51 / 62
2020/08/20
しおりを挟む
2020/08/20
改まって人に話すことでもなく、であれば態々日記に書くのかと言う程度の話ではある。とは言え、直近に日記のネタと成り得る話も他に無し。有るには有っても何れも文字起こしすれば陰鬱と沈み込むのも想像に難くはない話題であるが為一旦御蔵入りと即断して、当たり障りの、無くはないが身削りの幅が然程でもない所に落ち着けて書こうと思う。
普段使いの、身に帯びる頻度の高い持ち物に名前を付ける癖が有る。無論「消費の時代に逆行し付喪神信仰の復権を声高に叫ぼう」などと言った意図を持っての事でなど在ろう筈もない。とは言え、三十路手前の寡婦の趣味とするには相応に変態性が込められている行為である点には異が挟めない。
しかしまぁ、何も御人形遊びよろしく終始話し掛け身繕いを整え専用のケースに恭しく安置し、などと言った一目で分かる奇人然とした振る舞いを成すでもない。あくまでも普段使いの物品に限っての事であるのだから。
恥ずかし気も無く悠長な自殺と宣って憚らない喫煙歴の傍らに使い込まれた点火器が在った。形見と言える程の来歴が有れば良かったのだろうけれど、良いとこ思い出の品と言った程度の物。なればこそ、ぞんざいに扱った所で呵責に苛まれはせずに使い倒して浮いた錆びも其の儘赤茶けさせている。
「其れに俺の名前付けて使ってるって心情的には相当微妙なんだけど」
「古女房的な解釈で一つ」
「納得すると思ってんなら表出なよ」
当人に対する扱いと如何様に違いが有ると言うのか問い質したい気持ちをグッと堪えて形ばかり反省したように見せて凌いでおく。使い古した思い出と言うならば彼も負けてはいない、比肩するものが抑無いのだ。
「酔って取り落としても一言謝ってそれで良い儘にしてんのも気に食わないんだよね」
「現世身に認めてねぇならそれも御門が違いやしませんかねぇ」
「手前が言い出しっぺならせめて自分のルールは守ればって言ってんだよ」
偶像崇拝にはすまいと思って厳粛な取り扱いを避けているのであって、其の点に於いてはルールの適用内に収まっているのだが。
言葉面には剣呑と言って差し支えない会話も互いに嗜虐に笑みを湛えてする口喧嘩の傍目に間の抜けた事この上無い。それと言うのもド本命の形見は扱いが比でない辺り救い様の有無の知れた物でもなかった。いやはや。
改まって人に話すことでもなく、であれば態々日記に書くのかと言う程度の話ではある。とは言え、直近に日記のネタと成り得る話も他に無し。有るには有っても何れも文字起こしすれば陰鬱と沈み込むのも想像に難くはない話題であるが為一旦御蔵入りと即断して、当たり障りの、無くはないが身削りの幅が然程でもない所に落ち着けて書こうと思う。
普段使いの、身に帯びる頻度の高い持ち物に名前を付ける癖が有る。無論「消費の時代に逆行し付喪神信仰の復権を声高に叫ぼう」などと言った意図を持っての事でなど在ろう筈もない。とは言え、三十路手前の寡婦の趣味とするには相応に変態性が込められている行為である点には異が挟めない。
しかしまぁ、何も御人形遊びよろしく終始話し掛け身繕いを整え専用のケースに恭しく安置し、などと言った一目で分かる奇人然とした振る舞いを成すでもない。あくまでも普段使いの物品に限っての事であるのだから。
恥ずかし気も無く悠長な自殺と宣って憚らない喫煙歴の傍らに使い込まれた点火器が在った。形見と言える程の来歴が有れば良かったのだろうけれど、良いとこ思い出の品と言った程度の物。なればこそ、ぞんざいに扱った所で呵責に苛まれはせずに使い倒して浮いた錆びも其の儘赤茶けさせている。
「其れに俺の名前付けて使ってるって心情的には相当微妙なんだけど」
「古女房的な解釈で一つ」
「納得すると思ってんなら表出なよ」
当人に対する扱いと如何様に違いが有ると言うのか問い質したい気持ちをグッと堪えて形ばかり反省したように見せて凌いでおく。使い古した思い出と言うならば彼も負けてはいない、比肩するものが抑無いのだ。
「酔って取り落としても一言謝ってそれで良い儘にしてんのも気に食わないんだよね」
「現世身に認めてねぇならそれも御門が違いやしませんかねぇ」
「手前が言い出しっぺならせめて自分のルールは守ればって言ってんだよ」
偶像崇拝にはすまいと思って厳粛な取り扱いを避けているのであって、其の点に於いてはルールの適用内に収まっているのだが。
言葉面には剣呑と言って差し支えない会話も互いに嗜虐に笑みを湛えてする口喧嘩の傍目に間の抜けた事この上無い。それと言うのもド本命の形見は扱いが比でない辺り救い様の有無の知れた物でもなかった。いやはや。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
1976年生まれ、氷河期世代の愚痴
相田 彩太
エッセイ・ノンフィクション
氷河期世代って何?
氷河期世代だけど、過去を振り返ってみたい! どうしてこうなった!?
1976年生まれの作者が人生を振り返りながら、そんなあなたの疑問に答える挑戦作!
トーク形式で送る、氷河期愚痴エッセイ!
設定は横読み推奨というか一択。
エッセイとは「試み」という意味も持っているのである。
オチはいつも同じです。
うだつの上がらないエッセイ集(たまに自由研究)
月澄狸
エッセイ・ノンフィクション
今日もうだつが上がらなかった。
でもまあ良いじゃないか。うだつの画像ならネットにたくさんある。うだつが見たければ画像検索すればいい。
そんなうだつとは防火壁のこと。炎上対策は大事だね。
※この作品はエッセイ集のため、気になったページをパラパラめくるとか、好きなところから好きなように読んでいただけると嬉しいです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
読めば文章力が上がるかもしれない、ゆるゆる講座
二階堂まりい
エッセイ・ノンフィクション
何の取り柄も有りませんが、昔から文章力や語彙力だけはお褒めいただくことが多かった私が、せっかくアカウント作ったし……と書き散らす、ゆる〜い講座です。
文章を上手く見せるための、今すぐに出来るふわっとした技術を掲載します。
文章力向上以外にも、語れる分野があれば語ります。
嵐大好き☆ALSお母さんの闘病と終活
しんの(C.Clarté)
エッセイ・ノンフィクション
アイドル大好き♡ミーハーお母さんが治療法のない難病ALSに侵された!
ファンブログは闘病記になり、母は心残りがあると叫んだ。
「死ぬ前に聖地に行きたい」
モネの生地フランス・ノルマンディー、嵐のロケ地・美瑛町。
車椅子に酸素ボンベをくくりつけて聖地巡礼へ旅立った直後、北海道胆振東部大地震に巻き込まれるアクシデント発生!!
進行する病、近づく死。無茶すぎるALSお母さんの闘病は三年目の冬を迎えていた。
※NOVELDAYSで重複投稿しています。
https://novel.daysneo.com/works/cf7d818ce5ae218ad362772c4a33c6c6.html
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる