36 / 62
2020/02/28
しおりを挟む
2020/02/28
趣味のビリヤードに興じる事2時間、雑事に思い係ってはキューの先が斯様に鈍るとは思いもせなんだ。思い悩み事の切っ掛けと言うのは自分にとって幾らかの例外は有れど大概は彼の一言に起因するのが常であって、本日も御多分に漏れずまぁそれだ。
「学生の時に覚えてればさぞかしおモテになっただろうにねぇ?」
「この腕前でか?笑えもせんな」
エンドレス14-1も既に8周目に突入せんとした折唐突に投げられる皮肉に思わず返してしまった。とは言え深夜の店内には他の客は無し、独り言をつぶやいたとて下階の店員に怪訝な表情を向けられることもあるまい。
しかし先程の発言はあまり好ましくない。いや、皮肉であるかどうかはあまり重要ではないのだが、「たられば」の話は壮大な空想癖には良き土壌となり過ぎる。「もしあの頃に戻れたら」などと言った仮定は折々にしすぎる程夢想してきたのだが、それでもし尽くせぬだけの後悔が過日に溢れているのもまた事実なのだ。
もし今の精神のまま学生の頃に戻れるとしたら?それはさぞかし当時以上に都合の良い男が出来上がっていた事であろうよ。元よりそんな用途で良く振り回されたもので、催し事の間に合わせ、独り身の見栄張り、単純な暇つぶし、金目当て、その他諸々都合良く使い潰して下すった皆様に今更恨み言の一つも湧き様は無いにせよ、此方も楽しもうとする分だけ今の方が幾らかマシにはなってきているのだろう。一度所有権さえ主張してくれれば、扱いの善し悪しに文句は付けず、他に目移りもせず、「飽きた」と放り出そうが食い付かず引き下がる。その執着の無さをつまらないと言う我儘者もあれば割り切って遊ぶ放蕩輩もまた多く、まぁそれなり程度に退屈は無かった記憶が有る。
「また棘々しくなってんねぇ」
「構うもんけ、『一番になるのは無理って分かってる』なんて薄弱な意思で近寄られて此方も良い気分になれる訳がねぇんだから」
半生振り返ってはみたものの「一番を乗り越える」などといった気概の持ち主に心当たりの有った例がないのだから強ち言い過ぎと言う程でも無い筈だ。それだけ愛される価値が自身に無い事を理解しても居るのだからそんな奴原を貶めた所で責められる道理も有るまい。
「お前が一番でお前だけ居れば良い人生なのよ」
「それを言われたらお互い様としか返せないなぁ」
趣味のビリヤードに興じる事2時間、雑事に思い係ってはキューの先が斯様に鈍るとは思いもせなんだ。思い悩み事の切っ掛けと言うのは自分にとって幾らかの例外は有れど大概は彼の一言に起因するのが常であって、本日も御多分に漏れずまぁそれだ。
「学生の時に覚えてればさぞかしおモテになっただろうにねぇ?」
「この腕前でか?笑えもせんな」
エンドレス14-1も既に8周目に突入せんとした折唐突に投げられる皮肉に思わず返してしまった。とは言え深夜の店内には他の客は無し、独り言をつぶやいたとて下階の店員に怪訝な表情を向けられることもあるまい。
しかし先程の発言はあまり好ましくない。いや、皮肉であるかどうかはあまり重要ではないのだが、「たられば」の話は壮大な空想癖には良き土壌となり過ぎる。「もしあの頃に戻れたら」などと言った仮定は折々にしすぎる程夢想してきたのだが、それでもし尽くせぬだけの後悔が過日に溢れているのもまた事実なのだ。
もし今の精神のまま学生の頃に戻れるとしたら?それはさぞかし当時以上に都合の良い男が出来上がっていた事であろうよ。元よりそんな用途で良く振り回されたもので、催し事の間に合わせ、独り身の見栄張り、単純な暇つぶし、金目当て、その他諸々都合良く使い潰して下すった皆様に今更恨み言の一つも湧き様は無いにせよ、此方も楽しもうとする分だけ今の方が幾らかマシにはなってきているのだろう。一度所有権さえ主張してくれれば、扱いの善し悪しに文句は付けず、他に目移りもせず、「飽きた」と放り出そうが食い付かず引き下がる。その執着の無さをつまらないと言う我儘者もあれば割り切って遊ぶ放蕩輩もまた多く、まぁそれなり程度に退屈は無かった記憶が有る。
「また棘々しくなってんねぇ」
「構うもんけ、『一番になるのは無理って分かってる』なんて薄弱な意思で近寄られて此方も良い気分になれる訳がねぇんだから」
半生振り返ってはみたものの「一番を乗り越える」などといった気概の持ち主に心当たりの有った例がないのだから強ち言い過ぎと言う程でも無い筈だ。それだけ愛される価値が自身に無い事を理解しても居るのだからそんな奴原を貶めた所で責められる道理も有るまい。
「お前が一番でお前だけ居れば良い人生なのよ」
「それを言われたらお互い様としか返せないなぁ」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
カルバート
角田智史
エッセイ・ノンフィクション
連想させるのは地下を走る水。
あまり得るものはないかもしれません。
こんな人間がいる、こんな経験がある、それを知る事でまたあなた自身を振り返る、これからのあなたを考える、そのお手伝いが少しでもできればいいかなと思っています。
また時折出てくる対人間関係のアドラー、フロム、ニーチェに感化された僕の考え方が今後の皆様の生活の参考になる事があれば、幸いです。
もし最後まで、僕にお付き合いされる方がいらっしゃれば、心より感謝致します。
アルファポリスで投稿やってみて、心に移りゆくよしなしことを
未谷呉時
エッセイ・ノンフィクション
日々、書いて投稿してると、いろいろ雑念が浮かんできます……。
心に「移りゆくよしなしこと」が訪れている状態ですね。
それはあの日の兼好法師も、あなたも私も同じこと。
「ここの投稿関連で何かあったら、記事化してみちゃおう。」そういうエッセイです。
初回でも紹介していますが、アルファポリス運営様から
「単発エッセイじゃないのを推奨」
とお言葉いただいたので、実験的に連載スタイルにしてみる、の意味合いが大きいかもです。
(内容)
「1月10日の公式お知らせを受けて」/「章名を直したいとき」/「フリースペースに作品リンクを貼る」/『異世界おじさん』面白すぎ」/「ブラウザ版とアプリ版の違い」など。
(扉絵イラスト:イラストACより(わらじ様))
機織姫
ワルシャワ
ホラー
栃木県日光市にある鬼怒沼にある伝説にこんな話がありました。そこで、とある美しい姫が現れてカタンコトンと音を鳴らす。声をかけるとその姫は一変し沼の中へ誘うという恐ろしい話。一人の少年もまた誘われそうになり、どうにか命からがら助かったというが。その話はもはや忘れ去られてしまうほど時を超えた現代で起きた怖いお話。はじまりはじまり
もうダメだ。俺の人生詰んでいる。
静馬⭐︎GTR
SF
『私小説』と、『機動兵士』的小説がゴッチャになっている小説です。百話完結だけは、約束できます。
(アメブロ「なつかしゲームブック館」にて投稿されております)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる