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21章:ほのかな期待

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 家に入ると、修はまだ帰ってきてなかった。
 コートを脱いで手を洗い、エアコンをつける。

 そして少ししてソファに座ると、

「興味の出たことってなんだ……」

 そう呟いて、スマホを手に取った。

 数秒のち、私はスマホのインターネットの検索窓に、思いついた文字を入力する。
 怪しそうなサイトが並ぶその中の、どこかで聞いた書籍サイトをクリックする。

(漫画の試し読み……)

「……ふぁっ!」

 開いて、すぐ閉じた。
 でも、結局また開いた。そしてまじまじと画面を見つめる。

「みんな本当にこんなことしてたの……。嘘でしょっ⁉」

 酔っているせいか、また頭がくらりとする。
 その時、

「何してるんだ?」
「ふぉっ!」

 後ろから声をかけられて、変な声を発するとともにスマホが飛んだ。あわててそれを取って、咄嗟に自分の後ろに隠す。
 
(み、見られてないわよね……⁉)

「いや、その、なんでもない。おかえりなさい!」

 修は私の顔を見ると顔を近づけてくる。
 近い修の顔と、先程の画面も相まって、心臓が激しく脈打つのを感じていた。

「顔赤いな。お酒も飲んできた?」
「あ、うん。今日理学部に用事があって……芦屋先生と」
「芦屋か」

 修はため息をつくと、続ける。「もしかして何か変なことでも吹き込まれた?」
「まさかっ」

(どういう意味よっ! 全く外れてるわけではないところが恐ろしい!)

「ふぅん」
「なによっ!」

 叫んで修を睨むが、コレは自分に後ろ暗いところがあるからだ。もう完全に逆ギレだ。

 早くスマホの画面を消さないと……!

 焦りながらそう思っていると、突然強く抱きしめられた。

「ひゃぅっ⁉︎」

 変な声が口から飛び出る。

「その声、今はちょっときついかも……寝不足だから余計……」
「ふぁっ、ご、ごめっ、変な声でて……」
「なんで謝るんだ」
「だってこんな声っ、変だからっ。も、聞かないでぇっ」

 もう、いろいろとだめだ。

 先程の画面が頭を回る。修にも見られたくない。
 抱きしめるのも即刻やめていただきたい。心臓が口から出る……。

 泣きながら懇願すると、修は怒ったように頭を掻いた。

「ったく。これ、何の修行だよ……」
「な、なに」

 私が身を引こうとすると、修は私の腕を持ち、つめよってくる。

「キスさせろ」
「えっ⁉」

(ど、どういうこと⁉ しかも命令形って……)

 思わず修を見つめると、修は真剣な目で私を射抜く。

「いいな」

 低く、有無を言わさない言葉で縛られると、私の全身は熱くなった。

ーーーなんで今、そんな強い口調で言うのよ……。断れなくなる。

「ふぁ、ふぁいっ……んっ」

 頷いたと同時、唇が重なる。
 それから何度も啄むようにキスされて、目を瞑ると、そのまま舌が口内を這いまわった。

「んんっ……!」

 久しぶりの濃いキスに頭がクラクラする。後頭部を持たれ、何度も舌を這わせられ、うっとりした目をした修と目が合うと、自分の視界が霞んだ。

「かわいい。くるみ」
「んっ……」

 またドキリとして、そのうち舌を自分から絡ませていた。

 頭から指の先までドキドキしてる……。これは、なんだろう。

 もっと、修とキスしたくて。
 知りたくて……もっともっと修の近くにいたくなって。


ーーーこのまま、修になら食べられても……。
 そう思った時、修はそっと私から唇を離す。
 私はそれが名残惜しくて、そのままぼんやりした目で修の唇を追っていた。

 修は私の頬を優しく撫でると、立ち上がって、シャワー浴びてくる、と言った。

 私はその後姿を見ながら考える。

ーーーあのままキスが続いていたらどうしてたんだろう……。

 やけに顔が熱い。心臓の音も落ち着く気配すら見せない。
 どうしたらいいのかわからなくなって、私は自分の頭をガシガシ掻いていた。
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