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11:看病
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ふわりふわりと意識が浮上し、体の尋常じゃないほどの疲れを感じた。背中の感触的にふかふかの場所に寝かされているようだが、鉛のように体が重く億劫だ。
『まだ目が覚めないのか』
バイロンの声が近くで聞こえた。
『バトラルは私が声をかけた段階で意識が朦朧としていたんだ。もう少し放っておいたら死んでいたかもしれない。それなのに、そんなすぐ目が覚めるはずがないだろう』
クライブが必死に声を抑えるように応えている。
『こんなヒョロイ体の子供が、まさか私に言われた通りに走り続けているなどと思うわけがないだろう。どこかで適当にサボっていると思っていたんだ』
『バトラルは小さいが、ちゃんとした紳士なんだ。サボったりなどするわけがない』
『随分と気に入っている様子だな』
『私が望んで婚約者にしたのだから、気に入っているのは当たり前だろう。それにバトラルがヒョロイのは、バトラルのせいじゃない。彼がオメガ性というのもあるかもしれないが、それにしても小さいだろう』
人が寝ているからと思って好き勝手に言いやがって。とクライブの言葉にムッとした。確かにバトラルの体は小さいが、多少は鍛えているのだしそこまで言われるほど小さいつもりはなかった。けれどもクライブの言葉にバイロンも小さくうなり返事をした。
『まぁ、小さいな。だから剣術など遊び半分で習いたいのかと思ったくらいだ』
『バトラルは真面目だよ。私がバイロンはスパルタだと教えても、目を輝かせて一緒に学びたいと言っていたんだ。だが、私は心配している点が1つある。バトラルが家でまともに食べさせてもらっているかが心配なんだ』
スパルタだと聞いて目を輝かせたのは、決して俺が真面目だからじゃないが、それよりも家で食べさせてもらえていないと思われていることにびっくりした。バトラルは確かに体罰を伴う躾をされていたが食事は普通に出ていたはずだ。今は特にタンパク質を多く摂れるようにしっかり料理人と話し合っているので、ひょっとしたらトレーニーとしてはクライブよりも良い食事を摂っている可能性もある。それでも体が大きくならないのだから、これはもうそういう体質なのだろう。
『なに?』
バイロンの不愉快そうな声が部屋の中に響いた。
『そうじゃないと、こんなに小さい理由がない』
『虐待……ということか』
『その可能性を考えている。まだ調べはついていないが、疑わしい間は、彼をなるべく家から遠ざけたいんだ』
『なるほど』
俺の頭の上に乗せておいてくれているらしい濡れタオルが誰かの手によって交換された。
誰かが部屋を出て行った音が聞こえ、うっすらと目を開くとクライブと目があった。
「起きたのか。ああ、起きないで。水を飲めるか?」
起き上がろうとした俺の体は、簡単にベットの中に押し戻され、代わりにクライブの手によって顔の前に吸飲みが差し出された。確かに喉が乾いていたので、抵抗もなくそれを受け入れゴクリと飲み込むとクライブはフッと目を緩ませて俺の頭を撫でつけた。
「ゆっくり飲め」
「もう、大丈夫です。ありがとうございます」
「ああ」
クライブが微笑んで頷いた時、ドアがノックされ返事をする前にドアが開いた。
「っ、起きたのか」
部屋に入ってきたのは、先ほどまでここにいたはずのバイロンで、手にはお盆を持っていた。
「はい。ご迷惑をおかけして、すみませんでした」
そう伝えるとバイロンは俺のそばまでスッと寄ってきて、クライブがいる方とは逆のベットの脇に片膝をついた。
「謝るのは私のほうだ。私の本業は軍人だが、それでも子供を預かることを了承した身で、教官として私のやり方はあまりにも身勝手で無責任だった。すまない」
「いえ、そんな」
本当に、俺が気持ち良くなっちゃって走り続けちゃっただけだし、そんな悲痛な顔で謝られたらどうして良いか分からなくなる。
「とりあえず、気分が悪くなければこれを食べてくれ」
「ありがとうございます」
差し出されたのは野菜や柔らかそうな鶏肉みたいなものがたくさん入ったスープのようなものだった。それをクライブが受け取り、俺に向かってにっこりと笑った。
「バトラル、食べ辛いだろう? 私が手伝おう」
「え?」
「ほら、あーん」
「……あーん……」
求められれば基本的にはイエスというのが性分の俺は、吸飲みのとき同様クライブから差し出されるままにスープを食べさせてもらった。
「んんっ、うまいか?」
「はい……あ、ダッシュライド公爵閣下、美味しいです。ありがとうございます」
「ああ」
野菜も肉も食べやすいようにか、かなり柔らかく煮込んであり、咀嚼するのもかなり楽で、とても美味しかった。
「よかったな」
「はい。次は、倒れないように気をつけます」
「次から走り込みは3人でしかやらない」
バイロンの言葉に、クライブは大きく頷いた。
「私もそれに賛成だ。次からは一緒に走ろうな、バトラル」
「え、でも僕と走ると足手まといじゃ?」
「そんなことはない」
「そうなんですか?」
「ああ」
