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「旅行にでも行こうか」
昨日の夜のフェルレントの暴走のせいで疲れ果てたままベットで寝転がっている僕に、フェルレントがそう提案した。
「旅行?」
「ああ。人間は、結婚した時新婚旅行に行くだろう? 私もそれをしてみたい」
「僕も、旅行してみたい! 僕、怪我とか病気とか色々してたから、修学旅行にも行ったことないんだ。でも、フェルレントと旅行なんて楽しみ」
「どこか行きたいところはあるかい?」
「ううん。あんまり楽しい場所とか詳しくないし……でも、フェルレントとならきっとどこに行っても楽しいよ」
「可愛らしいことを言ってくれるね。では、最初の旅行は地球一周にしようか」
「えっ、すごい! うん! そうするっ」
僕の答えにフェルレントが優しく微笑んでくれる。
「移動手段は私の瞬間移動があるから、楽に回れるよ」
「わあ、僕も早く習得したいなぁ」
そんなこんなで僕たちは、新婚旅行に行くことになった。
ヨーロッパも、アジアも、色々回って今まで見たことがない綺麗な景色も、美味しい食べ物もたくさん知った。僕たちの姿は周りには見えないのだけど、それを良いことにフェルレントがちょっかいをかけてくるのは、少し恥ずかしかった。
「フェルレント、あの、黒いのまとってるのって何……?」
各地を回る間、黒いモヤのようなヘドロのようなものを身に纏っている人たちをよく見かけた。
「ああ、あれは地獄からのお迎えだよ」
「地獄からのお迎え? あの人たちももう直ぐ死ぬの?」
「……違う。すぐすぐに死ぬわけじゃない。けれど、あれは人間の悪意なんかを好む。そういうのを発してる人間や、浴びてる人間を引きずり込もうとしている。だが、人間の生命力があれば生きている間はどうにもならない。私が千景を引き摺り込めなかったようにね。だが、あまりにも全身が覆われているような人間は、死んだ時に落ちるところまで落ちるだろうね」
フェルレントはそう言って笑った。
「それって、僕にもついてたってこと?」
「私の愛しい千景にそんな下等なものをつけさせるわけがないだろう?」
「そ、そっか」
照れ臭くて、フェルレントの顔がまともに見られなかった。
「それに、千景はあんな悪意を持っていないから、そもそもああいうものは付いたりしないよ。千景に向かった謂われのない悪意は、私が全て跳ね返しておいたから、今頃そんな相手が居たとしたら、大変だろうな」
「そんなことしてくれてたの? ありがとう。フェルレントは僕の守護霊だったんだね」
「ああ、これからもずっと千景を守るよ」
「ふふ。ありがとうっ」
最後に僕の生まれ育った日本の名所も回った。
これも地元以外に行ったことがなかったからとても楽しかった。
外国の綺麗な場所や美味しいものから知ってしまったけど、日本にだって、綺麗な場所や美味しいものがたくさんあった。
それから、地元を回った。
ほとんどが嫌な思い出しかない場所だけど、フェルレントと回ったらすごく楽しかった。
「あ、笹原だ」
「知り合いかい?」
僕たちのいる道路の向かいのカフェにいる笹原を見つけたけど、笹原の目の前には、真っ黒の塊が居た。
「うん、あの黒いものの近くに居るのが僕の友人。僕の小説を面白いって言ってくれるいい人なんだけど、すごく黒い人と居てなんだか怖いね。笹原に影響があるのかな」
「いや……その笹原という子には影響はほとんどないだろうね」
フェルレントがそう言ったから、僕は安心した。
「そっか、ならいいや。行こっ、フェルレント!」
「ああ、行こうか」
その後のフェルレントはいつにも増して楽しそうで、僕も新婚旅行を最高に楽しんだ。
昨日の夜のフェルレントの暴走のせいで疲れ果てたままベットで寝転がっている僕に、フェルレントがそう提案した。
「旅行?」
「ああ。人間は、結婚した時新婚旅行に行くだろう? 私もそれをしてみたい」
「僕も、旅行してみたい! 僕、怪我とか病気とか色々してたから、修学旅行にも行ったことないんだ。でも、フェルレントと旅行なんて楽しみ」
「どこか行きたいところはあるかい?」
「ううん。あんまり楽しい場所とか詳しくないし……でも、フェルレントとならきっとどこに行っても楽しいよ」
「可愛らしいことを言ってくれるね。では、最初の旅行は地球一周にしようか」
「えっ、すごい! うん! そうするっ」
僕の答えにフェルレントが優しく微笑んでくれる。
「移動手段は私の瞬間移動があるから、楽に回れるよ」
「わあ、僕も早く習得したいなぁ」
そんなこんなで僕たちは、新婚旅行に行くことになった。
ヨーロッパも、アジアも、色々回って今まで見たことがない綺麗な景色も、美味しい食べ物もたくさん知った。僕たちの姿は周りには見えないのだけど、それを良いことにフェルレントがちょっかいをかけてくるのは、少し恥ずかしかった。
「フェルレント、あの、黒いのまとってるのって何……?」
各地を回る間、黒いモヤのようなヘドロのようなものを身に纏っている人たちをよく見かけた。
「ああ、あれは地獄からのお迎えだよ」
「地獄からのお迎え? あの人たちももう直ぐ死ぬの?」
「……違う。すぐすぐに死ぬわけじゃない。けれど、あれは人間の悪意なんかを好む。そういうのを発してる人間や、浴びてる人間を引きずり込もうとしている。だが、人間の生命力があれば生きている間はどうにもならない。私が千景を引き摺り込めなかったようにね。だが、あまりにも全身が覆われているような人間は、死んだ時に落ちるところまで落ちるだろうね」
フェルレントはそう言って笑った。
「それって、僕にもついてたってこと?」
「私の愛しい千景にそんな下等なものをつけさせるわけがないだろう?」
「そ、そっか」
照れ臭くて、フェルレントの顔がまともに見られなかった。
「それに、千景はあんな悪意を持っていないから、そもそもああいうものは付いたりしないよ。千景に向かった謂われのない悪意は、私が全て跳ね返しておいたから、今頃そんな相手が居たとしたら、大変だろうな」
「そんなことしてくれてたの? ありがとう。フェルレントは僕の守護霊だったんだね」
「ああ、これからもずっと千景を守るよ」
「ふふ。ありがとうっ」
最後に僕の生まれ育った日本の名所も回った。
これも地元以外に行ったことがなかったからとても楽しかった。
外国の綺麗な場所や美味しいものから知ってしまったけど、日本にだって、綺麗な場所や美味しいものがたくさんあった。
それから、地元を回った。
ほとんどが嫌な思い出しかない場所だけど、フェルレントと回ったらすごく楽しかった。
「あ、笹原だ」
「知り合いかい?」
僕たちのいる道路の向かいのカフェにいる笹原を見つけたけど、笹原の目の前には、真っ黒の塊が居た。
「うん、あの黒いものの近くに居るのが僕の友人。僕の小説を面白いって言ってくれるいい人なんだけど、すごく黒い人と居てなんだか怖いね。笹原に影響があるのかな」
「いや……その笹原という子には影響はほとんどないだろうね」
フェルレントがそう言ったから、僕は安心した。
「そっか、ならいいや。行こっ、フェルレント!」
「ああ、行こうか」
その後のフェルレントはいつにも増して楽しそうで、僕も新婚旅行を最高に楽しんだ。
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