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54:学校

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「おはよう。バトラル」
「おはよう」

朝、登校するとヨハイドが話しかけてきて、俺が返事をすると目を丸くした。

「声かすれてるな。やっぱさすがのバトラルも相当きつかったんじゃないの?」

確かに全身疲れているが、俺が望むプレイを受けてからずっと、その時のことを何度も思い返し反芻していた俺は、ほおっとため息をついた。

「いやあ。さすがにあんなのは初めての体験だったけど……めっちゃ良かったよ。最高の誕生日プレゼントだった。ありがとう」
「ちぇ。やっぱ、バトラルはそうなんだ。俺はドMは名乗れないわ」

ヨハイドは悔しそうに肩をすくめた。

「あ、ヨハイドおはようございます。何日も休んでましたから、心配していたんですよ」
「コリン、おはよう。心配かけてごめん。あと、最高の誕生日プレゼントをありがとう」
「本当にあれで喜ぶのか不安だったけど、喜んでくれたなら嬉しいです」

コリンはニコニコとそう言った。

「いやぁ、一時はもう学園にも来られないかと思ったけどね」
「やっぱりアルファの怒りを買うと相当大変だよな。しかも俺と違ってバトラルは2人分だっていうのに、ケロッとしやがって」
「別にケロッとはしてないけど……。あ、そうだ。ここだけの話、俺、妊娠したんだよ」
「「ええぇ!?」」
「ちょ、静かに。まだ、正式には発表できないんだから」

教室中が振り向くほど大きな叫び声をあげた2人を慌てて止めた。
妊娠したと公にいうのは、いろいろな事情で後になるらしいが、2人には先に伝えても良いとクライブからの許可が下りている。

「そ、そっか。ごめん。いや、でもバトラルが……、なんだかバトラルが親って不安だな」
「失礼だな。だけど、そんな失礼なことを言うヨハイドに、特別に教えてあげるけど」

声を潜めながらそう言うと、ヨハイドは顔をしかめた。

「なんか、あんま聞かない方が良いことっぽいな」
「そんなことないよ。あのね、妊娠した時、めっちゃ……めっちゃ、それはもう言葉にはできないくらい、半端なかったよ」
「な、何が」

ヨハイドはゴクリと唾を飲み込んで、俺の次の言葉を待っている。

「全部が。だから、ヨハイドがいつになるか分からないけど、とにかくすごいってことだけ覚えておいてよ」
「うぅ……やっぱ聞かなきゃ良かった。このバトラルがそう言うんだから、そりゃもう俺になんて耐えられる訳がないのに」
「なんだよ、ヨハイド。ドMじゃないにしてもMではあるんだろ。そんなんじゃMすら名乗れないぞ」
「そんな……」

絶望の声を上げるヨハイドの横から、コリンが口を挟んできた。

「バトラルとヨハイドにとってMって名誉なんですか?」
「Mの人生は楽しいんだぞ。コリンもこちら側に来れば分かるさ」
「いや、僕は遠慮しておきます……」

コリンがドン引きの声でそう応えた横で、ヨハイドが「あ゛ぁ」と絶望の声を上げた。

「逃げたい。俺のところは子供は卒業してからってことになってるけど……。正直、逃げたい」
「でも、逃げたりなんかしたら、二度と外には出してもらえなくなるんじゃない? まぁ、それもそれで楽しそうだけど」
「ぅぅう」

頭を抱えるヨハイドの姿は、もうすっかりドMどころかMとも言えない姿になってしまっていた。

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