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番に ※

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久しぶりに入った家の中は、僕が飛び出た時と何も変わっていなかった。

「菜月くん、夜ご飯は食べたか?」
「いえ、まだ」
「じゃあ、何か作ろうか。それとも出前をとろうか、えっと、すし好きか?」
「だ、えっと、好きです」
「ふっ、大好きか。じゃあ寿司にしよう。菜月くんの好きなものを知れて嬉しい」

僕は恥ずかしくなって俯いた。

「菜月くん?」
「あ……えっと、お金! 払います」
「いや、俺に払わせてくれないか?」
「でも」
「お願いだ、菜月くん。もし気になるならお礼と思ってくれていい」
「お礼……?」
「菜月くんの好きなものを教えてくれたお礼」
「そんなのただ僕が得するだけじゃないですか」
「何でだ。俺は今すごく嬉しくて幸せだ。菜月くんが俺のそばにいるから。そんな側にいるだけで幸せになる相手の好きなものを一つ知ることが出来たのだから、俺の得だ」
「……意味がわかりません」

迅英さんは僕の近くに来て僕を抱き寄せた。

「菜月くん……好きだ。これからもずっと一緒に居てもらえるように努力することを誓う」
「僕も……僕も迅英さんのことが好きです」

迅英さんにちゃんと好きだと伝えたのは初めてだった。
これからは思ったことをちゃんと伝えたい。

お互いに思い合っているのに不安になってしまったら嫌だって思ったから。
今回ので僕はそう学んだから。

だからこれからは迅英さんにちゃんと気持ちを伝えようと思った。

それから迅英さんから僕の好きなお寿司のネタを徹底的に聞き出され、僕の好きなネタだけで構成された折が届けられた。

昔は両親と一緒に食べた。
だけど両親がいなくなってからは食べる機会もなくて、すごく久しぶりだった。

これからはこんなに楽しい時間が過ごせるんだ。

迅英さんと僕と、それから僕たちの間に子供ができたら、きっともっと楽しくなる。

それからの迅英さんとの日々は穏やかで楽しくて幸せになった。

迅英さんは最初は何回か謝って来てくれたけど、もう謝らないでとお願いしたら今度は『もうすれ違いたくないから』と僕をドロドロに甘やかしてくるようになった。

僕もそんな迅英さんにあぐらをかかないように、ちゃんと好きで居てもらう努力をした。

そして、色々なことがあって遠回りしてしまったけど、6回目の結婚記念日の今日 ついに僕たちは番になる。ちょうど僕のヒートがかぶっていたからだ。

迅英さんがが作ったご馳走を食べたあと、僕が先にシャワーを浴びて、ずっと付けていたチョーカーを外して、迅英さんのベッドに座った。

セックス自体は初めての行為じゃないけどとても緊張する。

ガチャリとドアを開けて入って来た迅英さんも 心なしか緊張した面持ちで僕に近づいて来て、頬に触れて優しく微笑んだ。

「菜月くん、好きだ」
「んっ」

キスをされて優しく押し倒された。
お互い触り合ってどちらからともなく、ふふふと笑い合って、僕は迅英さんに翻弄された。

「もう、びしょびしょだ」
「んぁ……ぃゃ……」
「いや?」
「ぃぁないで……はずっ、かしい……です」
「ごめん、菜月くんが俺の手で、感じてくれるのが嬉しくて」

そう言いながらも手を止めずに迅英さんの指で中をかき回された。

「んぁああ、んっ、もう、ぁ」

入れてほしい。

「もう?」
「んぁぁ、ひ、ぁん、あ、も、じん、えいさん」

意地悪だ。分かってるくせに。

「ふふ、ごめんな。もう入れてもいいか?」

迅英さんの問いかけに僕は必死でうなずいた。
後ろからゆっくりと挿入されて小刻みに揺らされた。

「んっ、んん、ぁ、はぁ、ぁぁ」
「は、ぁ、気持ちいい。菜月くんも、気持ちいいか?」
「ん、きもちいい、です、んぁ……ああ!?」
「っ、ごめんな」

中で迅英さんのそれが大きくなった気がする。
それでもゆっくりゆっくり動いてくれて僕がイキそうになった時、首筋に息がかかるのを感じてチクリとした。

ゾゾゾゾゾゾと快感が襲って来て僕は一気に果てた。
それと同時に迅英さんが僕の中で果てたのを感じた。

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