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未来編
2-1.第二の作戦、始動
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「……クロよ、『情に訴える方法』では埒があかないことが分かった」
「誠に遺憾ながらそうですな。あの娘の意思はなかなか強固なようで」
ここは『時の庭園』の一画、ユアとクロのみが入ることのできる密談スペースである。あるのは小さなテーブルとソファくらいの狭いスペースで、壁面には権能を表す紋章が紫の光を湛えている。
二つの円が合わさったようなそれは、『メビウスの輪』とでも言えば良かろうか。
「会話をやり直すことで誘導するのも今後は困難でしょうな」
クロは顎に手をやる。何か良い方法はないかと思案しているのだろう。ユアの方はもう何かを決めている様で、クロを手で制すと口を開いた。
「うむ、なので俺は作戦を変えようと思う」
「なるほど、して、どのような……?」
「色仕掛けだ」
「は?」
「だから、色仕掛けだ!」
ユアは大真面目な顔をしているがどこか頬が赤い。
気色ばむ主の様子に気圧されたのか、クロは短い手で頭を掻き、恭しく礼をする。
先日訪れた過去、そこで主の様子が変になった理由、それを悟ったクロは目を閉じる。
(それは…いばらの道ですぞ、ユア様……)
クロには、主の安寧と小娘の行く末を祈るしか出来なかった。
「誠に遺憾ながらそうですな。あの娘の意思はなかなか強固なようで」
ここは『時の庭園』の一画、ユアとクロのみが入ることのできる密談スペースである。あるのは小さなテーブルとソファくらいの狭いスペースで、壁面には権能を表す紋章が紫の光を湛えている。
二つの円が合わさったようなそれは、『メビウスの輪』とでも言えば良かろうか。
「会話をやり直すことで誘導するのも今後は困難でしょうな」
クロは顎に手をやる。何か良い方法はないかと思案しているのだろう。ユアの方はもう何かを決めている様で、クロを手で制すと口を開いた。
「うむ、なので俺は作戦を変えようと思う」
「なるほど、して、どのような……?」
「色仕掛けだ」
「は?」
「だから、色仕掛けだ!」
ユアは大真面目な顔をしているがどこか頬が赤い。
気色ばむ主の様子に気圧されたのか、クロは短い手で頭を掻き、恭しく礼をする。
先日訪れた過去、そこで主の様子が変になった理由、それを悟ったクロは目を閉じる。
(それは…いばらの道ですぞ、ユア様……)
クロには、主の安寧と小娘の行く末を祈るしか出来なかった。
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