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1:ゲーム
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『バトラル・アール。貴様の悪事に関する証拠は全て揃っている』
冷酷な表情でバトラルを見下ろすのは、皇太子であるクライブ・ボートルニアだ。
バトラルはそんな状況でも、平然とした表情でクライブを見据えて笑う。
けれど、次のクライブの言葉で、バトラルは顔を青くするのだ。
『バトラル。お前はやりすぎた。ここにいるコリンを破落戸を使い凌辱させようとし、剰え命までを害そうとしたことは、とても許せることではない。よって、貴様にはコリンにやろうとしていたことを、生涯身を以て分からせることにした』
それはつまり、バトラルはありとあらゆる男性の肉便器にされるということだ。
「っっっ、はぁ~~。羨ましい。バトラルが羨ましすぎる」
俺、石田圭吾は、釘付けになっていたゲームから手を離し、そのまま後ろに倒れる形でベットに転がった。『真実の愛を教えてください』略して真愛くださいというBLゲームは、俺のお気に入りで、攻略本や裏設定なども読み込んでもう擦り切れるほどにやり込んだゲームだ。
誰にも言うことはできないが、俺には被虐趣味がある。つまり、マゾ。いや、ドマゾなのである。『真愛ください』において、プレイヤーが操作するコリン・サムソン男爵令息は、登場するヒーローの誰かを攻略するのだが、どのヒーローを選んでも必ず邪魔をしてくる悪役令息が、バトラル・アール伯爵令息なのである。そしてコリンがヒーローと結ばれる過程で、バトラルは断罪される。18禁のゲームなので、当然のようにその断罪は卑猥で、普通の感性を持ち合わせている人間からすれば酷い罰だ。けれども、俺は操作しているコリンがヒーローと共に幸せになることよりも、バトラルのエッチなエンド見たさにゲームをしている。
「はぁ~。目が覚めたらバトラルになってないかなぁ。そしたら俺、ちゃんと悪役やって、肉便器エンドになって、ヒロインであるコリンとヒーローも結ばれて、みんながハッピーなのになぁ」
そんなバカなことを願いながら眠った俺だったが、次に目が覚めたとき目の前に広がっていたのは見知らぬ真っ白な天井だった。
『僕になりたいって?』
「え!? え!? バババババトラルッ」
あたりを見渡すと、一面真っ白で、そこに俺とバトラルの見た目をした青年だけがいた。
『そう。お前のなりたがった僕がバトラルだよ』
「…………。あー、夢かぁ。寝る直前までゲームしてたもんなぁ」
しばらく考えてからそう結論付けて、自分の想像力にしてはこのやけにリアルな夢に感心した。
『ここは夢であって夢ではない。単刀直入に言うが、僕の代わりにバトラルになってくれないか』
「え?」
『僕はもう疲れたんだよ。クライブ様にも誰にも、愛されない生活に』
「バトラル……」
『クライブ様の寵愛するコリンを殺害しようとして、僕は罰として僕の尊厳を奪われた。耐えきれない屈辱に、僕は舌を噛んで死んだはずだったのに、目が覚めたら8歳の頃の自分に戻っていたんだ』
「舌を噛んで……」
絶句する俺をよそに、バトラルは続けた。
『僕をただ父親の言うことを聞く道具としか思っていない父親に打たれる生活からやり直すなんて僕にはできない。さっき父親に思いの丈をぶつけてきたけど、そんなことは意味もないだろうね。君は……僕には理解できないけど、虐げられることが好きなんだろう? 僕になりたいと言っていたもんね。お願いだ。もう、僕はあの体に戻りたくない』
「バトラルになれるのは俺としても嬉しいけど。でも、バトラルはどうするの?」
『君の体に入って生活するよ。僕は君の方が羨ましい』
「え? 俺を知ってるの?」
『君は僕たちの世界の本の中の主人公だよ。異世界で、見たことも聞いたこともない道具や食べ物をただ自由に楽しむね。そういう生活に憧れているんだ……。もう二度とこの世界には戻りたくないから、僕の体は自由にしてくれて構わない……その代わり君の体も僕が自由に使うから』
バトラルがそう言ってフッと笑うと、スーッと消えた。
冷酷な表情でバトラルを見下ろすのは、皇太子であるクライブ・ボートルニアだ。
バトラルはそんな状況でも、平然とした表情でクライブを見据えて笑う。
けれど、次のクライブの言葉で、バトラルは顔を青くするのだ。
『バトラル。お前はやりすぎた。ここにいるコリンを破落戸を使い凌辱させようとし、剰え命までを害そうとしたことは、とても許せることではない。よって、貴様にはコリンにやろうとしていたことを、生涯身を以て分からせることにした』
それはつまり、バトラルはありとあらゆる男性の肉便器にされるということだ。
「っっっ、はぁ~~。羨ましい。バトラルが羨ましすぎる」
俺、石田圭吾は、釘付けになっていたゲームから手を離し、そのまま後ろに倒れる形でベットに転がった。『真実の愛を教えてください』略して真愛くださいというBLゲームは、俺のお気に入りで、攻略本や裏設定なども読み込んでもう擦り切れるほどにやり込んだゲームだ。
誰にも言うことはできないが、俺には被虐趣味がある。つまり、マゾ。いや、ドマゾなのである。『真愛ください』において、プレイヤーが操作するコリン・サムソン男爵令息は、登場するヒーローの誰かを攻略するのだが、どのヒーローを選んでも必ず邪魔をしてくる悪役令息が、バトラル・アール伯爵令息なのである。そしてコリンがヒーローと結ばれる過程で、バトラルは断罪される。18禁のゲームなので、当然のようにその断罪は卑猥で、普通の感性を持ち合わせている人間からすれば酷い罰だ。けれども、俺は操作しているコリンがヒーローと共に幸せになることよりも、バトラルのエッチなエンド見たさにゲームをしている。
「はぁ~。目が覚めたらバトラルになってないかなぁ。そしたら俺、ちゃんと悪役やって、肉便器エンドになって、ヒロインであるコリンとヒーローも結ばれて、みんながハッピーなのになぁ」
そんなバカなことを願いながら眠った俺だったが、次に目が覚めたとき目の前に広がっていたのは見知らぬ真っ白な天井だった。
『僕になりたいって?』
「え!? え!? バババババトラルッ」
あたりを見渡すと、一面真っ白で、そこに俺とバトラルの見た目をした青年だけがいた。
『そう。お前のなりたがった僕がバトラルだよ』
「…………。あー、夢かぁ。寝る直前までゲームしてたもんなぁ」
しばらく考えてからそう結論付けて、自分の想像力にしてはこのやけにリアルな夢に感心した。
『ここは夢であって夢ではない。単刀直入に言うが、僕の代わりにバトラルになってくれないか』
「え?」
『僕はもう疲れたんだよ。クライブ様にも誰にも、愛されない生活に』
「バトラル……」
『クライブ様の寵愛するコリンを殺害しようとして、僕は罰として僕の尊厳を奪われた。耐えきれない屈辱に、僕は舌を噛んで死んだはずだったのに、目が覚めたら8歳の頃の自分に戻っていたんだ』
「舌を噛んで……」
絶句する俺をよそに、バトラルは続けた。
『僕をただ父親の言うことを聞く道具としか思っていない父親に打たれる生活からやり直すなんて僕にはできない。さっき父親に思いの丈をぶつけてきたけど、そんなことは意味もないだろうね。君は……僕には理解できないけど、虐げられることが好きなんだろう? 僕になりたいと言っていたもんね。お願いだ。もう、僕はあの体に戻りたくない』
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バトラルがそう言ってフッと笑うと、スーッと消えた。
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