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15章:ずっと一緒に
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しおりを挟む「『総務の柊みゆはとんでもないお嬢様だったのか』とか噂になってるわよ」
昼休み、食堂でそう言った宮坂さんを見て、私はため息をついた。
「……私もびっくりです」
ちらりと食堂の入り口に目をやる。
泣きながら頼んで、できるだけ会社員に近い恰好にしてもらったのだけど、明らかに普通の人間とは違う戦闘能力の高そうなオーラをまとった男たちがそこには立っていた。
しかも1人ではない。3人だ。食堂に入る社員がいちいちSPの男たちをちらちらと見ていく。そしてそのあと、必ず私に目線を移すのだ。
これも泣きながら頼み倒して、私や周りの見える範囲には3人と言うことにしてもらったのだが、なにせ目立つ。ちなみに残りの7人は見えない範囲にいるらしい。それはそれで怖い。
(『SPを減らしてくれ!』なんて彼氏に泣いて頼んだ人間って、私以外に誰かいるのかな……)
いるとしたらその人とはいいお友達になれそうだけど、たぶん、そんな人は他にはいない……。
とにかくそんなSPに囲まれているものだから、会社では噂の的になった。
『実は天皇家の人間じゃないか』とか、『石油王に嫁入りするんじゃないか』とか訳の分からない噂まである。
そんな噂が全部自分に向けられたものだなんて、もう毎日泣きそうだ。
「しかも……」
言おうとしたとき、みゆ、と声がかかる。
「ひっ!」
見てみるとやっぱり羽柴先輩だった。最近出現率が高い。
「今日はこっちで打合せなんだ。終わるの夕方だから、一緒に帰ろう」
「だからそうやって急に現れないで! ってなんでここが分かったの!」
「そりゃSPにはみゆの居場所常時教えてもらってるからね。とにかく約束だよ。忘れないでね」
そう言って羽柴先輩は歩いていく。みんなの目線がこちらに向いていたのに気づいてまた泣きそうになった。
宮坂さんに、小さな声で、
「この際だから、付き合ってることもバラしといたほうがいいね、とか言い出したんです。だから社内でも普通に話しかけるよ、って」
私は続ける。「先輩のやりたいようにやってる感がすごいんですけど……」
「それにOKしたの⁉」
宮坂さんが驚いたように言う。
「今一緒に住んでるし、会社も近いし……バレるのも時間の問題だから……。それなら付き合ってることくらいはいっそ先にばれたほうがマシかって……。後でバレるより、自分から堂々としているほうが印象悪くないって、先輩も言ってて。それは確かにって思ったから。ちょっと先輩の口車に乗った感はあるんですけど」
「そうなの」
「先輩が、ちょうどSPもいるから、そのことがきっかけでいたずらされることもないだろうって」
「そう。でも、……よかったわ」
宮坂さんは意外なことを言う。
「え?」
「あなたがそうやって恋心なんて隠す必要もないもの、隠さないでもいいって思えるほど先生のこと好きになれてるならよかった」
私はその言葉に思わず苦笑する。
でも、あの人が彼氏と知れ渡れば、仕事やりにくいのは確かですけどね……?
宮坂さんは続ける。
「結構うまくやってるみたいじゃない」
「まぁ……先輩のペースに少しずつ慣れてきたというか……」
「あんなに、あの人は特別、って言ってたのに」
「人は『慣れる生き物』だってこと……今まで知りませんでした」
私がつぶやくと、宮坂さんは楽しそうに笑った。
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