断言するクライブに聞き返しても、クライブも、バイロンも意見を曲げることはなかったので、次の訓練からは走り込みは3人で行うことになりそうだ。
『まだ目が覚めないのか』
バイロンの声が近くで聞こえた。
『バトラルは私が声をかけた段階で意識が朦朧としていたんだ。もう少し放っておいたら死んでいたかもしれない。それなのに、そんなすぐ目が覚めるはずがないだろう』
クライブが必死に声を抑えるように応えている。
『こんなヒョロイ体の子供が、まさか私に言われた通りに走り続けているなどと思うわけがないだろう。どこかで適当にサボっていると思っていたんだ』
『バトラルは小さいが、ちゃんとした紳士なんだ。サボったりなどするわけがない』
『随分と気に入っている様子だな』
『私が望んで婚約者にしたのだから、気に入っているのは当たり前だろう。それにバトラルがヒョロイのは、バトラルのせいじゃない。彼がオメガ性というのもあるかもしれないが、それにしても小さいだろう』
人が寝ているからと思って好き勝手に言いやがって。とクライブの言葉にムッとした。確かにバトラルの体は小さいが、多少は鍛えているのだしそこまで言われるほど小さいつもりはなかった。けれどもクライブの言葉にバイロンも小さくうなり返事をした。
『まぁ、小さいな。だから剣術など遊び半分で習いたいのかと思ったくらいだ』
『バトラルは真面目だよ。私がバイロンはスパルタだと教えても、目を輝かせて一緒に学びたいと言っていたんだ。だが、私は心配している点が1つある。バトラルが家でまともに食べさせてもらっているかが心配なんだ』
スパルタだと聞いて目を輝かせたのは、決して俺が真面目だからじゃないが、それよりも家で食べさせてもらえていないと思われていることにびっくりした。バトラルは確かに体罰を伴う躾をされていたが食事は普通に出ていたはずだ。今は特にタンパク質を多く摂れるようにしっかり料理人と話し合っているので、ひょっとしたらトレーニーとしてはクライブよりも良い食事を摂っている可能性もある。それでも体が大きくならないのだから、これはもうそういう体質なのだろう。
『なに?』
バイロンの不愉快そうな声が部屋の中に響いた。
『そうじゃないと、こんなに小さい理由がない』
『虐待……ということか』
『その可能性を考えている。まだ調べはついていないが、疑わしい間は、彼をなるべく家から遠ざけたいんだ』
『なるほど』
俺の頭の上に乗せておいてくれているらしい濡れタオルが誰かの手によって交換された。
誰かが部屋を出て行った音が聞こえ、うっすらと目を開くとクライブと目があった。
「起きたのか。ああ、起きないで。水を飲めるか?」
起き上がろうとした俺の体は、簡単にベットの中に押し戻され、代わりにクライブの手によって顔の前に吸飲みが差し出された。確かに喉が乾いていたので、抵抗もなくそれを受け入れゴクリと飲み込むとクライブはフッと目を緩ませて俺の頭を撫でつけた。
「ゆっくり飲め」
「もう、大丈夫です。ありがとうございます」
「ああ」
クライブが微笑んで頷いた時、ドアがノックされ返事をする前にドアが開いた。
「っ、起きたのか」
部屋に入ってきたのは、先ほどまでここにいたはずのバイロンで、手にはお盆を持っていた。
「はい。ご迷惑をおかけして、すみませんでした」
そう伝えるとバイロンは俺のそばまでスッと寄ってきて、クライブがいる方とは逆のベットの脇に片膝をついた。
「謝るのは私のほうだ。私の本業は軍人だが、それでも子供を預かることを了承した身で、教官として私のやり方はあまりにも身勝手で無責任だった。すまない」
「いえ、そんな」
本当に、俺が気持ち良くなっちゃって走り続けちゃっただけだし、そんな悲痛な顔で謝られたらどうして良いか分からなくなる。
「とりあえず、気分が悪くなければこれを食べてくれ」
「ありがとうございます」
差し出されたのは野菜や柔らかそうな鶏肉みたいなものがたくさん入ったスープのようなものだった。それをクライブが受け取り、俺に向かってにっこりと笑った。
「バトラル、食べ辛いだろう? 私が手伝おう」
「え?」
「ほら、あーん」
「……あーん……」
求められれば基本的にはイエスというのが性分の俺は、吸飲みのとき同様クライブから差し出されるままにスープを食べさせてもらった。
「んんっ、うまいか?」
「はい……あ、ダッシュライド公爵閣下、美味しいです。ありがとうございます」
「ああ」
野菜も肉も食べやすいようにか、かなり柔らかく煮込んであり、咀嚼するのもかなり楽で、とても美味しかった。
「よかったな」
「はい。次は、倒れないように気をつけます」
「次から走り込みは3人でしかやらない」
バイロンの言葉に、クライブは大きく頷いた。
「私もそれに賛成だ。次からは一緒に走ろうな、バトラル」
「え、でも僕と走ると足手まといじゃ?」
「そんなことはない」
「そうなんですか?」
「ああ」
断言するクライブに聞き返しても、クライブも、バイロンも意見を曲げることはなかったので、次の訓練からは走り込みは3人で行うことになりそうだ。
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