試情のΩは番えない

metta

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26 熱に浮く

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「あッ……! そこは、もう、しなくて……ッ!」

 薄い腹に散った薄い白濁は陽の光に晒されて艷めくように光り、膨らみのない薄い胸は吸われて優しく舐め齧られて、珊瑚の色に彩づいていた。新しい性感帯となっていたそこを性器を擦られながら、ちゅ、ちゅと吸われるだけで体が跳ねる。勃ちあがった乳嘴を中心に、花びらのような所有印がフィアルカのあちこちに散っていた。
 自分でするのと人にしてもらうのでは、全く違う。手で擦られるのは気持ちがいいが、出す度に体力が目減りしていくのがありありと分かる。それよりも早く中に欲しいとフィアルカはねだった。みっともないとかはしたないとかそう言った理性はとうに飛んでいて、拡がった縁が挿入された指を食む。
 フィアルカは対人との経験はないが、発情期は経験してきている。指も張形もきちんと入るからそこまでしなくても大丈夫だと訴えようとしたが、その言葉はひゅっと喉の奥に引っ込んでしまう。

「……!」

 すりすりと擦り合わせられた陰茎は、猫に大きな獅子の子がじゃれているかのごとく大きさに差があった。アルファは男性器が大きく、オメガはそれほど大きくないと聞いたことがあるが、リオルドのものは外見から想像していたよりもずっと大きい。そもそもとしてフィアルカは他人の勃った性器を見た事がなく、何度も射精をしたのも手伝ってか、一瞬我に返ってしまう。

「……大丈夫か?」

 呆けていたのを心配したのか、リオルドがフィアルカの頭や頬を撫でる。毛繕いのようなそれが気持ちよくて、またとろりと溶けてしまう。
 気持ちいい。
 ちゅ、ちゅと啄むように頬に唇に眦に口づけが降ってきて、その柔らかな感触に下腹部が疼き始める。

「大丈夫、です……もっと……」

 指は2本に増え、ぐちゅりぐちゅりと激しい水音を立てている。ずっと愛撫され続けて達したくて仕方がない。けれどもう、指では達したくない。

「……なでて、ください……」
 
 どことは言わず、薄い腹を撫でて示す。そう、ねだればリオルドは急いたように腹につくほどにいきり立ったものを掴んで先端を搾まりに宛がった。

「辛かったら言うか、思い切り叩け……!」
「あ――……!」

 指はもちろん、張形とは比べものにならない質量が、ぬかるんだ狭い途を進んで埋めていく。ずっと焦がれて求めていたものの形に拡がり、散々指で育てられていた快楽の膨らみが潰れていく。フィアルカはその衝撃だけで達していた。

「――~っ……き、っ、……」

 ぐんと質量を増したものは爆ぜる兆しを見せていたのに、リオルドは眉を寄せてぐっと堪えてしまう。堪えなくていいのに。何で堪えるのだろう。

「なんで、ぇ……んっ……!」
「声、抑えるな……っ」
「ひ、ぁ……!」

 両手を握られたまま、ねだったとおりに粘膜を、内壁を、襞を。あやすようにくちくちとずりずりと胎の中を撫で上げられて、視界が滲む。

「あっ、……あ、んん……! ふ、ぁ……っ」
「――っ、ぐ……」
「わたし、だけ、きもちいい、ですか……?」
「違っ……逆、気を抜くと、すぐ……」
「きもち、いいならがまんっ、しないで……!」

 うると唸るような声が漏れたと思った瞬間、入口から奥までを一気に穿たれ視界が真っ白になる。突然律動が激しくなり、何度も何度も激しく穿たれ、すべてがわななく。

「あっ! んぁっ、ひ、あぁっ……! だめ……だめ……」

 達する気配を感じたからか、駄目という言葉が駄目だったのか、ぐっと腰を掴まれ奥を突かれた。言葉とは裏腹。行き止まりにぶつかるたびに増す射精の気配に悦びしかなく。

「あ……ぁ、あ、んぅ――……っ!」
「は、ぁ……」

 行き止まりで爆ぜたものは、ひたひたとフィアルカの胎を濡らしていく。その快楽の強さにぎゅうっと敷布を握り締めていると、フィアルカを満たしていたものがずるりと出ていく気配がする。

「……や、まだ……!?」

 出ていかないでと引き止める前に、ぐるりと視界が逆になる。リオルドはうつ伏せになったフィアルカの薄い尻を割り開く。

「ひっ……や……みな、見ないで……!」

 先程までリオルドが埋まっていた場所は、今は閉じ切らず、誘うかのようにひくついている。そこからたらりと腿を伝うのは零れ落ちた精か涎のような愛液か、両方なのだろう。
 恥ずかしい。また少し理性が戻って今度は羞恥で身体が熱くなる。
 そんなフィアルカをよそに、リオルドはひくつく後孔をくるりとなぞり、再び硬いままのものを宛てがう。

「ぁ、あ……また、はい、って……」

 すっかり濡れ切った途はゆっくりと挿入したにもかかわらず、ぬるりと一気に奥まで入り込んでいく。
 ゆっくりぬかるんだ胎内を混ぜながら、今度は優しく奥を叩いて止まった。まるで、入室の許可を待つかのように。
 ぴたりとくっついていた奥は最奥ではなかったらしく、リオルドを迎え入れるかのように綻び始め、待っていましたと言わんばかりにリオルドはぐっと腰を押し付け、少しずつ進んでいく。

「っ――!! ひ、あ、ぅぁ……!」

 さらに奥へと入り込んだ場所は、フィアルカも知らない場所だった。

「――ッ……かみ、たい……!」

 意識を飛ばしかけたフィアルカだったが、その言葉で何とか踏みとどまり、ぶんぶんと首を振った。

 正妻ではない者と子を作ることがままあるこの国では、子ができてから番うということも多い。それを言い訳にフィアルカは首輪をつけたままでと願っていた。リオルドは少し面白くなさそうだったが、子もできぬうちに番になってしまうと、フィアルカに変な攻撃が向く可能性があるとオルニスに諭され、引いて了承はしていたのだが。

「く……ぅ……!」

 リオルドはそれでも諦め切れないと言った様子でべろりべろりと毛を繕うように首輪を舐め、齧る。鋭歯が項を掠めるたびに、恐ろしさと期待で身体の至るところがわななき、飢えた獣のように求めている。

「あっ、ひゃ、あ! んんッ、あぁ……!」

 項周りを愛撫しながら穿たれ、声を抑えようと思っても抑えることができない。甘えた高い声が少しの理性に羞恥を告げる。それが余計に快感を呼び覚まして、きゅうと孔と胎を締めた。粘膜が襞が蠢き締め付けてはリオルドの形を覚えていく。
 柔い胎内を優しく嬲られ、出された精がぐちゅりぐちゅりと掻き混ぜられる。気持ちがいい。その度にフィアルカは触れて腰を跳ねさせてしまう。

 やがて八つ当たりのように最奥に叩きつけられた精は、さらにフィアルカの中を熱で浸す。それが全身に回ったかのように痺れてじんわり温もって動くことができない。
 熱を放った張本人はまだ納得できないのか、フィアルカまたひっくり返し、口をつける。舌が絡まり、唾液が混ざり、吐息が混ざり、子を作る部屋に種が撒かれ、それがまた混ぜられていく。まるで、ひとつになるかのように。

 誰でもよかったわけではなく、この人とこうなるためだったのかもしれない。
 そんな根拠のない確信は黙らせて、フィアルカはただただリオルドと発情期の快感にすべてを委ねていった。
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