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27 策士
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ルノーは、街へ食材の買い出しに出かけたりする。
その間俺はリハビリとして軽い運動をすることにしているのだが、いざ庭に出てみると少し肌寒く感じた。
今はちょうど季節の変わり目で服装が難しく、先ほど家を出たルノーの服装を思い返すと薄着だったことを思い出して、俺はすぐにルノーの分の上着を手に取り後を追った。
いくら体格のいい軍人だと言っても、寒ければ風邪だって引くこともあるだろう。
街までの道を早めに歩くと、八百屋の前にルノーがいるのが見えた。
だが、ルノーの奥にはニコルがいた。
自分の心臓がバクバク鳴っているのを煩く感じる。
なんで、ルノーがニコルといるんだ。
ルノーがニコルの方に数歩近づくのをただ見ていると、距離は離れているのに、ニコルと目があった。ニコルは俺と目があった瞬間にニヤニヤと不愉快な笑い方をした。
2人は何事かを話しているようだったけど、この位置からではその内容は少しも分からなかった。
ただ、ルノーはひどく窶れた様子のニコルを連れてどこかに歩いていってしまった。
ニコルはルノーにバレないように俺を振り返り勝ち誇ったような笑みを向けきた。
ニコルがあんな風な顔を俺に向ける意味がわからない。
だから、俺は確信してしまった。
ニコルがあそこまで執着するのはエドガー教官のこと以外ではありえないだろう。
つまりは、俺が必死にエドガー教官ではないと思い込もうとして、実際そう接して来たルノーは、本当にエドガー教官だったと言うこと……なのだろうか。
ただ、ルノーがエドガー教官だったとして、別人のフリをしてまで俺の側にいる理由が分からなかった。
それも、エドガー教官は公爵の家の出で、俺のような平民上がりの軍人の護衛や世話係をするような必要などないのに。
もしかして復讐に来たのだろうか。
俺は、妹を殺したと思われているのだから。
だとしたらなんて……。
エドガーはなんて策士なのだろう。
俺はルノーを信頼して、ルノーといると楽しくて、ルノーのおかげで前向きに考えられるようになった。
エドガーはニコルと協力して俺を陥れようとしているのだろうか。
それならばなぜあのエンバルトリアのあの時に、俺をそのまま死なせておいてくれなかったんだ。
それとも、信頼させてから裏切って、俺を絶望させたかったのだろうか。
「はは。やっぱ策士だ。だって俺は今こんなにも絶望している」
夕飯時になって帰って来たエドガーは、ルノーの皮を被ったまま俺に夕飯を作った。
初めの頃よりだいぶ美味しくなったはずのご飯を食べても、今の俺には味など全くわからなかった。
その間俺はリハビリとして軽い運動をすることにしているのだが、いざ庭に出てみると少し肌寒く感じた。
今はちょうど季節の変わり目で服装が難しく、先ほど家を出たルノーの服装を思い返すと薄着だったことを思い出して、俺はすぐにルノーの分の上着を手に取り後を追った。
いくら体格のいい軍人だと言っても、寒ければ風邪だって引くこともあるだろう。
街までの道を早めに歩くと、八百屋の前にルノーがいるのが見えた。
だが、ルノーの奥にはニコルがいた。
自分の心臓がバクバク鳴っているのを煩く感じる。
なんで、ルノーがニコルといるんだ。
ルノーがニコルの方に数歩近づくのをただ見ていると、距離は離れているのに、ニコルと目があった。ニコルは俺と目があった瞬間にニヤニヤと不愉快な笑い方をした。
2人は何事かを話しているようだったけど、この位置からではその内容は少しも分からなかった。
ただ、ルノーはひどく窶れた様子のニコルを連れてどこかに歩いていってしまった。
ニコルはルノーにバレないように俺を振り返り勝ち誇ったような笑みを向けきた。
ニコルがあんな風な顔を俺に向ける意味がわからない。
だから、俺は確信してしまった。
ニコルがあそこまで執着するのはエドガー教官のこと以外ではありえないだろう。
つまりは、俺が必死にエドガー教官ではないと思い込もうとして、実際そう接して来たルノーは、本当にエドガー教官だったと言うこと……なのだろうか。
ただ、ルノーがエドガー教官だったとして、別人のフリをしてまで俺の側にいる理由が分からなかった。
それも、エドガー教官は公爵の家の出で、俺のような平民上がりの軍人の護衛や世話係をするような必要などないのに。
もしかして復讐に来たのだろうか。
俺は、妹を殺したと思われているのだから。
だとしたらなんて……。
エドガーはなんて策士なのだろう。
俺はルノーを信頼して、ルノーといると楽しくて、ルノーのおかげで前向きに考えられるようになった。
エドガーはニコルと協力して俺を陥れようとしているのだろうか。
それならばなぜあのエンバルトリアのあの時に、俺をそのまま死なせておいてくれなかったんだ。
それとも、信頼させてから裏切って、俺を絶望させたかったのだろうか。
「はは。やっぱ策士だ。だって俺は今こんなにも絶望している」
夕飯時になって帰って来たエドガーは、ルノーの皮を被ったまま俺に夕飯を作った。
初めの頃よりだいぶ美味しくなったはずのご飯を食べても、今の俺には味など全くわからなかった。
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