも歓迎ムードじゃない場所の方が、ドマゾ心を満たせるかもしれない。
最近は、あの夫たちが気をつかって俺好みのプレイをしてくれてはいるけれど、やはり元々のバトラルのエンドを考えると陵辱度合いは低いから、この辺境伯領で屈強な男たち相手にムフフな妄想をして時間を潰そう。
その日の夕飯は1人で部屋でとり、翌日の朝食も1人でとった。質素な食事とかではなく、普通に新鮮で美味しい食事だ。まぁ、腐っても皇太子や、公爵、侯爵の妻の俺にそう言った冷遇はできないのかもしれない。
けれど、衣食住以外を充実させる気はないのか、食事の時以外、部屋には誰も訪れないので、俺は目立たないようにしながら屋敷の中を探索することにした。
辺境伯領は、隣国との要であるからか、かなり大きな屋敷で、要塞などもいかつい。すれ違う軍人たちもやはり想像通り屈強で、彼らにサンドイッチの具のように挟まれてガツガツと揺さぶられる想像をしながら歩くのは、なんとも楽しかった。
やはり帝都の騎士や軍人たちとは表情や所作、体の大きさが違う。荒々しく、猛々しい。体から湯気が出てきそうな勢いだ。
「次!! 隙だらけだ!! 腰が引けてるぞ!!」
怒号が聞こえ、ちょうど通りかかっていた廊下の窓の下を覗くと、オットマーが軍服姿で兵に指導をしているところのようだ。木刀で向かってくる兵を、オットマーが少ない動作でいなしていく。やはり元軍人だけあって、軍服が様になってる。
「あ……」
ふと、向かいの建物の3階から俺と同じように訓練を見下ろしている人がいることに気がついた。
熱心に見入っているその人は、フランツだ。
フランツは向かいの建物の2階の廊下にいる俺には全く気がつくことなく、一心に訓練を見ているのだ。
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