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16章:俺と彼女と彼女の父親(side羽柴)
16-4
しおりを挟むそして、再会の日まで、俺は必死だった。
弁護士としての成功はもちろん、その後、どうやってみゆと会うのがいいのか、ずっと模索していた。
幸い自分の実家は飲料メーカーだった。みゆも小さな飲料メーカーに就職した。
正直、これは奇跡に近いと思った。
そして実をいうと、俺はある日、みゆの勤める飲料メーカーの経営が傾きかけていると聞いた。このままいけば、吸収先も見つからずそのまま全員が路頭に迷うかもしれないと。
そうなればみゆはきっと傷つく。
だから、俺はそこに秘密裏に一人の開発員を派遣した。そこで商品を生み出してもらうためだ。
実際に開発した乳酸菌飲料が当たり、みゆの会社はぎりぎり赤字から脱却。
さらに、そのノウハウを持っていれば、ホウオウに吸収できると踏んだのだ。
事情は話さなかったが、父親も兄も賛成した。ホウオウは乳酸菌飲料の分野をこれから拡大していこうとしていたから。みゆのいた会社の社員も、希望すればすべての人間を雇うつもりだった。
ただ、みゆはどうするのか、それが気がかりではあったのだけど……。
たぶん彼女のことだから、多数の意見に流されてくれるだろうと考えていたし、実際にそうなった。
そして、みゆは何も知らずに、継続雇用のための面接に来た。
あの日のことは何度も思い出してる。
みゆの顔を久しぶりに見て、声を聞いて……俺は驚いた。
やっぱりみゆにだけは反応したのだ。
あの場でみゆを押し倒さなかったことだけは、今でも自分をほめてやりたいと思っている。
そしてそれから強引にいってしまいそうな自分を押さえつけ、できる限り合法的な方法で、やっとみゆと付き合いだした。
みゆが俺をみて、怒ったり、笑ったりする顔を近くで見るだけで嬉しくて、絶対に結婚してずっと一緒にいたいと、再会してからより深く思った。
ただ、みゆは結婚にはかなり消極的だった。特にうちの家系のことも大きかったらしい。
そして『普通の年月付き合ってから結婚を考えたい』と言う彼女に、普通の年月ってどれくらいかと聞いたら……。
―――普通だと最低2年は付き合って、婚約して半年後くらいに入籍? 子どもはその2年後とか。
あれには正直、驚いた。
自分はもう12年待っている。これからまた2年だなんて気が狂いそうだ。
かといって、高校時代のことを思えば、無理矢理に推し進めることもできなかった。ゆっくり、彼女のペースで、でも自分の気持ちや思いだけは何度も伝えていった。
―――それでもし……。
もし、あのツンデレでなかなか本心を言ってくれない彼女が、自分から、俺と『ずっと一緒にいたい』と言ってくれたなら……。
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