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16章:夜と朝の合間

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―――本当に好きで、愛してたなら私を一緒に連れて行ってくれたよね?
 好きだ、愛してると聞くたびに、今でもそんな風に思っちゃう自分が嫌になる。

 私はあれから頑なに恋人を作る気も、誰かを好きになる気すらなくなった。

 その原因を作ったのは修だ。
 修が私を傷つけて突き放した。お前なんて愛してないと言わんばかりに。

 それが今更『愛してる』だなんて、どの口が言うのだ。

 そんな言葉で釣られるほど、今でも私は都合のいい人間だと思われているのかと泣きたくなる。

 それでもその言葉を修の口から聞くたび、あの頃の記憶が少しずつ塗り替えられていって……そうすると修のことがまだ好きでいる自分をつきつけられるようで、もっと泣きたくなるのだ。「愛してる、なんて嘘ばっかりつかないでよ!」
「嘘じゃない。愛してる、おかしくなるくらい」

 後頭部を持たれて、無理矢理みたいにまた口内に舌が入ってくる。

 これだって、あのとき……はじめてした時は、なんでこんなことされるのか分からなかった。大好きな修とのキスのはずなのに、嫌だった。普通のキスがいいって思ってた。

 でも、今の私はこのキスでやけにドキドキして……その中で勝手に身体が快感をつかみ取ろうとしてしまってる。きっともう普通のキスじゃ物足りないくらいに……。


 私も舌を動かせとばかりに、修の舌先が妖艶に誘う。
 ぎゅ、と目を瞑ると、それは許さないとばかりにもっと無理矢理に舌を絡まされる。

 頭がくらくらする。おかしい。あの時はこんなことはなかったのに……。

 唾液が口端を伝うとそれを合図にするように、私はおずおずと修の舌に自分のそれを絡ませる。修がクスリと笑う気配がして、恥ずかしくなって我に返った。
 身体をよじるとまたキスされて、固い指先はいちいち反応する場所を重点的に探り続ける。

「ふぇっ……あっ、もぉ、やめっ……んっ!」

「あの時、くるみは本当に食われるって思ってて、こういうことするってことも全然知らなかったよな。今は、少しはわかるだろ?」

 低い声でそう問われれば、私は首を横にブンブンと振る。

「んんっ、い、今でも、んんっ、な、なんでっ、こんなことするのか、全然意味わかんないっ!」

 そうだろう。性行為は子孫を残すためにするはずだ。
 こんな恥ずかしいこと、それ以外の目的でするなんて、意味が分からない。

 意味が分からなさ過ぎて泣ける。
 本当に、修以外の人もこんなことしているのだろうか。修はとんでもない変態で、全部修の口から出まかせじゃないかと今でも思う。

「……あの時はできる限り辛いようにしたから余計だな」

 修が小さくつぶやく。

「ふぇ……?」

「俺はくるみが俺の指や舌や俺自身で気持ちよくなってくれればうれしいし、俺を身体でも求めてほしい。変なことじゃない。俺はもっとくるみと深い場所で繋がりたいんだ」

 修はそんなことを言って、そのまま下着を剥ぎ、足を持ち上げ太ももに口づける。

「ひゃぁあんっ……! だ、だめっ! そんなとこっ」
「だめじゃない。もっと食わせろ」

 修はそれからも私の身体を探り続けて、覚えたくない感覚を何度も何度も私の身体に刻み付けた。

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