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最終章:やっぱり先輩の愛はいろいろと重すぎる
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しおりを挟む一樹さんが帰った後、
「一樹、嬉しそうだったね」
先輩が思い出したように言う。
「はい」
妊娠したこと、自分のことのように喜んでくれた一樹さんを見て、私は多少なりとも、一樹さんの力になれたような気もして嬉しかった。先輩も同じように思ったのかもしれない。
一樹さんのため、じゃなくても、自分たちの結果が大事な人のためになれるなら、嬉しい。
先輩はまた私にキスをする。ちゅ、ちゅ、と軽いキスを何度も交わした後、一瞬絆されそうになって、そういえば、と聞きたいことを思い出して私はまっすぐに先輩を見た。
「ところで先輩。今日、産婦人科の検診についてきて、先生と、なにをあんなに話しこんでたんですか」
と聞いた。
実は今日は午前に妊婦検診があって、毎回先輩が一緒についてきてくれるのだが、今日は検診のあと、先輩が先生に二人きりで聞きたいことがあると言ったキリ、なかなか外に出てこなかったのだ。
「生活面で気をつけなきゃいけないことをしっかり聞いてたんだよ」
先輩は優しい顔で笑う。
「え?」
「妊娠中の食べ物。ほら、必要な栄養素でみゆがたべられそうなものは全部入手しといたから」
「そう、なんですか……」
「あとはフォローかな。これからお腹が大きくなれば、もっと足元とか見えにくくなるし、俺がきちんと支えるからね」
そう言われて泣きそうになった。
「……ありがとうございます」
色々あるけど、こんな優しい人と結婚出来て……私は幸せだ。
先輩とこうしてずっと一緒にいられること、心から幸せに思う。
私は思わず先輩に自分からキスをしていた。
先輩は少し驚いた顔をした後、次は先輩からもう一度キスをしてくる。
離れるのが惜しいように何度もキスをしたあと、唇が離れる。その時、先輩はふと思い出したように、
「あと、これからの時期、どうやって愛し合えばいいのかもよく聞いておいたからね」
と笑った。
「……はい?」
「ほら、時間とか、深さとか」
それを聞いた瞬間、私の顔が真っ青になって、それから真っ赤になるのが自分でもわかった。
「ふ、ふ、ふざけんなーーーー!」
「え、なんで? どうしたの?」
「産婦人科の先生、また来月も顔合わせるのに……! 恥ずかしくてもう検診に行けない!」
そんなこと聞く人いるの⁉
いや、いたとしても私は聞きたくなかった……!
「恥ずかしがらなくてもいいでしょ。そういうことしたから子どももいるわけだし」
「それでも……!」
泣きそう。いや、もう泣いてる……。
(お願いだから、もう少しデリカシーをください……!)
「もう、やだぁ……」
先輩は困ったように笑うと、私の涙をぬぐう。
「でもほら、ずっとキスしてたら『変な気持ちになるからもうやめて』って言ったのみゆだよ?」
「努力の方向が間違ってます! そもそも、毎日全身にキスするとかもうやめて下さい! アレのせいで変な気分になるんでしょ!」
「だって、みゆの身体、毎日全部味わってないと落ち着かなくて」
「だからそれをヤメてくださいって!」
思わず叫んで、先輩を睨みつける。すると先輩は嬉しそうに笑った。
「怒ってるみゆもかわいすぎてたまらない。やっぱりその目も好きだよ」
「だからっ!」
「みゆは、俺の重い愛を受け取ってくれるんでしょ?」
額を合わされて、そう問われると私は言葉に詰まってしまう。
羽柴先輩の愛は相変わらず重すぎて、
妊娠してからさらに、その重さを増してる気がする。
でも、私のお腹の中には、間違いなく羽柴先輩と私の赤ちゃんがいるのだ。
私はお腹を触って先輩を見る。先輩も同じように大事そうに私のお腹を触って、私を見つめた。
私だってできるものなら……
「重すぎるからもう返品したい!」
「クーリングオフ期間はとっくに終了。もう返品不可だよ」
さらりと先輩はそう言って、甘いとろけるような目で私を捉える。
なんとか文句を言おうとした瞬間、その唇は先輩に奪われ、
先輩は私を抱き上げると、当たり前のようにベッドに沈め、いつものようにキスの嵐を降らせた。
「みゆ、これからもずっと俺の愛を受け取ってね? 俺はどういわれても、みゆを一生愛してるから」
実は、困ったことに、私もなんです。
確か自分から出向いた場合も、クーリングオフは不可能だったと先輩は言っていたような……。
私が諦めて息を吐くと、先輩はそれがオッケーのサインだと勘違いしたのか、キスを再開した。
―――どうやら、先輩の愛はこれからも返品不可能のようです。
<END>
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