(完結)好きな人には好きな人がいる

いちみやりょう

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律葉視点 律葉の恋2

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初めて生徒会長と話してから、僕は放課後探検を終えた後、生徒会室に行くのが日課になった。
最初に会長が寝ていたのはたまたまだったみたいで、いつも会長は忙しそうに書類仕事をしていた。
あまり噂などは詳しくなかったけど、その頃になると、会長の噂なんかをよく耳にした。
誰にでも紳士的でスパダリだとか言われていて、とても人気があるらしい。
けれど、僕はあまり紳士的なところを見たことはない。なのでスパダリなんて言われているのは、別人なんじゃないかと思うほどだった。

「また来たの?」
「はい」

書類から視線だけ上げて僕を見て、少しけダルそうにそう言う会長は、はっきり言って僕が来るのを迷惑だと思っているのだろう。けれど、どうしてだか分からないけど、目の下に濃い隈を作って、仕事を片す会長が放って置けなかった。普段はメイクでごまかしているらしい隈は、放課後のこの時間はすっかり消してある。メイクはあまり肌に合わないそうだ。

「この辺、終わった書類ですか? 片しちゃいますね」
「はぁ……良いって言ってるのに。放課後なんて遊びたいざかりでしょうに」
「会長とは1つしか違わないですよ。僕が遊びたい盛りなら会長だってそうでしょう」
「俺はいいの」

そんな風に言う会長は、書類から目を離さない。
僕と違って、誰にも頼ろうとしない会長が気になって仕方なかった。
僕が生徒会室に来る時間、部屋の中に会長以外の生徒会役員がいたことはない。
それより先に帰っているのか、そもそも仕事を放り出しているのか分からないけど、生徒会長に負担がありすぎるんじゃないかと、いつも不満に思っていた。

だから少しでも会長の負担を減らしたくて、僕は生徒会室に通って書類整理をしたり、それを職員室まで届けたり、コーヒーを入れたり、必要な書類を印刷してホッチキスで止めたり。とにかくそうして少しでも会長を楽にしようと頑張った。

下駄箱に嫌がらせの手紙が入り始めたのはその頃だった。

『会長に色目を使うな』
『下心が見え見え。恥ずかしくないの?』

そんな感じのことが書かれた小さいメモが下駄箱に入っていて、僕はそれをこっそり捨てた。
僕が会長に近づきたいのは、下心なんかじゃない。色目も使った覚えはない。
直接言ってこない相手に、それを伝えることは出来ないし、こんなメモに屈して生徒会室に行くのを辞めたら、会長は過労死してしまうかもしれない。
だから毎日下駄箱にメモが入るようになったけど、僕はそれを全部無視した。

会長の元に通って、2ヶ月が過ぎて、生徒会室ではいつも穏やかな時間が過ぎていると思っていた。僕にも出来る仕事が増えて、会長の負担を少しでも軽減でき始めたかなと思い始めていたけど、会長は違ったらしい。僕がいつもの様に会長にコーヒーを差し出すと、会長はそれをジッと見つめた。

「あのさ。もう明日から来なくて良いよ」

会長は重苦しい声でそう言った。

「え……?」
「んー。今まで言いずらかったんだけどさ。前から思っていたんだよね。今更だけどさ、生徒会以外の生徒が、生徒会室に立ち入るのは良くないし、別に手伝ってもらわなくても俺一人でできる量の仕事だしさ」

そんなことを言われて僕は慌てた。

「で、でも。会長は目の下の隈、すごいし。そりゃ1人で出来るかもしれませんけど、僕、少しは役に立ててると思って……」
「必要ないんだよね。はっきり言って、俺は1人の時間が好きだし、君がいると迷惑なんだ」
「そんな……」

今までちっとも気がつかなかったけど、僕が居ることで仕事を少なく出来ることを加味しても僕が嫌でしかたなかったみたいだ。今日ついに会長は僕が居ることに限界を迎えたらしい。

ショックすぎて、それ以上の言葉はでなかった。
なかば追い出される様に生徒会室を出て、僕はトボトボと寮に帰った。

ベットに座った瞬間、堪えていた涙はスッと頬を伝った。

『会長に色目を使うな』
『下心が見え見え。恥ずかしくないの?』

下駄箱のメモが頭の中を占めた。

「色目……、使ってるって思われたのかな」

だから2人きりになるのは気持ち悪いとか。
でも、別に、僕は会長のことをそう言う意味で好きなわけじゃ……。

否定しようとして、否定できなかった。
だって、ただ放っておけないと思った相手から拒否されたくらいで、こんなに悲しくなるはずもないのだから。

だからその可能性を一度受け入れてみた。

そうしたら、それは思いの外僕の心にストンとハマって、抜けなくなった。

そっか……。僕は、いつのまにか会長を好きになっていたのか。

気がついて、ズキと胸が痛くなる。
僕は馬鹿だから好きだと気がつく前に、会長にしつこくして嫌われたんだ。
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