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しおりを挟む青砥はかっこよくて優しくて人気だから、僕は振られて、和樹と付き合い始めたのだと学校では瞬く間に噂が流れた。
友達は青砥以外にいなかったから僕は遠巻きに悪口を言われることに1人で耐えることになった。
『今まであんなやつが青砥の恋人だったことがおかしかったんだよねぇ』
『わかる。まじ地味だしな』
『これでやっと身の程弁えるんじゃない?』
全部全部聞こえていた。
いや、全部、わざと聞こえるように言っているのだろう。
『あれがオメガとかまじ分からんと思ってたわ』
『匂いもしねぇしな』
『魅力ゼロ』
陰口は、ほとんどが事実で胸が痛い。
僕に魅力がないことなんて、僕が一番分かってた。
本当、青砥はよく僕なんかと付き合ってくれていたよね。
人生の運をここで全て使ってしまったのかも。
だから僕は死ぬのかもしれないな。
僕と和樹は同じクラスで、青砥だけ隣のクラスだから青砥は和樹を誘いに来る。
以前は僕を迎えにきてくれていた青砥が、僕以外の人を連れて行くのが見たくなくてチャイムが鳴って真っ先に席を立った。
それからトイレに行って学食までの廊下を歩いていると、青砥と和樹が一緒に、中庭の木の根本で仲良く弁当を食べているのが見えた。青砥は和樹にブランケットをかけてあげていて、和樹は嬉しそうに頬を染め笑っていた。
幸せそうな光景だなぁ。少し前までは僕があそこにいたのにな……ってこれが見たくなくてトイレ行ったのに結局見ちゃってるし。
『見ろよ。オメガもどきが恨めしそうに元彼を睨んでるぞ』
『きしょ』
周りでは僕への悪口がやまない。
別に睨んでなんかない。
そんなことは言い返せない僕は食堂へ向かう足を早くした。
ズキズキと胸が痛む。
「わっ」
食堂に着いたら足を引っ掛けられて転んだ。
「どんくさ。ちゃんと前見て歩けよ。邪魔だからどけ」
「ぁ、ぅ、うん。ごめんね」
「はっ。転ばされてごめんねとか、馬鹿じゃね?」
僕に足をかけたやつは、僕を心底下げずんだ目で見た。
「てかよ、お前和樹のこといじめてるらしいじゃん?」
「え……?」
「お前そんなんだから青砥に捨てられるんだろ? 何にも持ってないんだからせめて性格くらい良くいろよ」
「僕……和樹くんとは、は、話したこともない……」
「はぁ? やっすい嘘。和樹が嘘つくわけねぇじゃん」
「ほ、本当です。僕、いじめなんて」
「和樹が言ってたんだ。こんなこと言ったらまた千景に何されるか分からないから本当は言いたくないけどって怯えながらな!」
大声で話すせいで、僕たちの会話は周りに筒抜けで、周りからは「最低」とか「きもすぎ」とか援護が入っていた。
「ほ、本当に僕は和樹君と話したことも、ないんです、う゛」
お腹を蹴られ蹲ると、周りを取り囲んでいた人たちが僕の背中を蹴り始めた。
「やめっ……やめてください、ごめんなさい……ごめんなさい」
頭を庇い蹲って何に対してかも分からない謝罪を声が出なくなるまで繰り返した。
チャイムが鳴り、みんなが授業に戻って行ってやっと僕は解放された。
身体中が痛くてトイレに行って体を確認すると、顔以外のほとんどが痣になっていた。
背中は見えないけど、きっともっとひどいだろう。
僕は、声が出ないことをいいことに、泣いた。
自分からは息が漏れる音がしない。
けれど、泣き叫んだ。
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